スペシャル・トレンドレポート

マーケットのテーマはドル高へ~大きく値を崩す公算が高まっているユーロドルに注目~(西原 宏一氏)

2021年6月30日

1)今年前半のマーケットのテーマが急展開

本稿執筆時点(6月27日)で6月も終わりに近づいて来た。

6月の終了とともに、今年の半分が終わることになる。

先月のレポートで紹介したように、今年の前半のテーマが少しずつ変貌してきている。

まずここで今年前半の金融市場のテーマを確認すると、それは「ポストコロナ」ということになる。では、ポストコロナに向けて為替市場では具体的にどういうことが注目されていたのかを考察したい。

(1)BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])に続きテーパリング(※)に踏み切るところはどこだ?

(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

ポストコロナで注目されているのは、主要国による金融緩和からの脱却。つまり、中央銀行のテーパリングとなる。

このテーパリングにいち早く動いたのが、BOC。

BOCがテーパリングにいち早く動いたことで4月下旬からカナダ・ドルは急騰。

そこで次にテーパリングに動く通貨として、4月以降ユーロやポンドが注目され値を上げてきた。

(2)商品市場の活況で利するところはどこだ?

商品市況が続伸しており、為替市場に影響を及ぼしている。

木材相場の上昇がカナダ・ドル高要因に、鉄鉱石相場の急騰が豪ドル高をサポート。

(3)新型コロナウイルスのワクチン供給がうまくいっているところはどこだ?

英国のワクチン供給が順調に進んでおり、英ポンドの上昇要因。

これまでは、これら3つの材料のうちのどれかが交互にテーマとなり、通貨が動いている展開が続いていた。

また主要国によるロックダウンによる金余りがBitcoinを筆頭とした仮想通貨の急騰を誘引してきたことも挙げられる。

しかし直近はこうしたテーマが先月指摘したように、崩れてきており、その流れが反転している。

2)木材先物が高値から半値まで急落したことで「商品高=通貨高」のトレンドに陰り

4月までのマーケットは前述の3つのテーマで動いてきたわけだが5月中旬に様々な金融商品で調整が入り始め、この動きが加速してきた。

まず、lumber(木材先物市場)。

添付図は木材先物の日足。

先月初旬までは「ウッドショック」といわれ、一時1,711ドルまで暴騰していたlumberだが一気に急落。1,000ドルをも割り込み6月25日には779.30ドルまで暴落。この動きはすでに年初の価格を割り込み高値から50%まで暴落。この木材先物の価格の乱高下をみていると「ウッドショック」とは一時的な現象だったのかと思わせるほどの暴落である。

この木材の急落により、カナダも一転して急落。

BOCがテーパリングをしていたので、カナダ・ドルは暴落を避けられているが、マーケットのコンセンサスであった「中央銀行が量的緩和の終了を示唆した通貨は買われる」というコンセンサスが崩れている。つまりカナダ・ドルにおいては、前述の①中央銀行がテーパリングに踏み切ることよりも、②商品市場の活況が崩れたことのほうが大きいということになる。

そして指摘したように(3)「新型コロナウイルスのワクチン供給がうまくいっているところはどこだ?」だが、こちらは、欧米に追随してアジア諸国もワクチン供給が進展してくるため、ワクチン供給の進展が欧米だけの利点ではなくなってきている。

では、今年後半の為替のdriverとなる要素、つまりテーマはなにになるのか?

3)期待されていたECBのテーパリング予想が後退、一方パウエル議長の「インフレは顕著に上昇した。」とのコメントでユーロドルの下値余地はさらに拡大。

今年後半のマーケットのテーマを探るために、木材先物に加え価値が半分になったもう一つの金融商品に注目。

それは仮想通貨。

5月13日にテスラ創業者で世界2位の富豪であるイーロン・マスク氏がビットコインによる支払い受け入れを停止したことを明らかにし、Bitcoinは調整を開始。

先月のレポートでもBitcoinの調整を指摘したが、その時点ではまだ暴落していなかった。しかし今月のBitcoinは、lumberの暴落と歩調を合わせるように大きくその価値を下げており、本稿執筆時点では360万円レベルまで暴落。

今年のBitcoinの高値は700万円レベルなので、Bitcoinは高値からその価値を50%まで失ったことになる。

これは木材先物と同様の動きである。

仮想通貨交換取引業種バイナンスがネットワークの混雑を理由にイーサの引き出しを一時停止するなど、複数の主要取引プラットフォームで混乱が生じたこともあり、イーサリアムも大きく値を下げており、こちらも20万円レベにまで暴落している。

こうしたlumberや仮想通貨の混乱が、株や為替に直接の影響を与えるわけではない。しかし、金融市場は何かが急落すると損失補填のため、他の金融プロダクツで利益確定をする動きになりがちである。今回の仮想通貨は、世界的なロックダウンによる金余りと相まって資金が仮想通貨に過剰に流れていたこともあり、その調整が他の金融市場へ与える影響が懸念されている。

そして、マーケットにこのような負荷がかかると、それはrisk off、つまりドル高へと傾斜する。確かに今月に入ってドルインデックスは反発している。

そこでドルの行方を代表する通貨ペアであるユーロドルの動きをチェックしてみましょう!

すると、ユーロドルは5月21日には、下記のECBラガルド総裁コメントでトップアウト。

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ECB緊急購入策、縮小の討議は尚早=ラガルド総裁

[リスボン 21日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は21日、1兆8500億ユーロのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の縮小について討議するのは尚早との考えを示した。

ラガルド総裁はリスボンで開かれたユーロ圏財務相(ユーログループ)会合後の記者会見で「PEPPの枠組みを利用して資金調達環境を良好に維持することにコミットしている。こうした姿勢を少なくとも2022年3月まで継続する」とし、「長期事項に関する討議はまだ極めて尚早で、その必要もない。6月の理事会では、経済全般、およびすべての産業部門の良好な資金調達環境に焦点が置かれる」と述べた。

市場では、6月10日の次回理事会でPEPPの買い入れペース減速について少なくとも討議されるのではないかとの観測が台頭。新型コロナウイルスワクチン接種の進展でユーロ圏でも景気回復が進んでおり、クノット・オランダ中銀総裁ら一部のECB当局者も緊急措置の縮小の開始を示唆し始めている。

出所ロイター

=====

このコメントを受け、ECBによるテーパリングの憶測が後退し、ユーロは対ドル、対ポンド、対円で値をさげている。

先月のレポートでもユーロドルを取り上げているが、その時点でのユーロドルはまだ1.2200レベルで、本稿執筆時点のユーロドルは1.1935レベルと大台の1.2000台を割り込んでいる。

ユーロドルが弱含む要因は、ECBよりFRBにある。

6月17日のFOMCでのパウエル議長による「インフレは顕著に上昇した。」とのコメントをきっかけにドルが急騰。ユーロドルは一時1.1848まで急落す。

その後パウエルFRB議長自身が「火消しに回る発言」もあり、ユーロドルは1.19台まで値を戻しているが、FRBの早期テーパリング予測は消えないためユーロドルの反発は限定的。

添付図はユーロドルの週足。

今年(2021年)のユーロドルは1月6日に1.2349を高値にして続落。

そしてちょうど3月31日の節目の日に1.1704のボトムをつけ反発。

その後はECBのテーパリング期待を背景に値をあげ、5月25日に一時1.2266の高値をつけるものの、年初のレベルすら回復できず反落し、調整の公算が高くなっている。

今年前半のコンセンサスである商品急騰からのリフレトレードいう流れが木材先物の暴落により、大きく後退。

そして中央銀行のテーパリング期待だが、ECBよりもFRBのテーパリングの可能性が浮上し、上値が重くなってきたユーロドルは直近では1.16台への続落が期待できるのではないか?さらに中期では1.15を割り込んで大きく値を崩す可能性も高まっている。

FOMCの早期のテーパリング期待により、下値余地が拡大しているユーロドルの動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2021年6月30日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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