スペシャル・トレンドレポート

「豪ドル/米ドル」、高値更新視野も、 米金利の上昇の高値波乱に要警戒(竹内 のりひろ氏)

2021年3月5日
NYのシニアディーラー :「昨年春からの米ドル売りの受け皿となってきた豪ドルですが、足元でやや上昇一服でしょうか」
東京支店のチーフディーラー :「米金利の上昇の余波が大きく、高値波乱の様相を呈してきた…」
NYのシニアディーラー :「そうですね。当地の金利のディーラーなどと話しても、やはりこの先の米金利の一段の上昇をみているようです」
東京支店のチーフディーラー :「コロナワクチン普及や、その後の経済活動の全面的な再開、経済の過熱まで織り込みつつあるようだね」

この2人の会話をひも解くと、「豪ドル/米ドル」の上昇が一服した背景には、米金利の上昇が理由らしい(後述)。

昨年3月、世界で新型コロナの感染が拡大、商店やレストランが休業に追い込まれた。多くのフライトが減便・欠航となり世界経済は大きく委縮、グローバルで株価が急落した。一昨年から長引いた森林火災の余波も大きく、資源国通貨(注)の一角である「豪ドル/米ドル」も大きく値を崩し、0.55米ドル割れ寸前まで急落していた。

(注)一次産品の輸出の比率が高い国の通貨。一次産品とは加工せずに輸出できる商品。原油、一部農産品など。

豪州は交易を通じて中国景気の影響を受けやすく、さらに鉄鉱石の輸出比率が高く、世界景気の波を受けやすい。さらに、最近では中国や香港からの旅行客も多く、中国経済とは切っても切り離せない関係となっている。その中国が、他国に先行してコロナの封じ込めに成功したことで、関係の深い豪州景気も回復、「豪ドル/米ドル」も力強い上昇をみせた。

昨年春以降、各国中銀が量的緩和の再開や利下げに転じ、世界からほぼ短期の金利が消滅した。こうしたなかで、この先の景気回復を見込み、豪州の長期国債の金利は比較的高く、グローバルの機関投資家の買いを広く集め、豪ドル相場の一段の上昇の追い風となった。

この流れは、年明け以降も続き、今年2月に入ってもその勢いは衰えず、高値0.8007を示現した。さらにその「豪ドル/米ドル」の回復を支えたのは、原油を筆頭とする商品市況の回復、なかでも銅価格の上昇がめざましかった。銅は「ドクターカッパー」と称され、景気の先行指標として広く認知されている。中国が世界消費の約半分を占め、建設用機械、自動車部品などにも広く使われる。

ただ、ここにきて「豪ドル/米ドル」、銅共に高値波乱の様相になっている。

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成
※インディケーターは筆者開発のTwinCloud®で売買シグナルを出すことが可能。太さの変わる2本の移動平均とお考え下さい。

チャート;筆者作成

為替相場の水準を決めるという点で、需給面はどうだろうか。3月2日(火)、豪州連邦統計局が発表した、豪州の昨年Q4(10-12月期)の経常収支は145億豪ドルの黒字と、6四半期連続で黒字となり需給面から豪ドル高を支える。鉄鉱石の価格の上昇など、商品市況の回復に支えられた面が大きく。貿易額が過去最高水準を維持していることも背景だ。

鉄鉱石価格の上昇の理由は、世界有数の産出国であるブラジルの輸出量が、経済活動の停滞などで大きく落ち込んでいることがあげられる。かつては慢性的な経常赤字国であった豪州だが、経常黒字の定着や鉄鉱石価格の高値推移は、「豪ドル/米ドル」では、需給面から買い要因となる。

チャート:豪州連邦統計局より筆者作成

豪州の金融政策はどうだろうか。RBA(豪州準備銀)は3月2日(火)、定例の理事会を開催し、現行の史上最低水準の0.1%の政策金利、3年債金利の0.1%への誘導目標、量的緩和の規模の2000億豪ドルの維持、その全てを据え置いた。同時に発表された声明のなかで、最近進んだ豪州金利の上昇を指摘しているが、懸念とまでは伝えていない。

すでに、RBAはこの先3年間、現行の低金利を据え置くとの情報発信もしていて、当面、金融政策の変更等からの「豪ドル/相場」への影響は極めて限定的となりそうだ。

チャート:RBAより筆者作成

最後に、米国の金融政策の方向性や米金利の現状はどうだろうか。米国では経済対策の規模をめぐり、新旧の財務長官が意見対立する。米下院で2月27日(土)、可決された1.9兆ドルの経済対策法案に、サマーズ元財務長官は「大きすぎて景気の過熱を招きかねない」と警告する。一方で、労働経済学が専門のイエレン財務長官は「経済対策は大胆に」と反論する。

年明けから、米国では新型コロナワクチンの接種が始まっていて、年内にはかなり多くの人が抗体をもち、集団免疫(注)も視野に入る。人が再び動き出し、経済活動の再開が迫り、経済が上向く可能性が出始めた。低金利や量的緩和を前提に、今年の年始まで進んでいた米ドル安に、調整が入り始めている。

(注)ある感染症に対する社会全体の抵抗力。集団免疫が高い場合、感染は自然と収束に向かう。

年初から上昇基調にある米金利だが、その背景は、巨額の財政(経済)政策⇒財源確保のための国債増発⇒米国債の需給の悪化⇒米国債の下落⇒米金利の上昇という波及経路だった。こうした需給悪化が広く指摘されるなか、2月25日(木)に実施された7年債の入札は、低調を通り越し不調という結果で終わった。

需給悪化が現実のものとなり、既発の流通債にも売りが集まり、10年債金利では1.6%台と、昨年2月以来の水準に上昇した。こうした金利の上昇に関し、複数の連銀幹部が「金利の上昇は良いサイン」、「最近の金利上昇を心配しない」と金利の上昇を容認する発言が相次いだ。

米国に金利が戻ることで、これまで値幅狙いだけで買われてきた配当のない金やビットコインは買う理由が揺らぎ始めている。為替市場でもこれまで米ドル売りの受け皿となってきた「豪ドル」が高値圏より大きく反落、翌日26日(金)の東京市場では日経平均株価が-1202円安となり、過去10番目の下げ幅を記録、マネーの動きに変化が表れ始めた。

以上をまとめると、一次産品の価格の高止まり、海外の機関投資家からの継続的な豪州債の購入、そして定着しつつある豪州の経常黒字はこの先の豪ドル高の支援材料。ただ、この先の米経済の加速、過熱からの米金利の上昇は足元の「豪ドル/米ドル」の高値波乱から下落要因。「豪ドル/米ドル」の新高値更新も視野に入れるが、一時的な波乱には注意しておきたい。

チャート:筆者作成

竹内 のりひろ氏プロフィール

竹内 のりひろ(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2021年3月5日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内のりひろ氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について竹内のりひろ氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権はワイジェイFX株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

YJFX!口座開設者限定コンテンツ「プレミアムレポート」のご紹介

為替業界の著名人や当社のマーケット分析を担当するスペシャリストが執筆したYJFX!のためだけの限定レポートです。PCの取引画面やCymoアプリからご利用いただけます。

みんなのオーダー

YJFX!で取引されているお客さまのポジション状況をグラフ化し毎日更新しています。

YJFX!オリジナル ウィークリーレポート

証券アナリストの資格を持つYJFX!マーケット分析チームが前週の振り返りと今週の注目ポイントをわかりやすく説明しています。

スペシャルレポート

為替トレーダーやアカデミー講師のスペシャルレポートが読めるのはここだけ!他では読むことができない限定レポートをご提供!

プレミアムレポート閲覧方法

ご覧いただくには外貨exの口座をお持ちいただく必要があります。

外貨exの口座をお持ちの方

【スマートフォンをご利用のお客さま】
>Cymoアプリのダウンロードはこちら
①「Cymoアプリ」にログイン
②「ニュース」→「プレミアムレポート」

【パソコンからをご利用のお客さま】
>パソコン版取引画面へのログインはこちら
①取引画面にログイン
②左側メニュー「投資ツール」→「ニュース・レポート」→「プレミアムレポート」

外貨exの口座をまだお持ちでない方

新規口座開設(無料)はこちら

関連する記事

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションならヤフーグループのYJFX!
ワイジェイFX株式会社は
ヤフー株式会社のグループ企業です。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

YJFX! from Yahoo! JAPAN