スペシャル・トレンドレポート

日米金利差の拡大から、 「米ドル/円」下値は限定的(竹内 のりひろ氏)

2021年2月5日
東京支店のチーフディーラー :「日本からみていても、このところ米ドルが強いと感じるのだが、そちらのセンチメントはどうなの?」
NYのシニアディーラー :「ワクチン接種が始まり、ようやく新型コロナの感染者数がピークアウトしてきました。この先の景気回復を徐々に織り込んできています」
東京支店のチーフディーラー :「こちらでは、日銀が長期金利の誘導目標見直しとの話もあり、「米ドル/円」では円高要因なんだがね」
NYのシニアディーラー :「それでも、米金利上昇のインパクトの方がはるかに大きいのではないでしょうか」

「米ドル/円」の中期的な方向性を占うという点で、NYのシニアディーラーの話では、「日銀の長期金利の誘導目標見直し」(注)よりも米金利の上昇の方が重要らしい。

(注)後述

昨年末から、現在までの主要通貨の対米ドルでの騰落を計測してみると(本レポートは2月3日(水)午前執筆)、多くの通貨が下落に転じており、「円」は下落最上位、下落幅は-1.59%と突出している。「米ドル/円」は、昨年春からの米ドル安局面が継続し、1月6日(水)、年初来安値102.60円を示現した。その後は緩やかに底入れ、2月2日(火)には、105.17円まで上昇してきた。

2020年の為替市場では、新型コロナの感染拡大からFRB(米国の中央銀行)が事実上のゼロ金利政策や量的緩和の再開に転じ、米国からほぼ金利が消えた。基軸通貨である米ドルから、金利という魅力がなくなったことで、米ドルを手放す動きが広がり、多くの通貨に対して米ドル売りが進んだ。「米ドル/円」も春以降は、ほぼ一貫して下落していたが、市場に何か変化でも起こったのだろうか。

図表:筆者作成

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成
※インディケーターは筆者開発のTwinCloud®で売買シグナルを出すことが可能。太さの変わる2本の移動平均とお考え下さい。

年明け、1月5日(火)に米国のジョージア州で投開票が行われた議会上院の決選投票は、事前の予想に反して2議席とも民主党が獲得した。上院100議席を共和党と民主党が50議席ずつ占めたことになり、採決時にイーブンで割れた場合、101票目の最終的な判断はカマラ・ハリス副大統領に委ねられる。民主党が大統領、上下両院を支配する「トリプル・ブルー」が現実となった。

1月20日(水)の就任式を待たず、当時のバイデン次期大統領は1.9兆ドル規模の経済対策案を提示、就任後は、インフラ投資などへの具体策にも言及する。米国ではすでに、新型コロナのワクチン接種も開始されていて、年後半の経済活動の完全再開も一部視野に入れている。

カリフォルニア州では、新型コロナの感染拡大を防止するために採用していた外出制限を一部緩和すると発表している。こちらに続き、ニューヨーク州でも、2月半ばから条件付きで市内の飲食店での店内飲食と解禁すると発表、徐々に経済は再開しつつある。

こうしたことから、将来の景気回復を織り込み米国では長期金利が上昇に転じていて、10年債の金利では昨年春以来の1.0%台を回復、1月12日(金)には一時1.18%台乗せと上昇が加速してきた。FRBパウエル議長は否定するが、複数の地区連銀総裁などは、早期のテーパリング(注)論にも言及し始めていて、金利の一段の上昇を後押しする

(注)国債などを買い入れる量的緩和の縮小。直接の引き締めは意図しないが、どうしても緩和の終了を意識させる。

米国の大手の金融機関は、軒並み年内の長期金利の上限を上方修正し始めていて、米金利の上昇からの米ドルへの回帰は想像しやすい。昨年末までの米国の低金利の長期化⇒ドル安への波及経路が揺らぎ始め、ここまで「米ドル/円」は堅調推移が継続する。

チャート:筆者作成

日銀は、1月20日(水)~21日(木)の日程で金融政策決定会合を開き、現行の金融政策の維持を決定している。その後の29日(金)に公表したこの会合での「主な意見」では、「3月の会合で、長期金利の変動幅の拡大を検討すべきとの意見」が有力になってきている。現行のマイナス金利の副作用に配慮する意見だが、にわかに市場の関心が高まっている。

すでに日銀の黒田総裁は、2017年11月のスイスで行われた講演のなかで、「リバーサルレート」という金融緩和が行き過ぎると、かえって銀行の貸し渋りを招くなどの副作用に言及している。「リバーサルレート」はプリンストン大学のブルネル・マイヤー教授が提唱する理論で、金融緩和がかえって引き締めという逆効果となる理論として認知されている。

この「主な意見」の公表後、日本の10年債金利はやや上昇に転じており、日本の金利の上昇は「米ドル/円」では売り要因となるが、年初来では米金利の上昇幅の方が大きい。日米の10年債金利差では拡大となっており、年初からの「米ドル/円」と日米の金利差の間には以下のような相関が戻る。

足元の相関式で表せば、“y=3.3528x+100.4”となり、日米の金利差の0.1%の変動が事実上、「米ドル/円」で約33.5銭の変動要因であることが分かる。この先、米景気が回復、金利差の拡大が視野に入ると、どうしても「米ドル/円」の上伸が意識されやすくなる。

図表:筆者作成

米国ではSNSを通じ、個人投資家が一部の空売り残高の多い無配株を標的に買いをあおる動きが続いていた。ゲームストップ株は、売り方の買い戻しから、昨年末比、取引時間中の高値まで実に25.6倍の暴騰をみせた。こうした空売りポジションを保有していた一部ヘッジファンド勢は、損失覚悟の買い戻しを迫られ、巨額の損失を計上した。

通常こうしたヘッジファンドなどは、一部銘柄を売り持ちにする一方、優良株などは買い持ちしていて、「ロング・ショート」という戦略をとる。このショートポジションに損失が発生した場合、機械的にロングポジションも決済する可能性が高い。1月下旬にかけて、ダウやナスダックがやや売り優勢となったのはこの影響からだろう。

こうした手じまいをする動きは、アンワインドといわれ、ポジションを巻き戻す動きだ。昨年春からのドル売りが続いたため、依然、為替市場には多くの米ドルショートが残る。以上をまとめると、米金利の上昇、日米金利差の拡大という援軍もあり、当面「米ドル/円」は底堅く推移するとみている。

チャート:筆者作成

竹内 のりひろ氏プロフィール

竹内 のりひろ(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2021年2月5日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内のりひろ氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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