スペシャル・トレンドレポート

バイデン当確とBrexit交渉(松崎 美子氏)

2020年11月18日

アメリカの大統領選とBrexit交渉。この2つのテーマに何らかの関係があるのだろうか?

今回のコラムでは、バイデン当確とBrexit交渉の先行き見通しについて、書いてみたいと思う。

プレッシャーを感じ始めたボリス?

11月11日、ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)は待ちに待った電話を受け取った。それは、勝利を確実としたバイデン前副大統領からの電話であった。この日、同氏はドイツ・フランス・アイルランドの首相とも話したが、一番に電話をしたのが、英国であったと伝えられている。

アイルランド人の血を引くバイデン氏は、Brexitには大反対。そして南北アイルランド和平を最優先しており、Brexitでその和平に乱れが生じるようなことになれば、米英通商交渉のチャンスはないと、自身のTwitterで公言している。

https://twitter.com/JoeBiden/status/1306334039557586944?s=20

果たしてこの日の電話で何を話したのかはわからないが、メディア報道によると、南北アイルランド和平を乱さないと約束するのであれば、今後も米英同盟を継続し、仲良くやっていこうとバイデン氏はボリスに伝えたと言われている。

ボリスが直面する2つの課題

バイデン氏からの電話を終えたボリスにとって、2つの課題が生じたと私は考えている。一つは、バイデン陣営との友好関係を築くこと。2つ目は、バイデン氏が決して譲らないアイルランド和平を乱す内容が含まれている国内市場法案(以下、IMB)の扱いである。

バイデン陣営との友好関係

バイデン氏だけでなく、民主党議員たちは、ボリスのことを「トランプ大統領に似た、いけ好かないポピュリズム政治家」と見ている。この刷り込まれたイメージを変え、バイデン陣営との友好関係をスムーズに築き上げるために、ボリスは既に動き始めているように感じる。

Brexit交渉とIMB

バイデン氏や民主党議員に、英国政府は引き続きアメリカと近い関係を維持したいと本気で考えていることを認めてもらうには、IMBに含まれている南北アイルランド和平を損ねる内容を削除すること。或いはそれが無理であれば、特別条項を付け、絶対に和平を乱さないという保証をつけることは必須だ。既に英上院では、その部分の削除を要求する修正案が可決されたが、ボリスからは何の反応も得られていない。

もしボリスが何の変更も加えなければ、上述のバイデン氏のTwitterでの指摘通り、米英通商交渉は合意どころか、交渉のスタートすら危ういことになる。

Brexit交渉とバイデン氏

バイデン氏は、欧州との関係修復を外交の優先順位トップに置いているそうだ。もし英国が来年1月1日にEUから離脱しなければ、アメリカと欧州との橋渡し/仲介役として力を発揮できたと、私は考える。

しかし離脱時期の変更はあり得ないため、予定通り離脱をした後に米欧関係の仲介役として英国が協力できるのであれば、それが最高の選択肢と言える。そのためには、英国はBrexit交渉では可能な限りの譲歩をしながらEUとの交渉をまとめ、離脱後も良い関係を維持することが好ましい。

問題は、ボリスがそのような柔軟性を持ち合わせているかであろう。11月15日、英国の交渉団はブリュッセルに飛んだ。あいかわらずBrexit強硬派であるフロスト交渉責任者が指揮を取っており、自身のTwitterでは、「 I will not be changing the U.K. position. 英国の交渉に対する立ち位置は、一切変わっていない。」と念を押している。これを見る限り、ボリス自身の対応が急に柔軟に変化するとは考えにくい。

https://twitter.com/davidghfrost/status/1327924800292052992?s=21

19日に予定されている非公式EUサミット・テレカンファレンスでは主に、パンデミック対策について協議される予定であるが、時期が時期であることを考慮すれば、Brexitについても何らかの協議が行われることが予想される。

https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/european-council/2020/11/19/

ボリスの本当の敵は、保守党議員?

英国の政治劇を毎日追っている私にとって、ボリスにとっての本当の敵は、EUでもバイデンさんでもなく、自身が率いる保守党ではないか?と常々感じている。

パンデミック対策では常に後手に回ったボリス政権。当然、保守党議員は自分の選挙区の有権者から厳しい指摘を受けており、ボリスへの信頼が大きく低下している。同時に、12月2日まで続く2度目のロックダウンに反対している重鎮議員も多く、これらの議員の多くはBrexit強硬派である点も興味深い。

ボリスがこれら強硬派議員の感情をさらに逆撫でしないためには、Brexit交渉でのこれ以上の譲歩は考えにくい。しかし、一切の譲歩をしなければ、今度はバイデン陣営との関係が崩れる。

この2つのバランスをいかに取るか?ボリスは非常に難しい選択を迫られていることだけは、事実であろう。運悪く、ボリスは11月15日夜から、2度目の自主隔離に入った。

ここからのポンド

今月に入り、ポンドの動きに良い影響を与えた材料は、ファイザー社/ビオンテックによるコロナ・ワクチンに関するニュースだった。コロナ死者数が欧州で最も多い英国にとって、神風となったとも言える。

某欧州系銀行も、「今回のファイザーのワクチンが、年末/年始あたりに使用可能となれば、最も恩恵を受けるのは英国であろう。ファイザー社とのワクチン予約数が多いこと、そして英国での感染が急拡大していることを考えると、G10各国の中で最も経済的な恩恵を受けるのは英国となるだろう。」と書いた顧客向けレポートを出したらしい。

果たして今回のワクチンが無事承認されるのか?そして副作用などの問題はあるのか?まだまだ未知数の方が多いが、今後の動きに期待したい。

最後にポンド実効レートを見てみよう。最初は、2016年からのチャートである。2020年に入ってからの動きを見ると、トライアングルのようにも見える。

出典: 英中銀
https://www.bankofengland.co.uk/boeapps/database/fromshowcolumns.asp?Travel=NIxAZxSUx&FromSeries=1&ToSeries=50&DAT=RNG&FD=1&FM=Jan&FY=2010&TD=11&TM=May&TY=2025&FNY=Y&CSVF=TT&html.x=66&html.y=26&SeriesCodes=XUDLBK67&UsingCodes=Y&Filter=N&title=XUDLBK67&VPD=Y

次に、2020年に入ってからの拡大チャートを見ると、9月から上昇チャネルの中に入って動いているようだ。チャート上に引いてある青い平行線は、今年の値幅の50%レベルである。

私自身は、ボリス内閣崩壊とかBrexit交渉が突然打ち切りになるなどの予想外の展開とならない限り、青い平行線の下に落ちる局面では、ポンド買いを考えている。

出典: 英中銀
https://www.bankofengland.co.uk/boeapps/database/fromshowcolumns.asp?Travel=NIxAZxSUx&FromSeries=1&ToSeries=50&DAT=RNG&FD=1&FM=Jan&FY=2010&TD=11&TM=May&TY=2025&FNY=Y&CSVF=TT&html.x=66&html.y=26&SeriesCodes=XUDLBK67&UsingCodes=Y&Filter=N&title=XUDLBK67&VPD=Y

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
ロンドン在住の元為替ディーラー。東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2020年11月18日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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