スペシャル・トレンドレポート

「過去最悪の財政赤字」により 米大統領選の結果を問わずドル安は続く

2020年10月28日

1)トリプルブルーは「株高、円安」なのか?

早いもので、本稿執筆時点(10月24日)で、今年最大のイベントである米大統領選まで2週間を切ってきた。

そのため、米大統領選挙に関する報道が加熱する中、2020年11月3日に大統領選挙と同時に行われる連邦議会の選挙動向にも注目が集まっている。

そこで、米大統領選と、連邦議会の選挙結果、そしてその後の相場の行方について考察してみよう。

まず、10月初旬頃から注目されてきた

①「*トリプルブルーで、risk onの「株高、円安」という考え方。

「*トリプルブルー」とは、バイデン氏が大統領選で勝利し、そして上下両院とも民主党が制すること(民主党のシンボルカラーはブルー)。

基本的には、減税公約のトランプ氏と増税公約のバイデン氏を比較すると、トランプ氏勝利でrisk on、そしてバイデン氏勝利でrisk offとなるのは当然である。

しかしバイデン氏が勝利し、上下両院とも民主党が勝利すれば、民主党案の大規模追加経済対策への期待が高まる。

そこで(いったん増税のマイナス効果は忘れ)トリプルブルーでも株高という考え方が増えてきているというか、そういう考え方を浸透させようとしているメディアの報道が増えてきた。

これは米大統領選にむけての新しいコンセンサスといえる。

なぜなら、この文脈に沿えば、トリプルブルーであれば、バイデン氏勝利でも株高ということになる。

一方トランプ氏の再選は、これまで「株高」だとされていたが、民主党が上下両院を制した場合、大統領は共和党トランプ、議会は民主党という「ねじれ議会」となり、リスクオフの「株安、円高」ということになる。

この考え方はこれまでの「トランプ氏勝利で株高、バイデン氏の勝利で株安」という考え方ではなく、上下両院をどちらが取るかが重要だということになる。

それでは、①トリプルブルー以外はどういうシナリオの可能性があるのか、確認してみよう。

まず、②*トリプルレッド(=トランプ大統領、上下院とも共和党)政権となった場合。

(*共和党のシンボルカラーはレッド)。

現在の政治情勢では、共和党が下院をとる可能性は極めて低いため、この「共和党完全勝利」のケースは除外する。

そして、③現在のパープル政権(トランプ大統領、上院=共和党、下院=民主党)。

この場合は、現状と同じ勢力図なので直近で大きな変化はないと思われる。

次は④大統領がバイデン氏となったパープル政権(バイデン大統領、共和党上院=共和党、下院=民主党)

この場合は、バイデン大統領と共和党上院との間に激しい軋轢が予想され、マーケットにとってネガティブな流れになると思われる。

最後は、⑤トランプ大統領が残るパープル政権(=トランプ大統領、上下院とも民主党)

このケースは、トランプ大統領と民主党の間で激しい論争が繰り広げられると想定されると同時に、民主党議会指導部で中道派が主導権を失い、左派の影響が高まることが想定される。

本稿執筆時点では、一番可能性が高いと想定されているのが①トリプルブルー政権といわれている。

ただ、2016年大統領選挙では、選挙直前の10月28日にオクトーバー・サプライズが飛び出している。

FBIのジェームズ・コミー長官が民主党候補ヒラリー・クリントンの国務長官時代の私用メール問題 で新証拠を発見し再捜査すると発表。

それをきっかけにヒラリー氏は失速。

大統領選挙はトランプ氏が勝利をおさめると大逆転劇となった。

そのため、本稿執筆時点では、まだ次にどんな「オクトーバー・サプライズ」が飛び出すのかわからないため、トレードにおいては、次々と飛び出すヘッドラインに巻き込まれないように留意している。

一方、11月3日の選挙結果に関わらず、ドル安が進むのではないか?という考え方も増えてきている。

2)アメリカの「過去最悪の財政赤字」により、米大統領選の結果を問わずドル安は続く。上昇トレンドに回帰したユーロドルに注目!

11月3日の米大統領選の結果に関わらず、ドル安が進むのではないかと考えている参加者が注目しているのが「過去最悪」となったアメリカの財政赤字である。

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アメリカ「過去最悪」財政赤字が他の先進国より気になる理由。IMF「財政報告」が示すドルの行く先

米財務省は10月16日、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)の財政赤字が過去最悪の3兆1320億ドル(約330兆円)に達したと発表した。

これまでの過去最悪は、リーマンショック直後にあたる2009会計年度の1兆4160億ドルだから、2倍を超える水準でこれを更新したことになる。アメリカの名目GDP(約21兆ドル、2019年)の15%相当という規模感は文字通り、戦時中を彷彿とさせるものだ。

筆者はこの「ドルの過剰感」(=財政出動などでドルが市場に過剰供給されている状況)こそが為替相場の潮流を規定しているとみており、足もとには米連邦準備制度理事会(FRB)が政策的に金利上昇を抑え込む状況もあることから、ドルは買えない通貨だと考えてきた。その基本認識は当面変わりそうにない。

出所 Business Insider

=====

これはみずほ銀行の唐鎌大輔 氏の記事だが、個人的にも同感である。

アメリカ財政赤字が「過去最悪」となりリーマンショック時の2倍に膨らんでいるわけなので、トランプ氏、バイデン氏のどちらが大統領でも、現在の金融緩和が長期化することは避けられないため大きな流れはドル安で変わらないと想定している。

そしてドル安の対象として注目が高まっているのがユーロドル。

添付図はユーロドルの日足。

(YJFX MT4より筆者作成)

ユーロドルは9月1日に1.2011の高値をつけた直後、ECB当局による口先介入により、調整局面入り。

筆者は節目の1.1500辺りまで調整することも想定していたが、1.1500どころか1.1600も割り込めず、安値は9月25日の1.1612まで。

そして調整が始まってから一月半経過。

ユーロドルは再び1.2000に向けてユーロ高、ドル安トレンドに回帰し始めている。

加えて、EUが予定している28兆円のグリーンボンド発行は欧州への資金流入を促すとも思われ、この報道もユーロドルをさらに底堅くしている。

そのため米大統領選の結果に関わらず、中期でのユーロドルは1.30ドルへと上昇すると予測する銀行も登場。

懸念のECBの口先介入は、ユーロドルの上昇トレンド(ドル安)を変えるようなものではなく、あくまでもスムージングオペレーションだと想定している。

結果、アメリカの「過去最悪の財政赤字」により、米大統領選の結果に関わらずドル安が続く可能性が高まっている。

上昇トレンドに回帰しつつあるユーロドルの行方に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2020年10月28日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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