スペシャル・トレンドレポート

不透明感の高まりから、「ユーロ/円」下値模索の展開へ(竹内 のりひろ氏)

2020年10月2日
NYのシニアディーラー :「先日、NYに着任しまして、ようやく落ち着いてきました」
チーフディーラー :「それはよかった。11月3日(火)の米国の大統領選に向けた感触はどうなの?」
NYのシニアディーラー :「今日9月30日(水)(東京時間の午前)、大統領選の第1回テレビ討論会があり、民主党のバイデン候補が無難に終えています」
チーフディーラー :「じゃ、バイデン大統領誕生?」
NYのシニアディーラー :「今年の場合、大統領が決まらない可能性もあり、混とんとしてきました」

NYのシニアディーラーの話では、4年に1度の米国の大統領選挙だが、今年の場合、大統領が決まらない可能性があるという。

トランプ大統領は、9月26日(土)、死去したルース・ギンズバーグ最高裁判事の後任に、連邦控訴裁判事を務めるエイミー・バレット氏を起用すると発表した。トランプ大統領が、野党民主党の反対を押し切り後任人事を急いだのは、11月の大統領選の結果が、連邦最高裁の判断に委ねられることを想定しているに他ならない。

リベラル派のギンズバーグ最高裁判事の後任が、保守派の判事になったことで、最高裁のなかは、保守派6人、リベラル派3人となった。トランプ大統領は、11月の大統領選で敗北した場合、選挙結果に関し、裁判で争う構えだ。こうした場合、連邦裁判所の保守派色が強ければ、自身に有利な判決が出ることになり、上述の人選は意図が透ける。

4年に1度の米国の大統領選を控えた9~10月は、金融市場は概して不安定な展開になりやすく、株式市場では新規の買いが入りにくくなる。今年は9月2日(水)、ナスダック総合指数が史上最高値を更新して引け後、その後の3営業日で10%を超える下落を演じ、史上最速で調整局面入り(注)となった。

(注)株式市場では、調整局面入りの目途として高値から10%の下落、弱気相場入りとして20%の下落を目安とする。

9月の為替市場の値動きを振り返ると(本レポートは、9月30日(水)午後執筆)、主要通貨の対米ドルでの騰落を計測すると、上昇通貨は円(+0.32%)のみ、その他はすべて下落していっている。円と米ドルが同時に買われ、クロス円が下落するリスクオフの展開が鮮明で、大統領選を控えた不透明感が漂いつつある。この動き、続くのだろうか。

チャート:筆者作成

図表:筆者作成

9月1日(火)、年初来高値127.07円を示現した「ユーロ/円」だが、その後はさえない。9月10日(木)のECB(欧州中央銀)理事会後の記者会見で、ラガルド総裁は「(急速なユーロ高に関し)注意深く見守っていく」とけん制した。9月28日(月)には、欧州議会にビデオカンファレンスで参加、「ユーロ圏のインフレ率、今後数か月マイナスが続く可能性、ECBは全ての措置を用意」と危機感をにじませた。

こうした度重なるユーロ高けん制発言もあり、「ユーロ/円は」軟調な地合いが継続、9月28日(月)には122.38円までの下落をみせた。欧州では、少子高齢化に加え、低金利と低インフレが長期化する日本化への懸念が非常に強い。ここに新型コロナからの需要減などが追い打ちをかけ、ここまで物価の低迷が続いている。

ドイツ連邦統計局が9月29日(火)に発表した9月の消費者物価指数は、前年比で-0.4%の下落となった。新型コロナの感染拡大への景気刺激策であるVAT(付加価値税)の引き下げや、原油価格の下落などが押し下げ要因となり、2015年1月以来、約5年半ぶりの低水準を記録した。今週に発表が予定される9月のユーロ圏の消費者物価指数も、一段の下落が予想され「ユーロ/円」の戻りが鈍くなる可能性が高い。

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成
※インディケーターは筆者開発のTwinCloud®で売買シグナルを出すことが可能。太さの変わる2本の移動平均とお考え下さい。

チャート:ユーロスタット、ドイツ連邦統計局より筆者作成

欧州では、厳格なロックダウン(都市封鎖)の効果から一旦減少に転じた新型コロナの新規感染者数だが、ここにきて急増、景気の2番底の懸念が広がっている。ECDC(欧州疾病予防管理センター)のデータでは、南欧、特にスペインやフランスでは、9月に入り新型コロナの感染者が急増、14日移動平均でも1日当たり1万人を超えてきた。

欧州各国は、夏のバカンスの時期の観光業への需要の喚起を狙い、人の移動の規制を緩和してきたが、9月に入りそのつけが回ってきた。感染拡大の要因として、絶対的な検査件数の増加に加え、人の移動の増加、気の緩み等が指摘されている。
こうしたことから、スペインやフランスの一部地域では再び外出制限が敷かれ、人の移動が滞り始めたことで、観光業に依存する経済への影響が大きくなりつつある。

スペインのマドリードでは、9月21日(月)から一部地域への出入りを事実上禁止、集会の人数も制限し始めた。フランスでも同日、首都パリ、中部リヨン、南仏のトゥールーズが集会の制限を発表した。バーの営業が午後10時まで、夜間のアルコール類の販売が禁止、スポーツジムなども閉鎖が発表されている。違反者には罰金が科され、部分的ながらロックダウンの再開となっている。

こうした状況は英国でも同じで、ジョンソン首相は、今のままでは10月中旬に1日あたりの感染者数が5万人に達すると警告している。英国では9月22日(火)、マスクの未着用、6人以上の集会、初犯の罰金200英ポンドに増額、レストランのテーブル・サービス22:00までと規制の動きを強化している。

こうした欧州や英国の規制強化の動きを受け、経済活動の停滞が視野に入るなか、為替市場では、ユーロや英ポンドが対円でここまで値を下げてきた。

チャート:ECDC(欧州疾病予防管理センター)より筆者作成

以上をまとめると、米国では4年に1度の11月の大統領選挙を前に不透明感が強まりつつある。株式市場はすでに調整局面に入っていて、なかなか新規の買いが入りにくい。こうしたなかでは、グローバルの機関投資家は現金比率を高め、どうしても既存のポジションの解消を急ぐことになる。ECBからのユーロ高けん制や欧州での新型コロナの感染再拡大から、経済は委縮、資金も戻りにくい。

「ユーロ/円」は11月に向け、上値重く、弱含む展開を想定している。

竹内 のりひろ氏プロフィール

竹内 のりひろ(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2020年10月2日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内のりひろ氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について竹内のりひろ氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権はワイジェイFX株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

YJFX!口座開設者限定コンテンツ「プレミアムレポート」のご紹介

為替業界の著名人や当社のマーケット分析を担当するスペシャリストが執筆したYJFX!のためだけの限定レポートです。PCの取引画面やCymoアプリからご利用いただけます。

みんなのオーダー

YJFX!で取引されているお客さまのポジション状況をグラフ化し毎日更新しています。

YJFX!オリジナル ウィークリーレポート

証券アナリストの資格を持つYJFX!マーケット分析チームが前週の振り返りと今週の注目ポイントをわかりやすく説明しています。

スペシャルレポート

為替トレーダーやアカデミー講師のスペシャルレポートが読めるのはここだけ!他では読むことができない限定レポートをご提供!

プレミアムレポート閲覧方法

ご覧いただくには外貨exの口座をお持ちいただく必要があります。

外貨exの口座をお持ちの方

【スマートフォンをご利用のお客さま】
>Cymoアプリのダウンロードはこちら
①「Cymoアプリ」にログイン
②「ニュース」→「プレミアムレポート」

【パソコンからをご利用のお客さま】
>パソコン版取引画面へのログインはこちら
①取引画面にログイン
②左側メニュー「投資ツール」→「ニュース・レポート」→「プレミアムレポート」

外貨exの口座をまだお持ちでない方

新規口座開設(無料)はこちら

関連する記事

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションならヤフーグループのYJFX!
ワイジェイFX株式会社は
ヤフー株式会社のグループ企業です。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

YJFX! from Yahoo! JAPAN