スペシャル・トレンドレポート

ECBに続きRBAも通貨高に懸念を表明、 AUDドルは調整局面へ

2020年9月30日

1)ECBチーフエコノミストの口先介入でユーロ・ドルがトップアウトし、主要通貨は「ドル高、円高」にトレンド転換

マーケットのトレンドはある日を境に、そのトレンドを大きく転換することがある。

このレポートで何度か取り上げたが、今年最初にこうしたgame changeが起こったのは3月19日。RBA(オーストラリア準備銀行)の政策金利の引き下げがきっかけだった。

新型コロナパンデミック対策でFRBをはじめ各国中銀が利下げしていたため、RBAの利下げはすでにマーケットで十分に織り込まれていた。AUDドルもRBA前から下げていたが、利下げが発表されると0.5510の安値から急反発。つまり、噂で売って事実で買うという動きとなった。(=buy the facts)

なお、豪ドル円も59.91円の安値から、上昇トレンドになっている。

豪ドルだけの動きならgame changeとは言いにくいのだが、興味深いのは、AUDドルにわずか数日先行する3月16日にGoldが安値である1,451ドルをつけボトムアウトしている。またグローバルな株価を牽引するNasdaqが3月23日に6,631ドルの安値をつけた後、こちらも急反発。 RBAの利下げと前後してGOLDやNasdaqも動いており、RBAの動きがパンデミックによるリスクオフの動きにgame changeを起こしたものと思われる。

AUDドルやGoldの反発も凄まじいのだが、Nasdaqの急騰は圧巻で9月2日の12,074ドルまで一方的に暴騰。これは1.8倍の上昇で、3月から9月までの半年弱で2倍近く暴騰したことになる。

今年は米大統領選というビッグイベントを11月に控えている。

9月には11月3日の米大統領選まで約2ヶ月となり、多少の調整はあっても米大統領選まではrisk onの「株高、ドル安」が続き、大きな波乱はないだろう、というのがコンセンサスだった。

こうしたマーケットに冷や水を浴びせたのがECB。

9月1日の為替市場では、ユーロ・ドルが1.2000のバリアをついにブレイクし1.2011の高値まで到達。King of currency(通貨の王者)であるユーロ・ドルが節目の1.2000を超えたことで、9月以降も米国大統領選挙を控え「株高、ドル安」の可能性がさらに高まると思われた局面であった。

しかし同日、ECBのチーフエコノミストは下記のコメント。

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欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーでチーフエコノミストのフィリップ・レーン理事は、為替レートを金融政策の目標にしてはいないが、「ユーロ・ドルのレートは重要」だと、オンラインで行われたパネル討論会で語った。

「ECBにはインフレに関する責務があり、欧州経済全体の動向に留意している」

ユーロ・ドルの為替レートに「ここ数週間である程度の水準訂正が起きているのを目の当たりにしている」

ユーロの回復力向上やユーロへの投資に関連するリスクの低下などが「重要な力」となっている

出所 Bloomberg

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このコメントで、1.20をやっと突破したユーロ・ドルは、一気に1.19まで下落。このタイミングでのチーフエコノミストの発言はECBによる口先介入ととらえられる。

ユーロ・ドルの安値からの上昇率はわずか13%にすぎないのにも関わらず、ユーロ高について言及したことがマーケットを驚かせたが、その後、ラガルト総裁もユーロ高に懸念を表明し、ECBの姿勢であることを示した。

この9月1日のユーロ・ドルの急落に端を発する転換の動きは、主要通貨のみならず、多くの金融プロダクツでも発生していた。

9月1日に高値をつけたのが下記の通り。

ユーロ円=127.08円。

AUDドル=0.7414.

豪ドル円=78.36円

ポンドドル=1.3482.

ポンド円=142.71円。

このように9月1日からユーロ・ドルを筆頭にドルストレートが高値から反落しているが、クロス円も同様に高値をつけてトップアウトしている。そしてクロス円がトップをつけたということは、マーケットはrisk offへ転換したということになる。

(ユーロ円日足 YJFX MT4より筆者作成)

(ポンド円日足 YJFX MT4より筆者作成)

リスクオフの動きが他の金融市場でも顕在化しているかどうか、グローバルな株価を代表するNasdaqの動きをチェックすると、こちらも9月2日が12,074ドルの高値となっている。その後、Nasdaqも大きく値を下げている。(添付のNasdaqの日足を参照 )

(Nasdaq 日足チャート Bloombergより筆者作成)

こうして金融市場がrisk offに傾き始める中、対ドルでの自国通貨高に言及する中央銀行がもうひとつ現れた。

それがRBA(Reserve Bank of Australia=オーストラリア準備銀行)。

2)RBA副総裁はAUDドルの急騰に不満表明し、Goldの反落をきっかけにAUDドルは調整へ

前述のように9月に入ってからの「株安、円高」の動きは、クロス円では当初は弱く、まだ3月からのrisk onの調整局面と言える範囲で緩慢なものだった。

ところが、オーストラリアの大手銀行であるWestpac銀行が、「RBAが10月6日に開催予定のRBA金融政策決定会合において「政策金利を0.25%から0.10%へ引き下げるのではないか?」とのレポートを出したとのことで、ユーロ・ドルに続き、AUDドルの上値が更に重くなってきた。

そして、RBAのデベル副総裁が通貨高についてコメントしたことで、AUDドルが調整局面入したことがさらに明白になってきた。

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豪中銀、為替介入・マイナス金利含む多様な選択肢を精査=副総裁

オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)のデベル副総裁は2日、中銀はインフレ率と雇用の目標達成に向け、為替介入やマイナス金利を含むさまざまな金融政策の選択肢を精査していると明らかにした。

中銀はコロナ危機で豪経済が受ける打撃を和らげるため、3月半ばに開いた臨時会合で政策金利を過去最低の0.25%に引き下げた。

また、無制限の国債買い入れプログラムと金融機関向けの低利の資金供給策を打ち出した。中銀はそれ以降、金利を据え置いており、景気を支えるために必要な限り超緩和的なアプローチを継続する方針を示している。

出所 ロイター

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(AUDUSD 日足チャート Bloombergより筆者作成)

Westpac銀行のレポートについて、私は政策金利をわずか0.15%下げることにどういうメッセージがあるのかピントこなかった。ただ上記のデベル副総裁のコメントから、同副総裁はAUDドルの急騰を懸念していることがわかる。

3月にAUDドルが0.5510まで急落したときは、RBAは買い介入をほのめかしていたので、そこから33%上昇したレベルで、今度は通貨高を懸念するのは釈然としない。しかし、デベル副総裁が、問題視しているのがAUDドルのレベルではなく、上昇スピードのようである。

つまり、わずか3ヶ月程度でAUDドルが30%もの急騰をみせたことを問題視しているようだ。

さらにいえば、デベル副総裁は利下げをほのめかしているが、RBAが金利調節という武器を実際に使うわけではなく、そうしたリークを大手銀行に報道させることでAUDドルの急騰を治めようとしているのではないか?というのがオーストラリアの友人の意見。

つまりRBAはWestpac銀行を通して、AUDドルの上昇を抑えながらも、実際は利下げなど行わないのかもしれない。

いずれにせよ、私はデベル副総裁の通貨高牽制コメントにより、AUDドルの上値は限定的になる可能性が高いのではないか?と想定している。

9月1日より、ユーロ・ドル、ユーロ円は高値到達後、調整局面入。

そしてAUDドル、そして豪ドル円も9月1日の高値より反落。

軟調なGoldの動き、そしてRBAの利下げの噂、加えてデベル副総裁の通貨高牽制コメントにより、3月以降、対米ドルで33%も急騰していたAUDドルも調整局面入した公算が高くなってきた。

調整により下値余地が拡大しているAUDドル、そして豪ドル円の下落に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2020年9月30日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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