スペシャル・トレンドレポート

快進撃を続けてきた豪ドルが失速の兆候 ~鍵はAUDNZDが握る~

2020年5月27日

1)急騰した豪ドル

米ドル円(USDJPY)が狭いレンジに陥る中、先月、先々月のレポートで解説した豪ドル円(AUDJPY)は2ヶ月で11円の急騰。豪ドル米ドル(AUDUSD)は一時0.6616まで上昇しており、3月19日のRBA金融政策決定会合以来、主要通貨に対して豪ドルは急騰。

一方、「*sell in May」も意識され、神経質な動きを続けている米ドル円は、今月に入ってほぼ2円幅の106.00円~108.00円の狭いレンジでのもみ合いが続いている。

(*正確には、「Sell in May, and go away. Don’t come back until St Leger day.」という格言で、5月には持ち株を売却して相場から立ち去り、セント・レジャー・デイ(9月第2土曜日)までは相場に戻ってくる、となる。5月以降、相場が調整で下落することを懸念している格言。)

豪ドルが強い要因は、このレポートで何度も解説してきたが、ここでもう一度確認したい。

今回の新型コロナショックにより、世界的にかつてない規模の財政出動と金融緩和が各国の中央銀行で行われている。

FRBを筆頭に、BOE(英国中銀)、ECB(欧州中銀)、日銀、BOC(カナダ中銀)、PBOC(中国人民銀行)など主要国の中央銀行が金融緩和に動いているだけでなく、様々な方法で市場に資金供給している。

ポストコロナ相場は、結局、この膨大に供給された資金がどの金融市場に向かうのかが注目されている。

一般的にマーケットに強い負荷がかかると、株を筆頭としたリスクアセットから資金が逃げ出し、安全な現金、つまり米ドルに流れる。通貨市場では新興国通貨が売られ米ドルが買われる。これにより急激で極端な米ドル需要(米ドル買い)が起こり、米ドル円市場では101円台から111円台に踏み上がるという米ドル暴騰の相場が3月に展開された。世界中の誰もが米ドルを必要としたわけだ。特に米ドルは世界の基軸通貨なので、資金流出した新興国などで米ドルが不足すると、新興国発の金融不安が起こりかねない。

そこで、主要国の中央銀行は米国を筆頭に、前例のない規模の財政出動と金融緩和をして大量の米ドルを供給した。米ドルを潤沢に供給することで、コロナショックから金融不安が発生することを予防したわけだ。

しかし、市場への大量の米ドル供給は単に金融不安の解消だけではない。金融市場に溢れた膨大な米ドル資金は、今後株などのリスクアセットに徐々に移行すると思われる。これがポストコロナ相場の注目点である。

こうしたグローバルな資金の動きに筆者が情報交換している海外の友人は、こうした資金がCommodity(商品)市場にも流れるのではないかと注目していた。

それが通貨市場でいえば、Commodity通貨の代表である豪ドルである。

当レポートでも解説したが、筆者が過去2ヶ月にわたり豪ドルに対して、きわめて強気なスタンスを維持してきたのは、このような背景によるものである。

これに加えて、5月中旬にBloombergが豪ドルの資金フローについて興味深い記事を配信していましたので紹介したい。

=====

米投資家がオーストラリアのETFの底堅さに寄与している。

4−6月期に入って、米国の投資家はスイスを除くどこよりもオーストラリアに注力するファンドに資金を入れている。

Bloombergのまとめによれば、オーストラリアへの純流入のうち約1.82億ドルが米国籍のファンドから流れている。

バンエック ベクターズオーストラリア不動産ETFには大量の資金が流れ、顧客からの問い合わせが殺到している。

出所 Bloomberg

=====

「顧客からの問い合わせが殺到している。」という表現は大げさな印象を受けるが、オーストラリアへの資金の流入がかなり増えている、とオーストラリアの友人が言っていたことをこのBloombergの記事が表しているともいえる。

こうして急騰してきた豪ドルの動きは、直近では少々過熱気味。

一貫して豪ドルに強気な筆者にとっても上げ渋るだろうと想定していた豪ドル円の70.00円レベルをマーケットはあっさり通過し71円台をつけ、市場の豪ドル買いが過熱してきている兆しが見て取れる。

マーケット関係者によれば、豪ドル円の70円台は本邦からと噂される豪ドル円買いが断続的にマーケットに持ち込まれていたとのこと。

この豪ドル円上昇の過熱感が、筆者に「豪ドル反落」に対する警戒感を抱かせるようになってきた。

2)AUDNZDがトップアウトを示唆

前述のように5月第3週の豪ドルの動きは筆者に「豪ドルの調整反落」への警戒感を芽生えさせたのだが、もうひとつの懸念はAUDNZDの動き。

過去2ヶ月の豪ドルの急騰にはAUDNZDの上昇も大きく寄与している。

個人的に、筆者が豪ドルに対して強気な理由として、もうひとつ要因をあげるとRBA(オーストラリア準備銀行)がマイナス金利に対して積極的ではないことが挙げられる。

豪州とニュージーランドの中央銀行が掲げる、金融政策のスタンスの相違から為替を考えてみると、RBAはタカ派であり、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)はハト派なので、豪ドル/NZドルは上昇ということになる。

このことが過去2ヶ月AUZNZDを押し上げ、同時に豪ドルが他通貨に対しても続伸してきた要因のひとつである。

ただそのAUDNZDの快進撃にも少々懸念が生じてきた。

AUDNZDが0.9996のボトムをつけ反発を開始したのが、3月18日。

これはRBA金融政策決定会合の前日となる。

そして豪ドル米ドル(AUDUSD)が反発を開始したのが、RBAが利下げをした3月19日になる。

そのAUDNZDだが、5月18日に1.0844の高値をつけ反落を開始している。

この1.08ミドルというレベルは、昨年高値付近である。昨年は9月高値と11月高値ダブルトップとなってAUDNZDは下落に転じている。

このように直近高値である1.08ミドル付近はAUDNZDにとって重要なレベルである可能性があることから、筆者が多用しているインディケーターである「demark indicator」でもAUDNZDの値動きをチェックしてみよう。

添付図はAUDNZD日足。

(チャート:筆者作成)

demark indicatorのTD-COMBOは、カウントダウンの13を点灯して反落を示唆しており、AUDNZDの上昇相場はいったん終了することを示している。

前述のように、AUDNZDの反発が豪ドル円の59円台からの急騰を牽引してきたのであれば、5月第4週のAUDNZDのじり安傾向は、豪ドル円(AUDJPY)の反落を示唆しているともいえる。

ここで豪ドル円(AUDJPY)の日足を確認すると、過去2年間、豪ドル円は200日線移動平均線が上値を抑えている。200日移動平均線(200SMA)を超えることは何度もあるが、毎回その動きがダマシとなり、結局は200日移動平均線が豪ドル円の上値を抑えている。

添付図はAUDJPY日足

(YJFX MT4チャートより筆者作成)

今回、その注目の200日移動平均線は72.13円に位置している。この点からも豪ドル円の上値余地は徐々に限定的となっているといえる。

さらに、豪ドル円の上値が重くなる理由は、WTI(West Texas Intermediate=原油先物)の上昇も要因の一つとして上げられる。

新型コロナウイルス感染拡大により世界中で人の移動が止まり、燃料である原油は需要が激減した。当然、原油価格も急落し、4月21日には6.50ドルまで下落したWTIだが、5月20日のNY市場で33ドル台まで急騰し、節目の35ドル手前まで急回復している。しかし、原油需要が急激に戻るとは考えにくく、ここからのさらなる上値余地は大きくないと考えている。

このAUDNZDとWTIの上値余地が徐々に限定的となったことを考えれば豪ドルの上値余地も次第に限定的になるのではないかと想定している。

中期については豪ドルの底堅さは変わらないと考えているが、AUDNZDとWTIの動きから、調整が警戒される豪ドル円の動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2020年5月27日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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