スペシャル・トレンドレポート

豪ドル/米ドルの反撃 ~過去10年で半値になった豪ドルは悪材料出尽くしでボトムアウト!~(西原 宏一氏)

2020年3月25日

1)FRBの新型コロナ対策でも米株は暴落!

2月からの米株の急落に対し、FRBは3月15日に、緊急利下げという思い切った対策を打ち出した。

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米FRBが緊急利下げ、債券買い入れ再開や他のツール活用も米連邦準備理事会(FRB)は15日、政策金利をゼロ付近に引き下げ、債券買い入れを再開するとしたほか、危機時の対応手段の活用に踏み切った。

新型コロナウイルスの感染拡大で急速に悪化する世界経済を支援するため、日銀など主要中央銀行と協調してドル資金の供給を拡充することで合意した。

出所ロイター

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利下げ幅は驚きの1.0ポイントで、政策金利は一気に0.00%~0.25%へ

加えて債券買い入れも再開すると発表。

ところが、これだけ迅速かつ大きな金融緩和策をFRBがとったにもかかわらず、米株は下げ止まらず。

これについては今回の新型コロナウイルス危機による米金融の混乱が銀行間ではなく、企業の資金繰りの悪化によるものだとする指摘が増えている。

翻って、2008年のリーマンショックを思い出してみよう。

リーマンショックの時は、銀行間において信用収縮が起きたため、企業に対する信用スプレッドが逝ってしまったわけだ。

結果、米企業の金融の流動性が悪化。人間の体に例えるなら、血液に当たる資金の流れが縮小したため、いわば血流が急激に滞った状態となった。このため、人の体に当たる実体経済も様々な部分で、血流悪化という問題が生じてきた。

ところが今回は銀行など金融機関同士の資金流動性には問題はないが、金融機関と企業との間でのお金の流れに目詰まりが起きている。

そのため、FRBの思い切った対策も、米株の下落を止める効果はなかった。

当然、FRBもその点についての認識はあるため、銀行と企業との間のお金の目詰まりを解消するために次の一手を打ってきた。

2)FRBはCP市場への流動性供給するがドル不足は解消せず、ドルは全面高!

FRBの次の一手はCP(コマーシャル・ペーパー=Commercial paper)市場への流動性供給策! 

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米FRB、CP市場への流動性供給策を導入 新型コロナ対策で

米連邦準備理事会(FRB)は17日、新型コロナウイルス危機によるクレジット市場の緊張緩和に向け、2008年の金融危機時に導入したコマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティー(CPFF)を再び導入すると発表した。

FRBは声明で「緊張下において円滑な市場の機能を確実にし、家計や企業、幅広い雇用を支える信用を供与する」と表明した。

CPFFの下では、FRBが発行体から直接CPを購入する。FRBは、CPFFによってCPの発行体に流動性が提供されるとした。

CP市場は様々な企業にとって短期資金の調達源となっているが、流動性がここ数週間で枯渇していた。

金融危機時に、FRBはCPFFを通じ計7380億ドルのCPを購入した。

出所ロイター

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民間企業が短期金融市場から資金調達する方法のひとつがCPである。こうした本来市場に任される民間企業の資金調達に直接FRBが踏み込んでまで資金供給を開始したので、コロナショックにより苦しくなった米企業の資金繰りが楽になると思われた。

この動きを確かめるために添付したのが、3か月のCP(コマーシャル・ペーパー)と同じ期間の米短期金利のスプレッド。

チャートをみると、2月後半の新型コロナが欧米で感染拡大して米株が急落しはじめる2月後半からスプレッドが急拡大して資金調達コストが急増していることがわかる。民間企業の資金調達に支障が生じていると考えられる。

(チャート:筆者作成)

少なくとも本稿執筆時点(3月20日)では、このスプレッドは改善しておらず。

ロイターにもこの「FRBのCP市場の支援策は不十分」との記事がのせられている。

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[ニューヨーク 17日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)が17日に発表したコマーシャル・ペーパー(CP)市場への流動性供給策を巡り、一部投資家の間で不十分との見方が出るなど、評価はまちまちとなっている。

FRBは17日、新型コロナウイルス危機によるクレジット市場の緊張緩和に向け、2008年の金融危機時に導入したコマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティー(CPFF)を再び導入すると発表した。これにより、FRBは発行体から直接CPを購入する。

CP市場は企業にとって短期資金の調達先となっているが、流動性がここ数週間で枯渇していた。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのグローバルボンド共同責任者ニック・マロウツォス氏は、FRBの発表を受け、格付けの高いCPの価格が改善したと述べた。

16日の時点では、翌日物の高格付けCPと低格付けCPの金利差が2008年以来の水準に拡大していた。

一部の投資家は、新型コロナウイルスを巡る先行き不透明感から幅広い資産市場で動揺が続く中、CPFFの再開や最近発表されたその他の流動性支援策が金融システムの機能維持に十分かどうか懸念を示している。

信用リスクの比較的高い企業が発行する低格付けCPは、おおむね買い入れの対象から外れる。シティのアナリストはリポートで、こうした発行体が高格付けCPと比べて大幅に高いコストでFRBから借り入れることになる可能性を示唆した。また「徐々に悪化する問題に対し、十分迅速に対応できないのではないか」と懸念を示した。

出所ロイター

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つまり、グローバル経済の資金であるドルが潤沢に流動しておらず、ドル不足は解消していないことがわかる。このため、為替市場でもドルは底堅く推移し、ドル買いの動きで米ドル/円も一時111.51円まで急反発したわけである。

欧州通貨をチェックするとポンドドルは1.16台、ユーロドルは1.06台へ下落し、つまりドルは続伸。

そしてrisk offで真っ先に売り込まれる傾向のある豪ドル/米ドルも一時0.55ドルまで急落。全般にドルが買われている。

ただFRBがCP市場にまで介入していることから、マーケットは次第に沈静化してくると想定しているが、それには少し時間が必要なようだ。

こうした背景から3月中旬はドル全面高の様相を呈しているが、その中で反発の兆しをみせている通貨ペアがある。

その通貨ペアは豪ドル/米ドル!

3)豪ドル/米ドルの反撃

FRBがCP市場への流動性供給策を導入するもドル需要の逼迫はなかなか解消せず。

加えて、3月19日にRBAは、3月3日に引き続き、今月2回目の利下げを敢行。今回は0.25%の利下げを決定するとともに、RBA初のQE(量的緩和)も開始している。

これは豪ドル/米ドルにとって、米ドル側、そして豪ドル側の両面から下落を誘引する材料となる。つまりドル需要の高まりによる米ドル買いと、RBAの緩和による豪ドル売りで豪ドル/米ドルは強く売られることになる。

このためマーケットでは、3月19日の豪ドル/米ドルは一時、0.5510の安値まで急落。

ただその後の豪ドル/米ドルは一転して0.5970まで急反発している。

この反発の要因だが、まず3月19日のRBA の利下げとQE(量的緩和)は織り込み済みであったこと。

加えて、RBAのロウ総裁が介入について言及したことがきっかけとなっている。

RBAの介入は、金額的にはパワフルなものを連想させないのだが、暴落していた豪ドルマーケットにとってカウンターとなり、十分な効果があった模様。

ただ豪ドル/米ドルの買い戻しの、もっとも重要な要因となったのは、そのレベル。

年初から下落を続けていた豪ドル/米ドルに対し、多くのマーケット参加者が注目していたレベルがある。

それが豪ドル/米ドルの0.5500。

添付したのは豪ドル/米ドルの月足。

(チャート:筆者作成)

過去10年間の豪ドル/米ドルの高値は、1.1081(07/27/2011).

その50%は0.5541。

つまり、豪ドル/米ドルは過去10年間で価値が半分になるのが0.5541ということになる。

当然、マーケット参加者の多くはこのレベルを意識しており、3月19日にRBAが0.25%の利下げを決めた時、彼らがBuy the facts(噂で売って、事実で買い戻す)で豪ドル/米ドルを買い戻すのは、相場の教科書どおりだが、豪ドル/米ドルがほぼ半値のレベルまで価値が下がっていたことが、単なるBuy the factsだけでなく、彼らの買い戻しが急激になった要因。

振り返ってみれば、年初からの豪ドル/米ドルの売り材料のひとつであったオーストラリアの大規模な森林火災も公式に鎮火が宣言されている。

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森林火災鎮火を公式宣言、240日余の災難 豪州NSW州

CNN) オーストラリア東部ニューサウスウェールズ(NSW)州の消防当局は7日までに、同州で240日間以上続いていた森林火災の鎮火を公式に宣言した。

昨年7月初旬から始まった火災では少なくとも住民ら28人が死亡し、民家約3000棟が全焼などしていた。野生動物の被害も甚大で最大10億匹が影響を受けたとされる。

出所CNN

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これは豪ドル/米ドルにとって買い材料。

豪ドル/米ドルにとっての売り材料をマーケットがすでに織り込んでしまっていること、加えて、過去10年で価値が半分に落ち込んだことから、豪ドル/米ドルは反発余地が拡大しているといえる。

前述のようにドル需給は依然として逼迫していることで、ユーロドルやポンドドルには下落圧力がかかりやすく上値が依然重いことから豪ドル/米ドルもなかなか大きくは反発しないが、多くの売り材料を織り込んだ豪ドル/米ドルは早晩大きな反発が期待できるのではないか?

過去10年で半値になった豪ドル/米ドルは悪材料出尽くしでボトムアウト。

反転の可能性が高まっている豪ドル/米ドルの行方に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2020年3月25日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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