スペシャル・トレンドレポート

避難通貨ではなくなった円は risk offで円安に、ドル円は115円へ ~日本のGDP年率マイナス6.3%の衝撃!~(西原 宏一氏)

2020年2月26日

1)GDP年率マイナス6.3% の衝撃!日本はリセッションへ?

今月発表された日本の経済指標に多くのマーケット関係者は驚かされた。

それは2月17日に発表された日本のGDP。

2019年第4四半期のGDP速報値は驚きの数字となった。

まず、前期比-1.6%(予想は-1.00%)、年率換算はなんと-6.3%(予想は-3.9%)と消費増税による悪化を含んだ予想をも遥かに超える大幅なマイナスとなった。

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GDP10~12月期 年率マイナス6.3% 5期ぶりのマイナスに

去年10月から12月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べてマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。消費税率の引き上げなどで個人消費が落ち込んで、5期ぶりにマイナスに転じ、マイナスの幅は、前回の増税直後以来となる、5年半ぶりの大きさとなりました。

内閣府が発表した去年10月から12月までのGDPは、物価の変動を除いた実質の伸び率が、前の3か月と比べてマイナス1.6%でした。

NHK web

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このGDPの急減速の背景だが、台風や暖冬の影響、そしてなんといっても消費税増税の影響が上げられる。

2014年、5%だった消費税が8%に引き上げられた局面で 個人消費が急激に落ち込み、景気を冷え込ませたことは記憶に新しいところ。

2019年10月の10%への増税時も同じように個人消費の冷え込みが懸念されていたのだが、その悪影響についてあまり報道されなかった。

消費増税の悪影響があまり話題になっていなかった要因は、消費税増税の開始とともに日本株が急騰したからである。

個人消費が冷え込む局面で、マーケットではGPIFを筆頭に本邦機関投資家が積極的に日本株の買いを持ち込み、日本株は急騰。

メディアでは株が急騰している報道ばかりが目立ち、個人消費の落ち込みについての報道はほとんどみられなかった。

しかし、2月17日に発表となったGDPの急速な悪化が、昨年の消費増税も日本経済を減速させていることが明らかになった。

この発表を受け、マーケットでは、risk offとなり、従来通り「株安・円高」に傾斜すると思われた。

しかし、今回はそうした動きにはなっていない。

日本株こそ下落に転じたが、為替市場では急速に円安の流れとなり、米ドル/円は110.00円の節目を突破。一時112.23円まで急騰するという相場へ。

つまり悪材料をきっかけに、いつもの「株安・円高」とならず、「株安・円安」という動きとなり、マーケットでは「日本売り」の展開に注目が集まっている。

2)新型コロナウイルス感染拡大も日本売り材料となり、日銀の緩和期待でドル円は115円へ

ここでこれまで「risk off=株安・円高」がなぜおこっていたのかを確認してみよう。

リーマンショック以前の金融市場では、ゼロ金利というのは主要国で円とスイスフランのみだった。

このためゼロ金利の円やスイスフランで安く資金を調達し、それ以外の高金利の通貨市場で投資をすると、それだけでも「金利差」という利ザヤが稼げる。いわゆる「キャリートレード」と呼ばれるものである。

しかし、リーマンショック以降、円やスイスフラン以外の主要通貨も軒並み低金利となり、risk on

つまり株価上昇や景気拡大場面でも、円やスイスフラン以外の通貨でファンディングができるようになった。つまり、主要国金利の低下により、円キャリートレードが典型的なRisk onトレードではなくなったのである。

こうなると、risk off時に円キャリートレードの巻き戻しである「株安・円高」という展開が起こらない環境になったわけである。

そのため、最近のマーケットはrisk off時に、米系を中心とした短期勢が投機的に円買いをしかけるものの、その後急速に円が売り返されることも多くなっていた。

そうした米系を中心とした短期勢の行動にも変化を起こさせるきっかけが2月中旬に起きた。

それは「新型コロナウイルス」の感染拡大による日本への渡航警戒。

CDC(米疾病対策センター)は、新型ウイルスの感染が拡大しているとして、日本への渡航者に注意を呼びかける。

当初は、レベル1の「通常の注意」であったわけだが、2月22日、米国務省が日本渡航警戒を4段階のレベル2へ引き上げたことで事態は深刻に。

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米、日本渡航警戒引き上げ

米国務省は22日、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大を受け、日本全土への渡航警戒レベルを4段階中で下から2番目の「注意を強化」に1段階引き上げた。感染するとより重症化しやすいとされる高齢者や持病のある人に対し、不要不急の日本への旅行は延期を検討すべきだとした。

これまではレベル1の「通常の注意」だったが、「経路不明な感染が広がっている」ことを警戒強化の理由に挙げた。他国が追随する可能性があり、日本経済への影響が懸念される。国務省は同日、感染者が急増する韓国も日本と同様にレベル2とした。

出所共同

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こうした米政府の対応に米系の短期筋の行動に変化が起きた。

これまではrisk off時に、安全資産として、「米ドル、スイスフラン、そして円」が買われていた。しかし、新型コロナウイルスの日本での感染者拡大報道により、安全資産である避難通貨(haven currency)から円が脱落。

結果、株安に呼応して、「ドル高、円安」という新たな流れが起きだした。

ファンドに勤める友人によれば米系ファンドは今回の「ウイルス報道による景気の悪化」に対応して「日銀が追加緩和を実施するだろう」との期待による円売りも、円が売られる要因となっているようだ。(個人的には、現段階で初期のアベノミクス時のような大規模な緩和の手段が思いつかず、実現性は低いと考えている。)

ともあれ、衝撃のGDPの数字に「新型コロナウイルスショック」」も加わり、「日本株売り、円売り」という新しい流れとなり、米ドル/円は久しぶりに一時112円を回復。

問題はこの流れが続くかどうかだ。

ここで 米ドル/円のチャートをチェックしてみた。

添付図は米ドル/円の月足。

シンプルだが、2015年のアベノミクスの高値125.86円から引くレジスタンスライン(=110.14円)2月19日に上方向へブレイクした形になっている。

(YJFX MT4より筆者作成)
次のチャートは米ドル/円の四半期足。

(Bloombergより筆者作成)

四半期足なので、1年に4本しか表示されず、かなり長い時間が示されている。

このチャートを見ると、1990年の160.20円からのレジスタンスが115円台前半に位置しており、米ドル/円はまずそのレベルまで上値を拡大するのではないかと想定している。

衝撃のGDPの数字に「新型コロナウイルスショック」も加わり、「日本株売り、円売り」という新しい流れの中、米ドル/円は115円台へと上値余地が拡大しており、動き出した米ドル/円の行方に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2020年2月26日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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