スペシャル・トレンドレポート

2020年はドル安へ、保守党が歴史的圧勝でBrexit確定〜ポンドドルは1.4000へ~(西原 宏一氏)

2019年12月18日

2019年は米ドル円を中心に為替相場のvolatilityが上がらない中、唯一その動向に注目が集まっていたのがポンド。
ポンドが注目を集めていたのは3年間混迷を深めていたBrexit問題。

その混迷が12月12日に行われた英総選挙で終止符がうたれた。

1)majorityは86!ボリス・ジョンソン率いる保守党が歴史的圧勝

総選挙直前の12月11日の日本時間7時にYouGovの*MRP方式の最新分析結果が発表された。
(*MRP方式=「Multilevel Regression and Post-stratification」の略。標準的な世論調査よりも詳細な予測を提供することを目的に最近開発された手法。)

YouGovの発表では、下院650議席のうち保守党の議席が339で、過半数326を越えた。

下院の議員定数は650なので過半数は326だが、議会では、事実上は採決に参加しない役職にある議員もいるので、実質的な過半数である320と言われる。今回のYouGovの分析結果339は、19議席上回っており、この点からも保守党優位。

しかし*majorityは大幅に下落し28へ。
(*majority=与野党の議席差。差が大きいほど政権与党に有利。今回は保守党-残る議席、つまり (保守党の予想獲得議席数=339)-(残りの議席=311)=28となり、与野党議席差=マジョリティ=28となる。なお、英議会のmajorityには、もうひとつworking majorityという考え方がある。これは前述のように当選しても当院しないシン・フェイン、慣例により投票しない議長、副議長などを除くと、実質的な投票議席数は640を下回るので、通常320議席あれば、working majorityを確保できる、ということである。)

この総選挙直前の世論調査によるmajorityの低下により、イギリスの世論調査の結果の悪夢をマーケット関係者は想起した。
それは2016年のEU離脱を問うた国民投票。
2016年の英国世論調査では「EU離脱」という分析結果はほとんどなかったが、結果は「Brexit」。
マーケット関係者も英国世論調査は、あまり当てにならないことが多いことが再認識させられ、一時1.3215まで急騰していたポンドドルは、1.3052まで急落。
このため、これまでの保守党優勢の調査結果を信じて、ポンドドルのlongを構築していた多くのマーケット参加者は、一部optionでヘッジするなどし、警戒感を残して、英国の総選挙へ。

2)ボリス・ジョンソン圧勝で、ポンドドルは1.4000への上昇過程に

英BBC放送の出口調査に基づく予測では、保守党が過半数の議席を獲得する見通しが伝えられた。
注目はそのmajority.
Majorityが30、できれば40あればという議論も活発に行われていたが、出口調査で発表されたmajorityはなんと86で、保守党の圧勝を示している。
これでボリス・ジョンソンの圧倒的勝利を確信したマーケットは一時1.3515までポンドドルを買い進んだ。

ここでポンドドルの週足をチェックしてみる。

チャート=筆者作成

ポンドドルは、200 週移動平均が1.3104に位置していること。
2014年7月15日の高値である1.7192からのレジスタントライン(上値抵抗線)が1.3164に位置しており、1.31ミドルが明確にブレイクできるかどうかが重要だったが、英国総選挙の結果を受けて、週足ベースでこのレジスタンスを抜いてきた。

週足200SMA(200週単純移動平均線)=1.3104を上抜け、また上手抵抗線(レジスタントライン)=1.3164も上抜けてきたことで、ポンドドルの上値余地が拡大。

そこで、今後のポンドドルの上値を考えると、2014年7月14日高値=1.7192と、フラッシュクラッシュのあった2019年9月3日安値=1.1959の38.2%戻しが1.3885となる。

これはポンドドル月足のフィボナッチ・リトレースメント38.2%なので、1.3800~1.4000ぐらいが上値の目途となっている。

先月のレポートで解説したが、GBPUSDの1.4000は、米国大手金融Morgan Stanleyが2020年のポンドドルのターゲットとしている値と合致している。

以上のことから、これまで英国総選挙に向けてのメインシナリオは 保守党が単独で過半数を獲得すること、そしてできればmajorityが 30以上あればというシナリオだったので、ポンドドルの上値余地はさらに拡大し、1.4000への動きが注目される。

3)2020年はFRBの隠れQEの影響でドル安へ

2019年から2020年にかけての大きな注目はBrexit動向とポンドの動きだが、これは前述の通りなので、ここからは2020年に向けて他通貨動向も確認していこう。

昨年2018年11月頃から2019年は総じてドル安を予想する参加者が増えていた。マーケットのコンセンサスとは裏腹に、2019年のFRBは利上げを行わず、逆に利下げに転じるのではないかという見方が増えてきたためだ。

実際、今年のFRBは3回の利下げを決行。
しかし、ドルは大きく下げなかった。
ECB(欧州中銀)やRBA(オーストラリア準備銀行)、 RBNZ(ニュージーランド準備銀行)といった他の中央銀行が、FRB同様に金緩和策を継続したためだ。

ところがFRBは2019年10月15日から米国債の購入を再開した。
具体的にはFRBは毎月600億ドルの短期国債の購入を開始し、これを少なくとも2020年の第2四半期まで継続すると発表。

パウエルFRB議長は、「今回の措置はQE4ではない」とコメントし、今回の措置を準備金管理(Reserve Management)と言っている。

しかし、短期国債をFRBが購入して資金を出すということは、リーマンショック以後に実施していた量的緩和(QE)と事実上同じことである。パウエル議長はQEではない、とは言っているが、FRBのオペレーション自体は量的緩和を再開したということに変わりはないため、市場では「隠れQE」と言われ始め、事実、10月中旬からじわじわと米ドルは軟化している。

添付図はドルインデックスの日足。

チャート:筆者作成

ドルインデックスは10月中旬の隠れQEの実施以降、じわじわと値を下げている。つまり、ドルが売られているわけである。

ただ、米ドル円だけは、隠れQEの影響による株高により、幾分値を上げているが、前述のようにポンドドルを筆頭に、キウイドル、豪ドル米ドル、そしてユーロドルに対してドルは軟化。
この隠れQEは2020年の第2四半期までドルを押し下げる材料になるのではないか?と想定している。

これらから、2020年はFRBの隠れQEの影響により、総じて、ドル安へ、そして注目の通貨ペアは来年1月末までにBrexitが現実的になり、1.4000に向けて続伸するポンドドルの動向に注目。

2019年は大方の予想とは裏腹に為替相場はvolatilityの極端に低い相場だった。
しかし、ずっと動かない相場は無く、どこかで動き出す。
来年は米大統領選も控え、大相場を期待しつつ、準備を怠らないようにしたい。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年12月18日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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