スペシャル・トレンドレポート

総選挙でボリスは本当に勝てるのか?(松崎 美子氏)

2019年12月4日

最近のポンド相場は、総選挙に向けた世論調査結果により、乱高下が続いている。11月25日月曜日の朝、ポンドは窓を開け上昇でスタート。これは、その週末に発表された世論調査で、保守党が大きく労働党を引き離し優位に立ったことを好感した動きであった。

週の中盤、今度はMRPという方式を使って、より精密度の高い世論調査結果が発表。保守党は悠々過半数を達成できるという結論となり、ポンドはさらに上昇。

しかし、12月2日の月曜日、今度は窓開け下落でスタート。これまた、週末に発表された世論調査で保守党と労働党との差が縮小したことを嫌気した動きとなった。

総選挙まであと8日。今後も世論調査結果や選挙関連のヘッドラインで、ポンドの乱高下が予想される為、資金管理に気をつけて乗り切って行きたい。

MRP方式の世論調査結果

11月27日英国時間22時に、調査大手:YouGov社が、英タイムズ紙にMRP調査結果を発表した。

MRPとは?

MRPとは、「The multilevel regression and post-stratification」 の頭文字をとったもので、日本語では「層別解析」と訳されている。

ブルーンバーグでは、「It’s a recently developed technique that aims to give a more detailed prediction than a standard opinion poll. 通常の世論調査と比較して、より緻密な予想を可能にするために開発されたテクニック」 と説明されている。

通常の世論調査では、調査対象人数はせいぜい1000人程度。それに対し、MRPは5万人を対象とし、ほぼ全ての選挙区からサンプルを取り、全体的なイメージをつかむ。そのため、普通の調査では漏れてしまう意見や投票傾向が、反映されるということだろう。

MRP が注目される理由

この調査結果がここまで注目されるのには、理由がある。2017年の総選挙では、事前に発表されたほとんどの世論調査では、保守党が過半数を大きく上回ると言う予想が続いた。

しかし、MRP 調査だけは、保守党は過半数が取れず、ハングパーラメントとなるという正確な予想を出した。そのため、今回もこの結果への注目度は桁外れに大きい。

MRP調査結果

早速、上位4党の2017年選挙結果と、今回のMRPとの比較を表にまとめてみた。総選挙でこの通りの議席数となれば、保守党は法案可決に必要な安定多数「ワーキング・マジョリティ」68議席となり、政策運営がかなりやりやすくなるだろう。

ちなみにほとんどの選挙区での党別得票率も、こちらのリンクからチェック可能。
https://gallery.mailchimp.com/a706d4e03dc82629db3f7acf9/files/ae6c2fb1-48aa-4c6f-8a3d-b5f8fd958956/Best_for_Britain_Recommendation_Seats.pdf

YouGovの意見

同社は、「くれぐれも、この結果が、魔法のように将来を言い当てるものではない事は、理解してほしい。」と前置きし、この分析結果を出すのには相当な時間がかかるため、最新動向が、きちんと反映されていないリスクを指摘している。

11月26日 投票者登録終了

MRP調査結果発表の2日前に、総選挙投票登録が締切られた。

総選挙発表以来、280万人の新規登録が済まされ、前回2017年総選挙と比較すると、同時期で100万人の登録者増だとも発表された。そして、新規登録者の3分の2が、35歳以下とも伝えられている。

2017年の総選挙では、新規登録者の多くが、労働党に票を入れたと言う結果が出ている。果たして今回も、同様の効果が期待されるのか?実に興味深い。

最新の世論調査結果の比較

毎週末、世論調査結果が一斉に発表される。そこで、11月23/24日と、11月30日/12月1日、この2つの週末に発表された結果をチェックしてみよう。わかりやすく各社別に週末ごとの結果を並べてみた。


出典:複数の報道

これを見ると一目瞭然であるが、保守党の支持率は横ばいの中、労働党が攻めてきた。

どうしてこのような動きが起きたのか?私も必死で考えたが、このタイミングでこのような結果になるのが、正直不思議である。

この週に起きたことと言えば、ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)の反イスラム発言をめぐる動きくらいしか思い浮かばない。同氏は、自身のコラム記事を載せているテレグラフ紙で、イスラム教徒の女性や、シングル・マザーに対し、差別的発言を何度か繰り返している。それに対し、イスラム教徒の有権者グループが、謝罪を要求したが、ボリスは何も行動に移していない。

しかし、この手の問題を抱えているのは、ボリスだけでない。逆に、労働党コービン党首は、ボリスよりも根深い反ユダヤ問題を引きずっている。この影響で、過去数年間に実施された地方選挙では、ユダヤ人が多く住む選挙区での労働党議員は、全敗状態だ。

いろいろ考えた結果、もしかしたら先週のバルニエ主席交渉官の発言かもしれない。ボリスは今回の選挙キャンペーンではずっと、「2020年12月31日の移行期間終了までに、EUとの貿易交渉を終了できる。」と語っている。これに対し、先週のタイムズ紙とFT 紙で、欧州委員会のバルニエ主席交渉官は、「2020年末までに貿易交渉を終了すると言うマニフェストは、時間的にあまりにも短すぎると言う印象を持った。」「2020年12月末までと言うタイムスケジュールは、あまりにも短すぎると思う。しかし、EUは前向きに努力するつもりだ。」と語っている。事実、他の議員たちの間でも、来年末までの合意は、かなり難しいという意見が出ている。

ここからのポンド

投票日まで10日を切った今、大きくポジションを傾けにくい。ましてや、年末目前ということもあり、新規ポジションを作るには、ある程度の覚悟が必要となるだろう。

個人的には、12月12日投票が締め切られてすぐに発表される出口調査結果を見て、ポンドは大きく動くと予想している。

MRP結果のように、保守党単独政権誕生となれば、ポンドは1.30を超えて上昇すると考えている。逆に、ハングパーラメントなれば、初動では150ポイントくらいの下落は覚悟しておきたい。その後、もう一段安があるかもしれないが、どの政権が誕生し、誰が首相になるのかにより、反応は変わる。

問題は、その後ではないか?合意なき離脱のリスクはかなり後退したが、英国経済などのマクロに目を向けると、楽観できる状態ではないことは明白である。移行期間に行われるEUとの貿易交渉も、一筋縄では行かない気がしてならない。

最後に英中銀が毎日発表しているポンド実効レートを調べてみよう。そろそろ上に抜けるのか?と思いながら見ていたが、まだ黒い点線のレジスタンスに抑えられている。やはり本格的に動き出すには、ピンクの81.20台を超えてからではないか?その意味でも、あれこれやらず、総選挙出口調査結果を待ちたい。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
ロンドン在住の元為替ディーラー。東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年12月4日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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