スペシャル・トレンドレポート

12月12日前倒し総選挙に向けて(松崎 美子氏)

2019年11月6日

ポンドが、政治要因で動いている。今までずっと「Brexitネタ」が主役であったが、先週から「12月12日前倒し選挙」に主役が交代した。

総選挙が決定した時、2017年6月にメイ前首相が打って出た「前倒し総選挙」を、私は思い出していた。あの選挙の時と同じような結果にならないと良いが、私の中では、「デジャヴ選挙」であることに変わりない。

各党支持率と議席予想

この週末に発表された最新の世論調査結果と、そこから試算される予想議席数をまとめてみよう。


出典:複数の報道

労働党の支持率は25%前後であり、2017年の総選挙時とほぼ変わらない。それと比較すると、保守党の支持率は、36〜42%と非常に高く見えるが、2017年総選挙時のメイ前首相率いる保守党の支持率は、44%程度であった。それにも関わらず、議席数は過半数(326)割れの317と、悪夢のような結果。

今回の選挙は、2017年の時以上に、残留 / 離脱支持の色分けが強い上に、クリスマス直前で日照時間が7時間ちょっとでの投票と言うハンディキャップを背負っているだけに、支持率だけを信じてポンド取引をすることは、危険だと私は考える。

「残留 vs 離脱」の選挙

週末の世論調査結果によると、4割を超える有権者が、今回の総選挙を「Brexit選挙」という認識で捉えていることがわかった。ちなみに政党別の離脱/残留傾向は、離脱が保守党とBrexit党。残留が、労働党・自民党・スコットランドSNP党(以下、SNP党)・緑の党となっている。

保守党

10月31日に合意なき離脱ができなかったこともあり、「合意なき」という離脱形式からは距離を置き、「10月のEUサミットで合意したEU離脱協定案で、スムーズな離脱を目指す」ことを公約に揚げている。

→→→見所: 野垂れ死してでも10月31日に離脱すると約束したボリスに対し、有権者はペナルティーを課すか?

Brexit党

同党のファラージュ党首は今までずっと、ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)に一緒に政策運営をして、すっぱりとEUから離脱しようと、ラブコールを送っていた。しかし、ボリスはその声に一切、耳を傾けなかった。

ボリスにフラれたBrexit党は、「ボリスが実現できなかった合意なき離脱を、実現しよう!」という公約を揚げている。

この党のプレゼンスは、英国がEUに残留していて初めて輝く。そのため、ファラージュ党首は今回の選挙を最後のチャンスと捉え、国政選挙に自ら立候補し、保守党に殴り込みをかけるのだとばかり、私は思っていた。しかし、この週末、同党首は応援団長としてBrexit党の候補者を支え、自身は立候補を見送ると発表。

→→→見所: ファラージュ氏は、欧州議会の議員であるが、一度も英国議会の議員として当選したことがない。私の記憶が正しければ、7回立候補し、7回全て落選していたはずである。その意味では、英国議会の議員でない党首が、どこまで国政に口を挟めるのか?有権者はその点、どう思っているのか?非常に興味がある。

労働党

選挙に向けて、党内の意見調整に最も手こずっているのが、労働党である。10月29日に実施された総選挙実施の議会採決でも、多くの労働党議員は棄権を選んだ。その理由は、総選挙をやることは構わないが、12月に実施することが気に入らないからだ。

選挙公約としては、「議会で何度採決しても、離脱について決められなかった。離脱することを決めたのは、国民。それなら、最後も国民の真意を聞いて、決定することが最良であろう。よって、2度目の国民投票を実施する」という内容となりそうだ。

→→→見所: 「残留」と決定的な決め打ちをせず、「2度目の国民投票」という選択をした労働党。国民投票を実施するには、法律的に、最低22週間(約半年)という時間がかかる。ということは、またしても交渉期間延長が必要になるということだ。果たして、有権者は更なる交渉期間延長を望んでいるのか?

自民党

自民党は、「EU基本条約50条の破棄」を選挙公約に掲げる。50条の破棄とは、Brexitをなかったことにする、つまりこのまま残留するという意味である。

個人的には、2016年6月の国民投票で、僅差とは言え、離脱となったことを考えれば、「残留」を選ぶことには、非常に抵抗を感じている。

もう一点。選挙公約からは若干話題が離れるが、自民党は今までずっと、SNP党や緑の党、ウェールズのプライドカムリ党との間で、残留支持候補を一人に絞り、統一候補を選出すると語っていた。しかし先週スウィンソン党首がいきなり、「SNP党とは組まない!」 と発表。何があったのかわからないが、緑の党とプライドカムリ党とは、引き続き統一候補を立てて戦うようだ。

→→→見所: 今年7月に党首に就任したスウィンソン氏。若干39歳のスコットランド出身の女性党首である。

私は今まで、彼女のインタビューをいくつか見てきたが、あまりスピーチが上手でなく、今ひとつ説得力に欠ける印象を強く持っている。

今回の総選挙に向けて、TV討論会の話しが出ているが、それらすべてが「保守党ボリスと労働党コービン党首の一騎打ち」の話ばかりで、どの局も「保守/労働/自民党の三者対決」を予定していない。スウィンソン党首本人は、何をどうしても討論会に参加したい希望を述べているが、仮に彼女が加わったら、ボリスとコービン党首にボコボコにやられて終わりのイメージが強い。

スコットランドSNP党

スコットランドも、自民党同様、EU残留を希望している。そして、この党は今回の選挙で、「年内にスコットランド独立の是非を問う住民投票実施」を、公約に盛り込んだ。

問題は、スコットランドでの住民投票実施は、中央政府の承認が必要となる点だ。これについてボリスは、「2014年にスコットランドは、独立についての住民投票を実施した。あの時、住民投票は今後一切やらないという約束だったので、中央政府も承認した。しかし、今度またやりたいというのは、ルール違反であり、中央政府としても許可は出来ない。」と返事をしている。

→→→見所: 総選挙の結果次第と言えるが、もし善戦した場合、いくら中央政府がNOと言っても、スコットランド住民投票実施気運が高まることは、間違いないだろう。その場合は、英国連合王国の崩壊シナリオとならざるを得なく、ポンドにとってはネガティブ。

ボリスの敵は、ファラージュBrexit党首

これはあくまでも私個人の考えであるが、今回の選挙は2大政党同士の「ボリス vs コービン」の戦いと言うより、離脱支持政党同士の「ポリス vs Brexit党ファラージュ」となる気がして、たまらない。

特に、有権者が、「野垂れ死してでも、10月31日に約束通り、離脱する」と約束したボリスに対し、どのような考えを持っているのか?欧州議会議員であるファラージュ党首が、国政に口出しすることについて、どう考えているのか?そこが非常に気になっている。

選挙専門家の意見を調べてみたが、ファラージュ党首の頑張りで、保守党支持者の5〜6%の票がBrexit党に流れただけで、ボリスにとってはかなりの打撃となるそうだ。

今回の選挙で、Brexit党は600人の候補者を立てると発表。まだ具体的な選挙区には言及していないが、常識的に考えれば、保守党Brexit強硬派ERGグループの候補者がいる選挙区には、Brexit党は候補者を立てないことが予想される。たぶん、2017年の総選挙で、第1党の保守党と、2党の労働党それぞれの候補者の獲得票数の差が少ない重要選挙区を、Brexit党は重点的に選び、候補者を立てることが予想される。

トランプ大統領の介入

私はロンドンにいる時は、常にLBCラジオを聴いている。このラジオ局にBrexit党のファラージュ党首が、自身の番組を持っている。

11月1日のこの番組で、ファラージュさんが「自分の友達」のトランプ大統領とのインタビューを突然流し始めた。
https://mobile.twitter.com/Nigel_Farage/status/1189949832821137408

トランプ大統領はインタビューで、「労働党政権になれば、英国は終わり」「ボリスとファラージュさんが組めば、英国にとって最高!」など言いたい放題。

海外の国政にまで口を挟む余裕があるのなら、自国の問題解決に充てて欲しいと感じたのは、私だけではないだろう。このインタビューについては、ボリスは個人的な見解を述べていない。

ここからのポンド

10月31日も過ぎ、合意なき離脱という最大のリスクがひとまず後退したため、ポンドの動きが穏やかになってきた。

このタイミングに合わせ、大手銀行のストラテジスト達も、10月のような一本調子でのポンド上昇は、一旦終了という共通した見解を示している。

一部の銀行は、英国の解散総選挙に向けた不透明感を考慮して、ポンド・ロングをこのまま保有することに疑問を投げている。しかし、だからと言って、ポンド急落を予想している訳でもなく、しばらくはレンジ相場が続くという考えのようだ。

11月6日に議会が解散すれば、今までのようなヘッドラインで右往左往する動きからは、短期間は解放されるだろう。しかし、個人的に気をつけようと思っているのは、毎週発表される世論調査結果や、選挙キャンペーン中の要人発言などのヘッドラインである。

特に11月末くらいからの世論調査結果には特に気をつけたいし、たぶんその頃から、ポンド相場にボラティリティーが戻ってくることを予想している。

まだ先の話しだが、12月12日総選挙が、①保守党単独過半数政権 ②労働党少数派政権 ③ハングパーラメント、それぞれのシナリオにより、ポンドの動きが大きく変わる。

当然であるが、①となれば、条件付き離脱への期待感が高まり、ポンドには最もポジティブ。②の場合が最も厄介で、2度目の国民投票実施による残留シナリオ浮上は、ポンドにとってポジティブであろう。だが、コービン氏が首相となることについては、マーケットは批判的であると理解している。そのため、手放しでポンド買いになるとは思っていない。最もネガティブなのが③。先行き不透明感をマーケットは一番嫌うので、ポンドは苦戦を強いられることは間違いないと考える。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
ロンドン在住の元為替ディーラー。東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年11月6日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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