スペシャル・トレンドレポート

日米欧金融政策決定、米ドル/円は下落再開

2019年9月25日

1)日米欧の金融スタンス

今月(9月)は12日から19日にかけて、ECB、FRB,そして日銀と主要中央銀行による金融政策決定会合が開催された。
9月12日のECB理事会は、マイナス金利を深掘り、QEを再開。
9月18日のFRBもFOMCで0.25%の利下げと緩和へ。
しかし9月19日に金融政策を決定した日銀は、動かず。
3大中央銀行の政策スタンスの違いがハッキリしてきた。

まず12日のECB。
中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.5%とし、11月1日から月額200億ユーロの債券購入を再開すると発表。加えて、2019年と2020年の経済成長予測を下方修正し、2021年までのインフレ見通しを引き下げた。

10月末に任期を迎えるドラギ総裁はこれまでもインフレ率が加速しなければ再び金融緩和の必要が生じる旨の発言をしており、今回も「リスクは依然として下方向にある」と指摘。

ECBの債券購入額はコンセンサスの300億ユーロまで、とどかなかったが、マーケットにとっては基本満額回答。
またECBは今回の緩和の決定を極めて火力があるかのようにみせるため、QEの期間をオープンエンドにするなどかなり腐心した事が伝わる内容となっている。
結果、今回のECBの金融政策に関しては「現段階で、ECBが出来ることは全てやった」ということになり、今後、当面の間は何も出てこないということになる。

ECBの金融政策に対するマーケットの反応は、ゴールドマンサックスを筆頭に、多くの米系参加者が想定していたとおりの結果。このため発表後はbuy the facts(=事実買い)でユーロは買い戻し優勢の展開。9月安値1.09256に近付いたものの、一気に買い戻されている。

(YJFX! MT4より筆者作成)

ECBに続き日本時間9月19日未明に発表されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.75-2.00%に設定、従来から0.25ポイント引き下げ。
利下げは2会合連続となり、前回FOMCからFRBは利下げ段階に入っていることが明確になった。
ただ、今回の利下げはコンセンサスどおりで、注目点は今後も緩和が継続されるかどうか、その必要性を巡っては当局者の間で意見が割れているようだ。

今回の会合では前回に続き、カンザスシティー連銀のジョージ総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁が金利据え置きを主張。一方、セントルイス連銀のブラード総裁は0.5ポイントの利下げを主張。結果、ややタカ派なトーンで米ドル/円は一時108.47円まで上昇。

ただ米金利先物市場では年末から来年にかけて、FEDが追加利下げを決定するという予測が大勢であるため、米ドル/円は反落。

そして最後は19日の日銀金融政策決定会合だが、日銀は動かず、金融緩和策の現状維持を決定したのみ。

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日銀は19日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和政策の現状維持を決めた。長期金利の誘導目標を「0%程度」、短期政策金利をマイナス0.1%に据え置く。公表文では、2%の物価安定目標の達成に向けたモメンタム(勢い)が損なわれるおそれに「より注意が必要な情勢になりつつある」との文言を加え、物価の停滞に警戒を強めた。

経済情勢については米中の貿易摩擦を念頭に「海外経済の減速の動きが続き、その下振れリスクが高まりつつある」と指摘した。日銀が「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する次回10月末の決定会合で「経済・物価動向を改めて点検していく」とした。

今回の会合を巡っては、直前の18日に米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて政策金利を0.25%引き下げた。欧州中央銀行(ECB)も12日に小幅な利下げと量的緩和の再開を決めており、日銀がどう対応するかが焦点になっていた。
出所 日経新聞
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日銀は次回会合で追加緩和期待を示唆するようなコメントをしているが、ファンダメンタルズが変わらなければ何もしない可能性も高く、緩和スタンスとなってきたECB、そしてFRBと比較すると、BOJはどうしてもタカ派の印象を与えてしまう。
これは円高要因。

この結果をうけての米ドル/円の反応は12日のユーロドルと同様。
12日のECBは満額回答で、極めて大規模な緩和策を打ち出したのだが、前述のゴールドマンサックスを筆頭に多くの参加者が緩和を織り込んでいたため、ユーロドルは一時1.0927まで急落するも、その後1.1100レベルまで反発し、ドル安の動き。

19日の米ドル/円も、日銀はわずかながら緩和の期待もあったこととFOMCの結果を受け、前日には一時108.47円まで上昇するも、マーケットは据え置きを確認してドル安に傾き、あっさり108.00割れに反落するという流れ。

結果、主要3大中央銀行の政策金利の発表前後に一時的にドル高に振れるものの、その後はドル安に傾いている。

総じて見れば、ECBは今回の会合で大規模緩和を決定したため、今後は大きな緩和が出てこないという見通しが増える反面、FOMCは来年にかけて追加緩和の余地があるため、ユーロは下げにくく、ドルは売られやすく、ユーロドルは底堅い展開。

一方、FRBの利下げ継続が予測される中、日銀は動かずという見方が大勢であるため、米ドル/円はドル安傾向。

つまり主要中央銀行の金融政策の方向の相違という点からは、米ドル/円の上値は重いということになる。

つぎに、このところ金融政策決定以上に、米ドル/円に大きな影響を与える米中貿易協議に視点を移してみよう。

2)米中貿易戦争の行方

今月(9月)は10日にトランプ大統領が国家安全保障担当補佐官であったボルトン氏を解任したという報道にマーケットが大きく揺れた。

マーケットでは、タカ派で対中強硬派のボルトン氏を解任したことから、トランプ大統領が大統領選挙を意識して、米中貿易戦争を冷却するため、米中協議で何らかの「部分合意」するのではとの観測が拡大した。
これでリスクオン期待が働き、円安要因となり、米ドル/円相場が108円ミドルまで反発した要因だったともいえる。

ところが、トランプ米大統領自身が「部分合意ではだめだ」と、こうした思惑を全否定。「大統領選前に中国と合意する必要はない」とも話している。

このトランプ大統領の発言で米中貿易協議の先行きは再び不透明感が高まり、米ドル/円の上値を抑えることになるのではないか?と想定している。つまり米中協議が引き続きマーケットのネガティブ要因として続く可能性がありそうだ。

3)米ドル/円テクニカル要因

ここで、今年の米ドル/円の動きを振り返ってみよう。
添付図は米ドル/円の週足。
今年の米ドル/円の高値は112.398円(4月24日)
安値は104.447円(8月26日)
この50%戻しが108.423円になる。

(YJFX MT4チャートより筆者作成)

9月18日の高値が108.475円になるので、今月の米ドル/円は、ちょうど半値まで調整したということになる。また、8月安値(104.447)は1月のフラッシュクラッシュの安値(104.837)も下抜けていて月足チャートでも安値更新している。

一方、こちらのレポートでも何度か解説したが、3年前のイギリスの国民投票の頃から米ドル/円はポンド円の動向に大きな影響を受けている。
今回もポンド円が126.67円の到達し反発するのに追随し、米ドル/円も反発を開始している。

そのポンド円だが、米ドル/円同様9月18日に135.66円に到達して反落している。
これも円高要因。

他の主要中央銀行が緩和に動く中、日銀は動かず。
米中貿易協議も「部分合意」の可能性をトランプ大統領が全否定したため、不透明感は払拭できず。

こうした主要中銀の金融政策の違い、米中協議の行方などの環境下、今年の半値で切り返し、再び下落を開始した米ドル/円の動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年9月25日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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