スペシャル・トレンドレポート

『加熱する米中貿易戦争、米株は調整局面入で、 円高は続く』~ドル円は依然100円への過程に~

2019年8月28日

1)「われわれに中国は必要ない」〜2020年の米大統領選挙を控え、米国による中国への関税攻撃が加熱、米株は調整局面へ

7月は米中貿易協議の進展は遅れがちだった。
こうした時間稼ぎは、米国にとって不利となり、中国に利する展開となる。

なぜなら、トランプ大統領は2020年に米大統領選挙を控えているためである。
よって、2020年は中国株のみならず、場合によっては米株の急落を誘引しがちな関税攻勢はとれない。

つまりトランプ大統領が中国に追加関税という大攻勢をかけるのは今年いっぱいではないか?との見方がトレーダーの間では浸透してきている。

逆にいえば、もし米中貿易協議の進展が遅れがちになるようなら、年内はトランプ大統領の中国に対する関税攻勢は加熱すると考えられる。

そして実際、7月は米中貿易協議で大きな進展はなく、個人的にもトランプ大統領はイライラしているのではないか?と憶測していた。

結果、8月1日、トランプ大統領は、いきなり、中国への「追加関税「第4弾」」を発動するとtwitterで発表。「9月1日から残りの3000億ドル(約32兆円)相当に10%の追加関税を課す」と表明。

習近平国家主席ののらりくらりした対応を批判し、税率を25%超まで段階的に引き上げるとコメント。

更に、8月5日、米国はついに中国を「為替操作国」に認定。

その後、追加関税第4弾の中で一部製品を9月1日から 12月15日にするという発表で、一時米株が戻す局面もあった。

この一部製品というのは、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオゲーム機、玩具といったもの。これは、新学期を控えた学用品の購入やクリスマスショッピングに配慮したことが伺える。

つまり、アメリカの都合で延期したものであり、米中の通商協議になんらかの発展があったわけではなく、米株の戻りは限定的。

そして再び米中の貿易戦争が加熱したのが、8月23日。

中国が報復としての追加関税を発表。
その内容は、米国への報復とする追加関税は9月1日と12月15日に2回発動し、9月1日は米産原油に10%課税し、12月15日には米自動車や自動車部品への25%課税を再開するというもの。

これに激怒したトランプ大統領が応戦。
日本時間24日未明、米国は「対中関税率、残り3000億ドルに対する10%関税を15%へ、9月1日から25%の関税を30%に引上げへ」と発表。

またこれに先立ち「偉大な米企業に対し、中国の代替先を即時に模索するよう命じる。事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」とし、「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」という強烈なコメントも残している。

トランプ大統領は23日の午後(NY時間)に何らかの発表を行うことを事前予告していたため、こうした米国側の発表を控えて、23日の米株は全面安となり、NYダウは2.37%急落。

2)NYダウはトップアウト、リスクオフ継続で、ドル円は100円への過程に。

米中貿易戦争が加熱する中、米株は調整局面入。

添付図はNYダウの週足。
NYダウは26,616ドル(2018年1月26日)の高値に到達し、反落。
その後、持ち直し前回の高値を超えて、26,951ドル(2018年10月3日)にまで到達し、急反落。

(チャート:筆者作成)

そしてFRB(米連邦準備理事会)の利上げ予測が中立へ、そして利下げ局面へと変わる局面において、もう一度前回の高値を超えて、27,398ドル(2019年7月16日)の高値まで到達し、急反落。

つまり2018年初頭からのNYダウは、ブルトラップを形成した後は全て、大きく値を下げている。

仮に6月の安値である24,680ドルを割り込むと、テクニカル分析でいうダイアモンドフォーメーションが完成し、下値余地が大きく拡大する可能性があるため要注意。

米株の急落によるリスクオフにより、米ドル円も大きく下落。
8月23日(金)のNY市場は105.00円割れ目前の105.39円でクローズしている。

サポートは今年1月3日につけたフラッシュ・クラッシュの時の安値である104.87円。

(チャート:筆者作成)

1月3日のフラッシュ・クラッシュ時につけた安値は、ユーロ円では118.71円(YJFX!=119.861)、ポンド円では131.70円(YJFX!=133.350)、キウイ円では69.14円(YJFX!=69.918)であり、クロス円においては既に次々と安値を更新している。

(YJFX MT4チャートより筆者作成)

米ドル円の105.00円レベルには本邦機関投資家の巨大なドル買い注文がサポートになっているとの噂もあり、本稿執筆時点(8月25日)では105.00円がサポートになっているが、米株が調整局面入しており、クロス円が米ドル以外の主要通貨に対して軒並み年初来安値を更新している環境下、米ドル円の105.00円が決壊するのも時間の問題だと想定している。

トランプ大統領が「われわれに中国は必要ない」とまで言い放ったこともあり、米中貿易戦争は加熱気味。

リスクオフ環境下、米株も調整局面入り。
先月に引き続き、円高相場は継続しており、100円への過程にある米ドル円相場に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年8月28日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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