スペシャル・トレンドレポート

欧州中銀金融政策理事会に向けて(松崎 美子氏)

2019年6月5日

今週木曜日に、欧州中銀(ECB)金融政策理事会とドラギ総裁の定例記者会見が実施される。今回は6月ということもあり、3ヶ月に一度のマクロ経済予想「スタッフ予想」が発表されるが、市場参加者はTLTRO3(Targeted Long Term Refinancing Operations、条件付き長期リファイナンス・オペレーション第3弾)条件が気になっていることだろう。

新主席エコノミスト:レーン氏

5月31日で前任のプラート氏が退任され、今回の理事会は元アイルランド中銀総裁であるレーン氏が主席エコノミストとしての最初の理事会となる。

政策金利とフォワードガイダンス

共に据え置き予想。特にフォワードガイダンスは、3月に突然 『「夏の間まで」を「2019年を通して(年末まで)」』に変更したこともあり、今回はこれ以上の変更はないだろう。

予想以上にハト派的な理事会となるか?

景気先行き不安・インフレ低下・イタリア財政/政治問題・対米貿易摩擦などが微妙に混ざり合い、今までにないほど緩和期待が高まっているように感じるのは、私がヨーロッパに住んでいるからであろうか?

さすがに、今週新たな利下げがあるとは考えていないが、スタッフ予想内容やドラギ総裁の記者会見でのトーンは、今までよりもハト派色が強く出てくることが考えられる。

その中でも個人的に特に気になる点は、以下の4点である。

① 3ヶ月に一度のマクロ経済「スタッフ予想」・GDP予想

2019Q1ユーロ圏GDPは、速報値・改定値ともに、前期比+0.4%。前年比は+1.2%。

前回3月に発表されたスタッフ予想では、2019年GDP予想は+1.1%。そのため、事前のコンセンサスでは予想に変更なしという見方が優勢である。

https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/other/ecb.projections201903_ecbstaff~14271a62b5.en.pdf?af658236ccebaec83d737de31384fd18

しかし、最新の独IFO景況感指数は4年来に低い97.9となっており、ここからGDPが一気に改善するチャンスは考えにくい。

② 3ヶ月に一度のマクロ経済「スタッフ予想」・インフレ見通し

今週火曜日に発表された5月分ユーロ圏消費者物価指数(HICP)は、予想通りインフレ率は低下。今後の景気動向と商品市場次第とも言えるが、原油価格が再度上昇しない限り、インフレ見通しは下方修正せざるを得ないと、私は考える。

前回3月の予想では、2019年インフレ見通しを+1.2%としていた。もしかすると、今回はこのまま据え置きかもしれないが、今後下方修正される可能性については、頭に留めておきたい。

私はECBが発表する経済報告書(旧月報)で、「ユーロ圏・予想インフレ率、5年先5年インフレスワップ(期待インフレ率)」を必ずチェックしているが、3月21日号+1.51%であったものが、4月25日号では1.36%まで下がっていた。そして、あるシンクタンクが試算した最新の数値は1.2987% となっており、先行きのインフレ期待値は依然として下落基調であった。

ECBが発表している経済報告書(旧月報)

https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/ecbu/eb201903.en.pdf?7b83297f91c53048970f138c51bbed2f
https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/ecbu/eb201902~a070c3a338.en.pdf?0dd6eac885afc8682567ddb4c7661a6d

③ TLTRO3

今週の理事会でTLTRO3の詳細が必ず発表されると約束された訳ではない。9月からのスタートであり、7月の理事会で発表というシナリオも残る。

4月10日に開催された前回ECB理事会で、ドラギ総裁は「TLTRO3の金利については、まだ話し合いを行なってない。」と語り、決定直前まで発表される経済指標などの情報を分析する必要性を説いた。そして、5月末に発表された議事要旨を読む限り、理事の間でもTLTRO3の扱いを、正式な緩和策のひとつと位置づけるべきか?それとも、あくまでも時限措置的なものとすべきか?意見が決まっていないようだ。

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2019/html/ecb.mg190523~3e19e27fb7.en.html

もし今週発表されると仮定した場合、最も気になるのはTLTRO3 の金利水準である。市場予想ではレフィ金利のゼロ%、或いはデポジット金利同様にマイナス金利にするという意見で分かれていた。

ユーロ圏経済が今ひとつ盛り上がりに欠け、インフレ率が低下している今、タカ派の理事でさえTLTRO3の金利水準をマーケット金利に合わせることは無理だと諦めているらしい。そして、一部の理事の間ではデポジット金利-0.4%に設定する案が支持されているとも聞く。

ブルーンバーグが行なったエコノミストを対象としたアンケートでは、TLTRO3の貸出金利は、レフィ金利(0%)を下回るマイナス金利になるという意見が優勢であった。具体的な予想は、以下の通りである。

図表:筆者作成

④ 預金金利の階層設定導入について

たしか今年3月頃だったと記憶するが、ECBはマイナス金利の副作用軽減目的で、民間銀行が超過金に対し支払っている負担額の引き下げを目的として、デポジット金利を階層的に設定することを考えているというニュースが流れた。それ以降、この話しは消えたようだが、もしかしたら再度この話題が復活してくるかもしれない。

ただし、理事会でこの案の導入について真剣に話し合ったことが発表されれば、追加緩和策の導入シナリオが浮上することにもなりかねないため、私の考えすぎかもしれない。

まとめ

今週に入り、ユーロ圏翌日物無担保金利加重平均(EONIA)先物では、年末までに5bpsの利下げを織り込みはじめた。これは見方を変えれば、年末までにECBが0.1%利下げをする確率が50%となったことを意味している。アメリカの利下げ予想が高まり、米長期金利低下が著しいが、ヨーロッパも同じ道を歩むことになると市場は語っている。

今週の理事会は、フランスのノルマンディー作戦「Dデイ」パレードと同じ日の開催となる。このパレードに参加するため、訪英中のトランプ米大統領がフランスを訪問する。今年は75周年の節目に当たる大事なパレードでもあるため、対EU関税問題に関してあらたな暴言を吐かないことを願うが、トランプ大統領から何が飛び出すかわからない。

米長期金利低下によりユーロは対ドルで安値更新は免れた。イタリア問題などもあり、諸手をあげてユーロ買いをするのは躊躇しているが、ユーロ/スイスが非常に重要な節目に来ているので、注意が必要だ。

これはユーロ/スイス週足に200SMAをのせたチャートである。昨年から何度も黄色いハイライトが通る1.1500/1.1200レベルでサポートされている。もし、今週の終値がこれより下で終われば、一気に1.10台が視野に入ってくる。しかし、スイス中銀がスイス売り介入を仕掛けてくる可能性を考慮すると、意外とこの通貨ペア経由でユーロがサポートされるのかもしれない。要注意通貨として、ユーロを取引する人は常に監視することをお勧めする。

チャート:筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年6月5日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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