スペシャル・トレンドレポート

令和とともに米ドル円相場は円高トレンドから円安へ修正(西原 宏一氏)

2019年4月24日

1)平成時代のトレンドは円高

今回のYJFX special reportでは「元号」が変わることをきっかけに、長期に渡っての米ドル円の動きを検証してみたいと思う。

今月で終わろうとしている30年にも渡る平成の時代は、1989年から2019年。添付月足チャートのように1990年に160円台だったものが、79.75円(1995年)や、75.35円(2011年)を経て、現在も112円付近にあるということは、平成は円高の歴史だったとも言える。

チャート:Bloombergより筆者作成

平成が始まった1989年の日本は、バブル経済のピークであり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持ち上げられていた。日経平均株価は4万円に手が届きそうになり、5万円以上を予想するエコノミストも多くいた。

ただそうした好景気は平成のスタートとともに早晩に終焉。
日本経済は一転して、バブル崩壊の処理と低成長時代に突入。失われた10年、失われた20年と言われる縮小の時代に突入し、同時に経済が停滞しているにもかかわらず、為替市場では「円高」が進行した。

通常、その国の経済が弱体化すれば、その国の通貨は価値を下げるものだが、日本のみならずグローバルに株価が下落する局面、つまり金融市場がrisk offに突入すると、避難通貨として円とスイスフランが選好される傾向にある。このため、日本は経済が縮小しながら、通貨は強くなるという、2重に苦しい状況となった。

1990年代に入ると、米ドルが弱くなり、1994年6月に1ドル100円という大台を割りこむと円高が加速。1995年4月には79.75円まで円高が進行し、米ドル円は史上最安値をつけた。
その後の米ドル円は各国の協調介入などもあって下げ止まり、米国のドル高容認もあって1998年には147.71まで上昇。

21世紀に入ると、サブプライム問題から2008年3月に米ドル円は再び100円の大台を割りこんだ。リーマンショックもあり世界金融が危機的な状況から脱していない状況下で、2011年には東日本大震災という不幸が襲った。これで、米ドル円は一時75.35円という超円高レベルまで高騰した。

こうした経済状況に対して、動いたのが安倍政権。
それまでの民主党政権からアベノミクスを掲げた自民党安倍総裁が2012年の総選挙に勝利して政権交代。
アベノミクス実現に向けて、日銀総裁も現在の黒田東彦総裁を任命して経済の立て直しに向かった。また世界最大のファンドとも言われる日本のGPIFがポートフォリオを見直したのも為替マーケットには大きく影響している。

その日銀の黒田総裁は「質的量的金融緩和」を仕掛け、2008年以降はほぼ2ケタで推移していた超円高トレンドは反転していった。
アベノミクスの流れの中、100円の大台も軽々と突破し、2015年には125.86円台まで急回復。

このように、平成時代は長く円高が続く状況だったが、アベノミクス政策以降状況は変わってきた。
しかし、アベノミクスの本丸は民間活力による成長戦略。政府が実施する機動的財政や、日銀による金融政策はあくまで補助。このため、ここ数年は日銀の「量的質的金融緩和」も徐々に陰りがみえ、米ドル円は反落。

日銀のデフレ脱却政策も効果が薄れ、再び円高トレンドに回帰することが懸念されている。

しかし米ドル円相場は過去数年も何度となく100~105円のレンジを試すもそれ以上は円高が進まない状況が継続。

この円高圧力を止めているのが本邦機関投資家の円売り需要である。

2)本邦機関投資家の資金は一斉に海外へ

人口減少が鮮明となってきた日本では、日本企業による海外M&Aも引き続き活発である。このため、元号が変わるとともに、米ドル円相場のトレンドは円安にシフトするものと考えている。

今年を振り返ると、1月3日に米ドル円相場は突然104円台まで急落するという急激な「円高相場」に直面、再び米ドル円の100円割れが懸念された。
しかしその円高をとめたのが本邦機関投資家の円売り需要。

現在の本邦機関投資家は国内での優良な投資先がなく、運用難に陥っている状態であるため、彼らが預かっている資金は海外の運用会社に任される傾向がある。

そして彼らの資金を預かる海外の運用会社はフィンテック系、特に米国の*GAFAへの投資を進める傾向があり、おのずと資金は円から米ドルへ。
(*GAFA=Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc. )

ここで平成の米ドル円相場を振り返ると、短期的には円安トレンドになる局面もあった。
例えば、2003~2007年に円キャリートレードといわれた円安トレンド。(高値は124円)
ただそうした時期は長く続かず、必ず円高トレンドに引き戻されていた。

この円安相場は個人の外貨需要に頼っていたので、どうしても長期の円安トレンドにはなり得ないといわれていた。

ところが、今回の本邦機関投資家による円から外貨へのシフトは「国内の投資先がない」という構造的なものがあり、マーケットは次第に中長期の円安トレンドに変化しつつある。

こうした本邦機関投資家の動きだけでなく、本邦企業の実需つまり海外M&Aも活発化している。

例えば、4月12日の突然のユーロ円の急騰。
一部報道によれば、「三菱UFJがDZ銀行傘下のDVBバンクから買収する、航空機ファイナンス事業(約56億ユーロ)に関わる手当て」との事。

彼らはBrexitが一段落するのを待っていて、買いに出たと想定される。

実際にこの取引からユーロ円の買いがマーケットに投下されたのだろうが、56億ユーロの何%が実弾としてcashの買いになったのかは全く不明。

ただこのフローによりユーロ円は一時126.81円まで急騰。

このように現時点での本邦からのフローはM&Aを筆頭に円安需要が勝っている。

この三菱UFJのユーロ円トレードのようにGW前に外貨買いをマーケットに持ち込む投資家もいるが、外貨を買い遅れた投資家の多くはGWでの米ドル円の急落を待っている展開。

逆にいえば、仮に10連休中に円高局面がなくても、GW後に彼らは円売りのフローをマーケットに投入する必要がある。

本稿執筆時点での米ドル円は112.00円レベルで上値をとめられているが、なかなか反落もしない展開。
本邦では平成から令和へと時代が変わる10連休となるGWが終わると、過去数ヶ月押し目をまっていた本邦機関投資家も時間切れで、マーケットにドル買いを持ち込むのではないか?と想定している。

国内に投資先がない本邦機関投資家の資金、そして国内市場縮小に伴う本邦企業の海外M&Aという実需資金の流れは、現在の日本を象徴する構造的問題による資金の流れであり、これらの資金は円安を誘引する強烈な材料となる。

元号が変わるとともに、円高から円安にトレンドが変わりつつある米ドル円相場に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年4月23日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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