スペシャル・トレンドレポート

イースター休会中も継続する保守党と労働党との離脱協議(松崎 美子氏)

2019年4月17日

先週の臨時EUサミットで、6ヶ月の交渉期間延長が認められた英国。これを受け、議会は1週間遅れのイースター休会となった。4月23日から再開されるが、その間も保守党と労働党との間では、Brexit案の合意を目指し連日話し合いが行なわれている。

両党のBrexit観の違い

メイ首相の呼びかけに応じた労働党コービン党首。イースター休暇中も休みなしで、双方のトップレベルの話し合いが続いている。

現在、双方が合意している内容としては、①労働者の権利を守る ②EU/英国間の流通物品の基準を揃えること。未だに合意出来ない部分は、①関税同盟への残留について ②政府Brexit案に対する国民投票の有無が挙げられている。

そもそも、保守党は2017年総選挙で、「ハードBrexit」を訴えた。つまり関税同盟への「恒久的な」残留はあり得ず、5月の欧州議会選挙への参加も認めていない。2019年3月29日に離脱できなかった場合の延長期間は、「短期間のみ」としていた。

先週のEUサミットでは、「6ヶ月の延長」が決定。そして、その翌日には欧州議会選挙参加を発表した。このように、メイ首相は次々と選挙公約を破っており、いつ首相交代劇が起きても不思議でない状態だ。

この公約破りに腹を立てたフォックス貿易相は、1922年委員会のブレィディ議長に対し4ページに渡る書簡を手渡しており、「もし保守党政権が関税同盟の恒久的残留を認め、英国が離脱後も関税同盟に残るようなことになるのであれば、辞任する」と発表している。

新党:Brexit党の立ち上げ

イースター休会と同時に報道を賑わせているのが、UKIP(英国独立党)のファラージュ元党首である。今年に入り、Brexit党という新党を立ち上げ、メディアを通して連日気勢をあげている。

https://thebrexitparty.org/

2016年のBrexit国民投票で離脱となったことを受け、「自分の使命は終わった。」と第一線から退いていたファラージュ氏。しかし、英国の欧州議会選挙参加の可能性が先週発表されて以来、この人の顔や声を聞かない日は、ない。

4月13日、バーミンガムで決起集会
Brexit党のはじめての集会が、この週末に開催された。そこでは、ファラージュ党首が欧州議会選挙に向けたキャンペーン開始を宣誓。そして、驚いたことに、保守党Brexit強硬派ERGグループのリーダー:リースモグ議員の妹が、Brexit党に所属しており、欧州議会選挙で戦うと宣言したのだ。兄のいる保守党ではなく、わざわざBrexit党を選んだことは、大きな話題となった。

支持率急上昇のBrexit党
臨時EUサミットの翌日から2日間に渡り行なわれた調査会社最大手:YouGov社の世論調査結果が面白い。

データ:YouGov社世論調査結果(2019年4月10/11日)

これは各政党支持率を、国政選挙(左側のグラフ)と欧州議会選挙(右側のグラフ)に分けて表わしたチャートである。

例えば、国政選挙におけるBrexit党の支持率は8%であるが、欧州議会選挙では15%と一気に2倍に跳ね上がっている。

離脱と残留、50/50
チャート上の紫と水色の★であるが、紫の★がついた政党は「残留支持」で、合計すると29%となる。

それに対し、水色の★は、「離脱支持」政党となっており、こちらも合計29%となる。

議会で何も決定できないBrexitであるが、国民が抱くEUに対する感情も、50/50であることが分かった。

欧州議会関係者、
英国の欧州議会選挙参加に否定的

英国の突然の参加で戸惑っているのは、英国の議員だけでない。欧州議会のブレグジット担当であるフェルホフスタット議員(ベルギー元首相)は、英国が欧州議会選挙に参加することに否定的だ。

その理由としては、将来的にEUから離脱する英国が参加するということは、欧州懐疑派議員の票を増やすリスクがあるからとしている。そして、Brexit党のファラージュ議員が、また欧州議会に戻ってくることも頭痛の種であろう。

欧州議会でもファラージュ議員はかなり浮いており、ユンケル委員長との不仲は有名だ。

ここからのポンドについて考える

最近面白い記事を読んだので、こちらでもご紹介しよう。

https://www.reuters.com/article/us-sterling-trading-insight/rage-within-the-machine-brexit-headline-blizzard-overloads-fx-algos-idUSKCN1RG0GN

ロイターによると、ニュースのヘッドラインを追うように設定されたアルゴリズムのシステムでさえ、Brexit関連ニュースのヘッドラインを追えなくなっているという内容であった。特に面白かったのが、

「The problem for the computers is that Brexit is producing too many headlines for them to process. Reuters, for instance, has published up to 400 news headlines on Brexit per day in recent weeks, up from around 15 on British politics before it became an issue.
アルゴを読み解くコンピューターシステムの問題点は、読み取るヘッドラインが多すぎること。ロイターを例にとると、最近は一日にだいたい400程度のBrexit関連ヘッドラインを発表している。これは、普通の政治関連ヘッドライン数の15をはるかに越える数だ。

Rival Bloomberg has also pumped up the volume of Brexit content by four times since last autumn, running more than 1,000 headlines some days – such as on March 12 when May’s deal was defeated a second time, according to a spokeswoman.
ロイターのライバルであるブルーンバーグにいたっては、日によって1,000以上のBrexit関連記事のヘッドラインを流す。このボリュームは、昨年の秋と比較して、4倍に増えている。」

そして、最後のところでは、

「Data is elusive on algorithms’ exact share in sterling trade, it likely mirrors broader trends — around 70 percent of orders in all currencies on the EBS platform, a major trading venue, are submitted via algorithms, the Bank of International Settlements estimated last September.
「アルゴがポンドの為替取引に占めるシェアを測ることは、非常に難しい。昨年9月にBIS(国際決済銀行)のデータによると、全ての通貨のEBSプラットフォームや取引所でのオーダーの70%程度が、アルゴを通してのものと思われる。」

と書かれている。つまり、あまりにもヘッドライン数が多すぎるため、アルゴはポンド取引を諦めざるをえないようだ。もしこれが本当であれば、ボラティリティーの低下を引き起こすリスクがある。

データ:英中銀ホームページ

最後にポンド実効レートと、ポンド/ドルのチャートをチェックして終わりにしよう。まず、英中銀発表のポンド実効レートは、水色の★で表わした2016年Brexit国民投票後の高値/安値の50%戻しである80.9023直前まで今月に入ってから戻したが、現在は79台での推移となっている。本格的な上昇となるには、50%戻しだけでなく、2018年高値である81.2074を完全に上抜けないと難しそうだ。

次は、ポンド/ドル週足チャートであるが、Brexitに大きな動きがあるまでは、水色のハイライトが通る1.28Highから1.34Lowのレンジ内での動きとなりそうだ。

チャート:筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年4月17日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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