スペシャル・トレンドレポート

欧州のファンダメンタルズの悪化、米国債の逆イールドで、「ユーロ/円」の下値余地が拡大中(西原 宏一氏)

2019年3月27日

1)「米ドル/円」は膠着相場から抜け出せず

今年の「米ドル/円」は、まず1月3日のフラッシュ・クラッシュにより、104.87円まで急落。
このフラッシュ・クラッシュによる「米ドル/円」の急落が、多くの参加者の戦略を変えてしまった。

まず104円台までのあっという間の急落が、輸出企業の米ドル売りを前倒しで誘引。
逆に多くの本邦機関投資家の米ドル買いは遅れがちとなり、米ドルの買い遅れが目立っていた。

結果、フラッシュ・クラッシュ後の「米ドル/円」はほぼ一方的に上昇。
3月5日に112.14円の高値に到達するまで、ほぼ押し目なく続伸。

加えて3月中旬には久々に「*バイオマス発電」に絡む長期為替によるドル買いを筆頭に、期末を控えた本邦勢による実需のドル買いもまとまって持ち込まれ、3月末までには「米ドル/円」相場にはもう一段の上昇の可能性が高まっていた。
(「*バイオマス発電」とは経済産業省も取り組んでいる廃棄物の再利用電力。
その原料は「米ドル建て」で輸入するようで、「米ドル/円」の買いが発生することになる。)

しかし、3月後半、後述するrisk off要因が噴出し、「米ドル/円」は反落。
3月22日のNY closeは109.92円と安値引け。

振り返ってみれば、今年の「米ドル/円」のオープニングは109.69円(YJFXレートは109.653円)。つまり、今年の「米ドル/円」も104円台から112円台まで110.00円を挟んで上下に動いているが、結局110.00円レベルに戻るレンジ相場に終始していることになる。

チャート:YJFX!MT4チャート

ただ昨年と比較すると「米ドル/円」のレンジはさらに狭まってきているので、今年の中旬以降では、そろそろ明確なdirectionを示すのではないかと想定している。

ということは、「米ドル/円」が明確な方向を示すまでは「米ドル/円」以外の通貨でdirectionが明確になる通貨を選択してのトレードとなりそうだ。

2)ドイツのファンダメンタルズは急速に悪化、「ユーロ/円」は下値模索に

今年の相場の鍵を握っているのは、このレポートで何度か解説したが、Brexitに揺れるポンドの動向。

年初、大きくリスクオフに傾いた「米ドル/円」、クロス円だったが、英国の「No deal Brexit懸念」が大きく後退する中、「英ポンド/円」が150円に向けて高騰したため、他通貨円(クロス円)も大きく上昇する展開。
ただその「英ポンド/円」も直近は150円を目前に失速気味。このため3月に入ってからは「英ポンド/円」の他のクロス円への影響力は徐々に弱まってきた。

そうした環境下、3月後半に入り、ユーロが下落。
21日に発表されたフランス、ドイツのユーロ圏PMIの製造業が極めて悪化していた事が要因。
中でもドイツのPMI製造業の悪化が際立っている形。

これでユーロは反落している。

ただ今年の「ユーロ/米ドル」の動きを確認するとECBが極めてハト派でユーロが反落。

次にFOMCもハト派で米ドルが売られ、ユーロが急反発。
そして21日にユーロ圏PMIの製造業が悪化したことで「ユーロ/米ドル」は反落。

こうしてヘッドラインを並べていると「ユーロ/米ドル」は乱高下しているもののタイトなレンジで往来相場を繰り返しているのみ。

確認できるのは、欧州のファンダメンタルズ、加えてECBの金融政策から考えるとユーロ相場に関する材料は売りのみという展開。
それでも「ユーロ/米ドル」が下落しないのは、それ以上に米ドルが悪化していると考えることもできるのだが、「ユーロ/米ドル」は続伸するわけでもなく、結局「ユーロ/米ドル」は21日に反落。

結果、ユーロは対米ドルではなく、他の主要通貨、特に対円で大きく下落し、一時「ユーロ/円」は123.82円まで急落。

チャート:YJFX!MT4チャート

ユーロが対円での下落が明確になってきたのは、米株が下落したため。
その米株の急落の背景は米国債市場で逆イールドが発生したことが要因となっている。

チャートは米3カ月債金利と米10年債金利の差(yield spread)を示しており、長期金利は短期金利より高いのが通常なので、その差も通常はプラスである。

しかし図表右部分は赤線で示したゼロを割り込んでいる。

つまり短期金利と長期金利が逆転(逆イールド)していることを示している。

チャート:ブルームバーグ

この逆イールドの発生にマーケットも注目しており、ブルームバーグでは以下のような記事がある。

――

米国債市場で逆イールド発生、3カ月と10年が逆転-2007年以降初

市場が注目していた米国債3カ月物と10年物の利回り水準の逆転が、22日に起きた。この両年限の間での逆イールドは世界的な金融危機時の2007年以降で初めて。景気後退(リセッション)と利下げサイクルが差し迫っている可能性について市場が発した最初の信頼できるシグナルだ。

22日は米長期債の買いが膨らみ、長めの金利が急低下。10年債利回りは一時2.416%と1年2カ月ぶりの低水準となり、3カ月物の利回りを下回った。逆イールドは向こう1年半ほどで米経済がリセッションに陥る前触れだと見なされている。

米国債への需要が勢いを増したのは20日。連邦公開市場委員会(FOMC)で当局者が成長率と金利の予測を下方修正したことがきっかけだった。

チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「世界的な景気減速に対する不安が裏付けられ、米国の金融緩和と将来のリセッションの可能性を市場が織り込み始めたようだ」と指摘。「これは市場関係者が経済成長を懸念し、リスク資産から米国債にシフトしつつある明確なサインだ」と述べた。

出所 Bloomberg

――

この米国債の逆イールドについては、市場関係者がrisk off発生の予兆として注視しているもの。

逆イールドが発生したからといって直ちにマーケットがrisk offに移行し、即米株暴落というわけではないが、マーケットが神経質になってきたことは確か。

前述のように欧州、特にドイツのファンダメンタルズが急速に悪化。
加えて、米国債の逆イールドが発生して米株の上値が重くなる中、「ユーロ/円」の下落基調が徐々に明確になってきている。

4月に向けて、下値余地が拡大している「ユーロ/円」の動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年3月27日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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