スペシャル・トレンドレポート

見所たくさんのECB理事会(松崎 美子氏)

2019年3月6日

今週木曜日、欧州中銀(以下、ECB)金融政策理事会が開催される。それに先駆け、月曜日にはユーロが大きく下落した。

今回のコラムでは、ECB理事会に向け、私が気になる注意点などを共有したいと思う。

前回1月のECB理事会の要点

今年1月24日に開催されたECB理事会で発表された重要な点は、以下の通りである。

・「夏の間までは、政策金利は据え置き」というフォワードガイダンスを、継続
・満期償還分の国債再投資も、継続
・ユーロ圏経済に対する見通しを、はじめて「リスクは下揺れ」と変更
・1月の理事会は、経済状態の確認がメイン
・TLTROなどの金融政策内容については、一部の理事が話題にしただけ

個人的には、金融政策理事会という名目で会合を開き、そこで金融政策内容についてはあまり協議せず、経済状態の確認がメインというのは、どういうことかと感じた。

今週木曜日のECB理事会での私の注意点

それでは、木曜日の理事会で私が気にしている点を挙げてみよう。

①スタッフ予想の変化
ECBは3・6・9・12月にマクロ経済予想「スタッフ予想」を発表する。

最新のユーロ圏GDPを見る限り、ここにきて景気減速が顕著となっているのが分かる。

データ:欧州統計局

今週発表されるスタッフ予想でのGDPやインフレ率見通しの変更幅に関して、市場には決定的なコンセンサスがないようだ。そこで、いろいろ調べた結果、2019年のGDP予想は、前回2018年12月の+1.7%から、1.3%くらいまで下方修正されるという意見があった。インフレ見通しについては、前回+1.6%から1.4%への下方修正という予想。

ここで特に眼を引くのはGDP予想の(前回予想からの)修正幅である。もしこの予想通りとなれば、ギリシャ債務危機で苦しんだ2012年以来の大きい修正となる。

データ:ECBスタッフ予想(2018年12月)

②フォワードガイダンスの変更
「夏の間までは、政策金利は据え置き」というフォワードガイダンスを、そのまま継続するか?或いは、据え置き期間を年末くらいまで引き延ばすのか?

現在、金利先物では、最初のECBの利上げ時期は2020年中盤となっていることを考えると、なんらかの変更があってもおかしくは、ない。

③TLTROの発表があるのか?
やはり、市場参加者の最大の関心事は、これだろう。そもそも、事の始まりは2月にクーレECB理事(中立/ややタカ派)がニューヨークでの講演で、「ECBはTLTROの可能性について話し合った。」と話したことから火がついた。

為替をはじめて間もない個人投資家さんには馴染みがない名前であるが、TLTROとは貸出条件付き長期資金供給オペレーション(Targeted Long Term Refinance Operations)のことである。これは、民間企業向けの貸し出し促進策という位置づけで、2012年8月に英中銀が実施したFunding for Lending Scheme(FLS 融資促進のための資金調達スキーム)を応用した措置である。つまり、銀行がTLTROを使って特別に安い金利で資金を借り、それを低利の融資として企業や民間に貸し付ける。その結果、企業投資や個人消費が活発になり、景気浮揚に結びつくことを目的としている。

TLTROは2014年から2017年にかけ2段階に分けて実施されたが、2016~17年の部分が2020年以降に満期を迎える。その残高は、約7188億ユーロ。当然であるが、資金を借りた銀行は返済用資金を調達しなければいけない。私も最近知ったのだが、この手の返済資金の準備は、1年前くらいから始めるのが普通らしい。そうなると、今年から欧州系の銀行は、資金調達の必要性に迫られるということだ。

データ:ECBホームページ
https://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/index.en.html
https://www.ecb.europa.eu/mopo/implement/omo/html/communication.en.html

ロイター調査結果

今週のECB理事会に先駆け、ロイター社が実施したエコノミスト調査結果は、こんな感じであった。

①3月のECB理事会
60%以上の人は、3月の理事会では、金融政策やフォワードガイダンスの据え置きを予想。

②TLTROについて
TLTROの発表時期については、特に明記なし。84%の人が、ECBは遅くとも7月までに何らかの発表をすると予想。

③昨年末のQE終了について
90%以上の人は、この判断は正しいと考えている。

④最初の利上げ時期
63人中、32人のエコノミストは、マイナス0.4%となっているデポジット金利の利上げが実施される時期として、来年第1四半期を挙げている。

ここからのユーロ

今週月曜日、ユーロが大きく下落した理由が、特に見当たらない。週末に、トランプ大統領はドルは強すぎると発言したようだが、市場は米中通商合意が最終段階に入っていることを好感し、欧州時間からドル実効レートは大きく上昇。それに加え、ECBが発表するユーロ実効レートのチャートは、2015年からのサポート(ピンク点線)と最近のレンジ(黄緑の点線枠)ともに下抜けしたように見える。

チャート:ECBホームページ

ただし、黄緑の点線枠のレンジに関しては、過去に何度も抜けたように見せかけて、結局抜けきらずに元に戻すことを繰り返しており、私も何度も痛い思いをした。今回も少額のユーロ売り/ポンド買いのポジションは継続保有しているが、木曜日のECB理事会での発表内容を踏まえ、新たなポジションを作るか決めようと思っている。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年3月6日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について松崎美子氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権はワイジェイFX株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

関連する記事

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションならヤフーグループのYJFX!
ワイジェイFX株式会社はヤフー株式会社
(東証一部上場 4689)のグループ企業です。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

YJFX! from Yahoo! JAPAN