スペシャル・トレンドレポート

ボラが落ちてきたユーロ/ドル(松崎 美子氏)

2019年2月6日

最近ずっと英国のEU離脱(Brexit)関連の記事が続いたので、今回は久しぶりにヨーロッパについて書いてみようと思う。昨年下半期から、経済指標の悪化が続いているのにもかかわらず、欧州中銀(ECB)は国債購入を含む量的緩和策(QE)の終了を昨年末に発表した。

現在のユーロ圏を取り巻く環境について、今回は考えてみたい。

先行指標:PMIの悪化

私は景気先行き指標として、購買担当者指数(PMI)を必ずチェックしている。念のためにPMIについて簡単に説明すると、PMIとはPurchasing Managers’ Index の頭文字を繋げたもので、日本語では「購買担当者指数」と呼ばれている。通常、経済指標は各国の統計局や担当省庁から発表されるものがほとんどであるが、PMIに限っては、Markit(マークイット)社という民間会社による指標となっている。

この数字の見方は、数字が50を超えると「良い」。50を下回ると、「あまり良くない」という判断となる。

この表は私が作成した昨年3月から今年1月(速報値)までの、フランス・ドイツ・ユーロ圏の製造業/サービス業/総合指数となっている。黄色いハイライトを入れた数字が、この期間で一番低いものであるが、輸出大国として知られるドイツの製造業PMIが50を下回っているのが、いかに欧州経済の低迷が一過性のものでないことを物語っているように、私には見えた。

出典:マークイット社

イタリア、リセッション入り確定

次は、マクロ経済指標の王様:GDPを見てみよう。先週ユーロは対ドルで1.15台まで上昇したが、そこで頭打ちになり下がってくるきっかけとなったのが、イタリアの2018Q4GDPの数字であった。

このチャートは、イタリア統計局が作成したもので期間は2011年以降であるが、2008年のリーマン・ショック以降におけるイタリアのリセッション期間は、①2008Q2~2009Q2、②2011Q3~2013Q1、そして今回の③2018Q3~Q4となっている。③に関しては、今後さらにマイナス成長が続くかもしれない。

チャート:イタリア統計局

インフレ率も頭打ち状態

金融政策を語る上で絶対に外せないのがインフレ率である。ECBのインフレ目標は「2%以下だが、限りなく2%近く」という文言で設定されているため、下のチャートでは、1.97%あたりに赤い線で表示した。

振り返ると、昨年6月に実施されたECB金融政策理事会で、ドラギ総裁は ①2018年9月末で終了予定となっているQE策を、12月末まで延長しそこで終了する ②現行の金利水準は「早くても2019年の夏の間、継続することが予想される」と、具体的な時期を指定した。この当時のインフレ率は2%台であり、それが10月まで続いた。今思うと、当時のECBはインフレ率が今後もインフレ目標前後で推移すると自信を持っていたのかもしれない。しかし、その思惑は大きく外れる結果となった。

データ:欧州中銀ホームページ

ここからのユーロについて考える

私は、今年はユーロ売りで考えていた。メインの理由は、5月に実施される欧州議会選挙で、ポピュリズム/欧州懐疑派/反移民を支持する政党の議席が増え、欧州統一気運が低下すると予想したからである。そのため、もし私の予想が外れれば、6月以降は作戦の見直しをするつもりである。

今年に入り、ユーロは対ドルで1.15台から1.12台への下落を強いられたが、それは私が予想した政治的な要因ではなく、経済指標の悪化が背景にある。

そして、先日開催されたECB金融政策理事会では、あらたな緩和策とも受け取れる長期リファイナンスオペ(LTRO/TLTRO)についての質問が集中したが、ドラギ総裁はうまく切り交わしている。個人的には、この状態が継続する限り、早ければ今年4月。或いは、遅くとも6月くらいには、LTRO/TLTROの再開が発表されるかもしれないという考えは、変えていない。

それでは、ユーロを取り巻く環境について考えてみよう。このチャートは、昨年からのユーロ/ドル日足に、主な出来事を書き込んだものであるが、ここ数ヶ月は狭いレンジ内での動きに徹している。実際、ユーロ/ドルの12ヶ月オプション・ボラティリティーを調べてみると7%台に落ちていた。2007年と14年に6%台に落ちたことはあるが、ユーロ20年の歴史の中でも、かなり低いことは間違いない。そして、2007年と14年ともに、その後ボラティリティーは大きく上昇している。つまり、具体的にいつかはわからないが、歴史が繰り返すのであれば、ユーロ/ドルは必ず大相場となるということであろう。

最後にECBが発表しているユーロ実効レートのチャートを見て終りにしよう。これを見る限り、ピンクの長期サポートと黒い四角のレンジ内ギリギリで跳ね返された形となっている。これが下抜けすれば、ボラティリティーが戻ってきて、大相場となることを期待したい。

チャート:ECBホームページ

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2019年2月6日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について松崎美子氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権はワイジェイFX株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

関連する記事

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションならヤフーグループのYJFX!
ワイジェイFX株式会社はヤフー株式会社
(東証一部上場 4689)のグループ企業です。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

YJFX! from Yahoo! JAPAN