スペシャル・トレンドレポート

No deal Brexitが避けられれば、ポンドは今年、G10通貨の中で最高のパフォーマンスになる?(西原 宏一氏)

2019年1月30日

1)フラッシュ・クラッシュ後の「米ドル/円」

2018年12月18日のレポートでは、2019年の注目通貨のひとつは、「米ドル/円」。
そして、ターゲットは、まず「105.00円」というマーケットのコンセンサスであると解説。
(YJFX スペシャル・トレンドレポート=2019年の米ドルは米金利の下落とともに反落、「米ドル/円」は105円へ参照。)

そして2019年のマーケットが始まった直後、「米ドル/円」相場は早々とターゲットに到達。

1月3日の「米ドル/円」は早朝の薄い時間帯にあっというまに104円台まで暴落。
この短時間での急落は「フラッシュ・クラッシュ」の動きとなり、その後、「米ドル/円」は急速に値を戻す展開となり、1月25日のNY市場のドル円は109.50円レベルでクローズ。この水準は今年のドル円のスタート時点のレベル。
つまり、2019年の「米ドル/円」はいきなりマーケットのコンセンサスのターゲットまで急落した後、あっという間に年初のオープンニングのレベルまで回復しているという、とても高いvolatilityを伴っての乱高下となった。

チャート:YJFX!MT4チャート

こうした動きも、前回のレポートで解説したように2019年のドル円は極めて高いvolatilityを伴って動くことが懸念されており、そのマーケットのコンセンサスどおりの値動きであるともいえる。

ただ過去のユーロスイスやポンドドルでも起こったように一度フラッシュ・クラッシュで急落を演じた相場は、当面方向感のない持ち合い相場に終始する傾向がある。相場の急激な動きで、それまでに構築されていたポジションの多くが消えてしまい、新たに仕切り直しが始まるからである。

しかし、「米ドル/円」の中期のトレンドは変わらず、ドル安、円高。
ただ前述のように年初の「米ドル/円」はフラッシュ・クラッシュで5円超の暴落を演じたため、当面108.00円~111.00円での調整相場を演じる公算が高まっている。

この「米ドル/円」の代わりに為替相場の主役に躍り出たのがポンド。

2)No deal Brexitが避けられれば、今年のポンドは、G10通貨の中で最高のパフォーマンスになる?

昨年末のポンドはNo deal Brexit懸念が拡大し、続落。英国がEUとの間で何の合意もなくEUから離脱する(合意なき離脱=No deal Brexit)となれば、欧州はもちろん、世界中に大きな混乱が起こることが予想されるからである。
こうしたポンド安になりやすい背景の中、1月3日にドル円がフラッシュ・クラッシュを引き起こした局面では、ポンド円は一時131.70円台まで急落。

しかし、急落後のポンド円は一転して大きく値を戻し、本稿執筆時点ではポンド円は144円台まで急反発した。

その要因はNo deal Brexit懸念の後退。

後述するようにGoldman Sachsを筆頭にポンドに対する強気、もしくは楽観的なコメントが増えてきた。

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ポンドは全面高へ-ゴールドマンが「ソフト」か「ノー」ブレグジット予想
ゴールドマン・サックス・グループは、ポンドが今年すべてのG10通貨に対して上昇する可能性があると指摘する。
英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(ハードブレグジット)のリスクが後退したとみているためだ。
ポンドは先週まで5週連続で上昇。メイ首相の離脱案は15日議会で否決されたが、これによって、2回目の国民投票が実施され最終的に離脱中止につながる見通しが強まるとみられている。
世界通貨・新興市場戦略共同責任者のザック・パンドル氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「過去1週間の展開は離脱の延期や、よりソフトな離脱、あるいは離脱中止の可能性を示唆するものとみている」とし、ポンドは「今年、G10通貨の中で最高のパフォーマンスになると考える」と予想した。
ブルームバーグがまとめた調査によると、ポンドは年末までに、ドルに対して5%余り上昇し1.36ドルになると予想されている。
アジア時間21日朝は前週末比0.1%安の1.2859ドル。
「まだ不確実性は大きいが、ポンドには大きな上振れリスクがあると考えている」とパンドル氏は述べた。

出所:Bloomberg

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この記事でゴールドマン・サックスが指摘するように、Brexitに関しては依然として不確実性は大きいにも関わらず、ポンドドルは1月25日の週までで週足が6週連続陽線。

昨年後半からBank of England(英国中銀)を筆頭にNo deal Brexitについての悲観的なreportが大量に報道されたため、マーケットにはヘッジ目的のポンドのshortがかなり残存している模様。

しかし、今月中旬にNo deal Brexit懸念は大きく後退。

基本的にポンドに対して極めて弱気なスタンスを崩さないLondonの金融機関の友人も、現時点でのNo deal Brexitの可能性は10%ぐらいまで後退しているとの意見。

マーケットにはこうした見方が増えてきているため、オーバーヘッジになっているポンドのshortはある程度買い戻す必要が生じており、それがポンドの急速な買い戻しにつながったようだ。

結果、1月3日に131.70円まで急落したポンド円は、本稿執筆時点で、一時144.84円まで急回復。わずか3週間で13円強反発。

ポンドの反発の可能性を指摘しているのはゴールドマン・サックスのみならず、いくつかの欧州銀行も反発のシナリオを描き始めている。

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英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)について投資家がどのような見通しを立てているかを知るには、ポンドを見ればいい。見通しはおおむね2つに分かれている。EUと何の合意もなく離脱した場合、または総選挙が実施されることになった場合、ポンドは下振れするとアナリストはみている。ING銀行は1ポンド=1.12ドルまで落ち込むと予想。ただ、そのようなシナリオを避けられれば、かなりの反発につながる可能性がある。国民投票が再度実施された場合や、比較的ソフト(穏健)なブレグジットになった場合、INGは最大で1ポンド=1.40ドルまで上がると予想。

ラボ・バンクの為替ストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏はリポートで次のように述べている。「ポンド投資家はどのような結果であれ、それがハード(強硬)ブレグジット回避を示唆するものであれば支持するとみられる」

出所:Wall Street Journal

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ゴールドマン・サックス同様、No deal Brexitが避けられた場合、ポンドドルは極めて大きく反発するのではという見方。

ポンド円に加えて、ポンドドルの値動きを確認すると、本稿執筆時点でのポンドドルの高値は1.3217(1/26)
長期に渡ってポンドドルの上値をおさえていた200 days SMAが1.3069に位置していたが、それをブレイクして急進している。

YJFX MT4チャートより筆者作成

一方ポンドドルの週足でdemark indicatorを確認するとは昨年末からポンドドルの反発を示唆しており、ファンダメンタルズがindicatorのサイン追いついてきた展開。
(添付図はGBPUSD の週足、demark indicatorでは、このチャートのように9-13-9というサインが点灯すると、相場の終焉を示唆し、反発が近いことを示唆する。)

(GBPUSD week TD-Combo 出所:Bloomberg)

3)ブレグジットが絶好の買い場となる時…

金融機関のみならず、ウォール・ストリート・ジャーナルの市場担当シニアコラムニストも、昨年(2018年)12月に「ブレグジットが絶好の買い場となる時」というコラムを寄稿している。

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ブレグジットが絶好の買い場となる時

英国については、政治的な不確実性と変動の大きさを背景に投資不適格との警告が多く出されている。
しかし、筆者の考えでは、ハードブレグジットの可能性は極めて小さい。もしハードブレグジットが起きれば、英ポンドは急落し、ロンドン株式市場の国内関連株は、経済の破綻を恐れる投資家の売りで暴落するだろう。しかし、もし何らかの「ソフト」なブレグジットでの妥協や、ブレグジットの全面的放棄が実現すれば、懸念解消とともにポンド相場は上昇し、国内株は反発するだろう。

出所:WSJ

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UKもEUも「合意なきEU離脱」は望んでおらず、その可能性が後退したことにより、英ポンド/米ドルの上値余地は大きく拡大。
ただ、可能性は極めて低下したとはいえ「合意なきEU離脱」というテールリスクがあることは変わらず。
このため、英ポンドのポジション管理は慎重に行いたいところ。

「米ドル/円」に代わって主役に躍り出た英ポンドの動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2019年1月30日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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