スペシャル・トレンドレポート

米景気減速が視野に、「米ドル/円」反落へ来年度102-117円を想定!(竹内 典弘氏)

2018年12月7日
チーフディーラー :「最近は為替のみならず、金利の分野も少し分かってきたみたいだな」
アシスタント・マネージャー :「以前は為替だけ、つまり木をみて全く森をみていませんでしたが、俯瞰的な見方が養われてきました」
チーフディーラー :「では、米国の利上げの影響はこの先どう出てくる?利上げは継続できる?「米ドル/円」への影響は?」
アシスタント・マネージャー :「利上げは消費者の金利の負担増ですから、来年に向け、絶好調の米景気も減速が意識されてくるはずです。結果「米ドル/円」は反落すると読みます」

ここにきて米景気の減速を指摘する声が相次いでいる。FRB(連邦準備制度理事会=米国の中央銀行)の新任クラリダ副議長は11月16日(金)、CNBCとのインタビューで「世界景気の減速」に言及、「米ドル/円」は当日の高値113.61から1円弱の急反落をみせた。

FRBパウエル議長も11月29日(木)、ニューヨーク経済クラブでの講演で「政策金利は中立金利(注)をやや下回る」と発言、10月上旬の発言「中立金利にはほど遠い」の発言を大幅に修正した。この発言で、米金利は低下、「米ドル/円」も再び当日の高値114.03から反落となった。

(注)経済をふかしも冷ましもしない金利水準。

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成

※インディケーターは筆者開発のTwinCloud®、太さの変わる2本の移動平均とお考え下さい。

後者のパウエル議長の発言は、繰り返されるトランプ大統領からの「FRBは引き締め過ぎ、利下げすべきだ」との口撃への忖度との見方もあるが、純粋に10月以降の米株の下落に配慮したものだ。2月のVIXショック以降、米株3指数は再度史上最高値を更新したが、個別銘柄では下値を拡大する。

年初からの米国のIT企業を代表する銘柄群であるFANG4銘柄の年初来の推移をみた場合、グーグル以外の3社、フェイスブック、アマゾン、ネットフリックスは直近高値からの下落率が20%を超えベアマーケット(注)入りとなった。

(注)株式市場では、通常高値からの下落率が20%に達した時点で、ベアマーケット、つまり弱気相場入りと判定している。

チャート:筆者作成

2015年12月に始まった米国の今回の利上げ局面、ここまで8回の利上げが完了し、12月19日(水)のFOMC(注)で第9回目の利上げが確実視されている。利上げの継続は消費者の金利の負担増にもつながり、ここにきて景気に敏感とされる住宅販売や新車の売り上げには陰りが見えだした。

(注)連邦公開市場委員会、米国の金融政策を話し合う会合

前者の場合、米国の商務省の発表する新築住宅販売は5か月連続で前月を下回り鈍化が鮮明、後者ではAutodataの発表する新車販売のデータをみてもピークアウトがみてとれる。米国は日本と違い自動車のリース比率が高く、今後オフリース(リース明け)の大量の車両が中古車市場に流れ込むことを加味すると、大きく新車販売に影響する。

チャート:米商務省、Autodataより筆者作成

今回の米国の利上げ局面、すでに8回の利上げが完了しているが、「米ドル/円」の利上げ当日の終値と翌月の月末終値を比較した場合、5回が下落、翌々月に至っては6回が下落と利上げが「米ドル」の上昇に直結していない。

2000年代の半ばの米国の利上げ局面では、FRBは合計17回、425bp(4.25%)の利上げを実施したが、「米ドル/円」の上昇はその引き締め局面の中盤のごくわずかな期間に限られた。

そもそも政策金利の引き上げは将来の景気の鈍化を織り込むことから、「米ドル/円」の継続的な上昇には寄与しない。今回の場合も、利上げ開始前の2015年6月の高値125.86に遥かに及ばない。

チャート:筆者作成

今年秋に2019年末まで4回(年内1回、来年3回)と想定された米国の利上げ、相次ぐ「米景気減速」、「利上げの打ち止め」発言から、2019年以降の利上げの織り込みが急低下している。足元で織り込むのはここから2.18回、つまり12月19日(水)に1度実施した場合、2019年にわずか1回強しか織り込んでいない。

それどころか、ここにきて12月19日(水)の1度で一旦休止、2019年は利上げなしとの見方まで台頭してきた。そもそもこの利上げ、以下の散布図をみれば来年末までここから4回をフルに織り込んでも「米ドル/円」の整合値は115.303と115円をわずかに超えるレベルしか示唆しない。

仮に今年年内1度の利上げで終了し、ここまでの織り込みが全てはく落した場合、「米ドル/円」の整合値は109円を割れる。ちなみにこちらにはスペースの関係上、図表等に表示していないが、本稿執筆時点(12月5日(水)午前)、市場は2020年度に実に0.16回の『利下げ』を織り込んできた。

図表:筆者作成

政府は予定通り2019年10月に消費税を8%から10%への増税を表明している。現在の8%に至る過程で、「3%の導入」、「5%へ増税」、「8%へ増税」のプロセスを踏んだが、導入前月の終値と一年後の月末終値で判定した場合、全てのケースで「米ドル/円」は上昇している。

導入時の1989年を例にとると、導入前に100円で買えたものが導入後には103円となることから、実質3%インフレが進行したことになり、通貨「円」の価値が下がっている。この場合、購買力平価(注)の理論では「米ドル」の上昇をもって均衡されることになる。

(注)一つの国の通貨の購買力は、他の国でも等しい水準となるように為替レートで調整されるという考え方。

ただこの購買力平価の理論では、貿易収支や関税率等を加味しておらず、日本の消費増税が直接「米ドル高、円安」に結び付くという考え方には距離を置いておきたい。そもそも以下の様に導入時、増税時には日本やアジア地域特有の「円売り」要因が山積していた時期だった。

図表:筆者作成

図表:筆者作成

以上をまとめると、リーマンショック後の米景気の回復が10年目に突入するなか、やや陰りが見え始め、2019年後半に向けトランプ減税の浮揚効果も徐々に薄れる。金利面からはFRBのここからの利上げ、2019年末まで4回をフルに織り込んでも金利と「米ドル/円」のここまでの相関が継続した場合、115円台までしか上昇が見込めないことが判明した。

ただこのシナリオは、米景気の減速からの再浮上を前提とした極めて楽観的なもので、米中の貿易摩擦の悪影響等は加味していない。本邦での消費増税の導入は2019年10月で、導入後に駆け込み需要の反動減から一時的に消費が冷え込んだとしても、日銀のさらなる緩和等も見込めない。

2019年の「米ドル/円」は反落を見込み、年間のレンジでは102-117円を想定している。

竹内 典弘氏プロフィール

竹内 典弘(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。 1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。 相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2018年12月7日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内典弘氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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