スペシャル・トレンドレポート

2019年、「米ドル/円」は早晩ピークアウトし、反落する公算が高い(西原 宏一氏)

2018年11月30日

1)過去2年間の膠着相場を経て、来年の「米ドル/円」は大相場へ

早いもので今年もあと1ヵ月強となった。

今年の「米ドル/円」相場は、112.69円でスタートしたが、昨年末からのレポート等で解説した通り、その後は急激なドル安で3月には104.56円まで下落。
年初から約8円の急落となったドル円は、米ドル金利の上昇もあり、年末に向けじり高推移へ。

本稿執筆時点での「米ドル/円」は113円ミドルで推移している。

2018年を振り返れば、年初の112円台が現在は113円台であり、「往って来い相場」を形成しただけで終了しそうだ。

今年が動かない相場となった理由は、その前の動きにある。
まず、2015年はアベノミクス相場により「米ドル/円」は、125円もの高値にまで到達した。
そして2016年は年初からBrexitが話題となり、「英ポンド/円」が、2015年後半から約75円もの大暴落となり、連れて「米ドル/円」も99.02円まで一気に暴落。
しかし、この年の11月には「米大統領選挙でトランプ氏当選」という、誰もが予想しないサプライズにより、「米ドル/円」は2ヵ月で約18円も反発し、118円台となった。
つまり、2015年から2016年末にかけて、「米ドル/円」相場は25円以上下落して、18円以上急騰する大相場となった。
これだけ急激な動きが出ると、その反動が当然あり、2017年はレンジ相場に終始。
そして今年、2018年はわずか10円程度の値幅しかともなわない膠着相場で終了しそうだ。

ただこうしたマーケットは大手の金融機関に勤めるoption traderにとっては、利益を得やすい大相場でもある。

Option traderは主に為替の方向性ではなく、変動にかけてトレードをする。
つまり今年の「米ドル/円」のように膠着した相場、つまり動かないという相場にかけて大きな収益を上げることができるわけだ。

ただ彼らにとって、「イージーで収益をあげやすい相場」も長続きするわけではない。

2017年、2018年と、2年間も膠着した相場が続いた「米ドル/円」マーケットは、来年2019年には大きな変動を伴って動く可能性が高まっている。

私がこう考える根拠の1つに、まずドルインデックスの動きがある。

2)BISの名目実効為替レートは2002年以来の高値

市場参加者の間では、12月のFOMCの利上げ予測もあり、来年も米ドル高というのがコンセンサスになりつつある。

ただ2008年以降、10年もの長期に渡るドル上昇を受けドルインデックスはかなり高値圏に達しつつある。

添付図は、BIS(国際決済銀行)の名目実効為替レートの月足。
チャート:筆者作成

これは一般的にdixyとよばれるドルインデックスではなく、BISの名目実効為替レートである。この数値によれば、現在の米ドルは2002年の高値127.44を越えて、127.82まで上昇し、2002年以降の最高値となっている。
つまり、米ドルの名目実効為替レートは今世紀になって最大の買い越し状況にある。

2000年代前半といえば、「米ドル/円」も135円台に到達した局面もあるほど、かなり米ドル高が進んでいた期間である。

チャート:筆者作成

しかし、現在の「米ドル/円」相場は冒頭でも説明したが、113円台で、2002年1月の135円とは程遠くなっている。

このBIS名目実効為替レートと、「米ドル/円相場」の乖離から、現在の米ドルは行き過ぎた高値圏に突入しているのではないかと考えられ、この状況はいずれピークアウトして、米ドル高相場は反転するのではないかと考えている。

ただマーケットでは、リーマンショックから立ち直る過程で米ドル高を牽引してきたFRBの利上げがまだ継続中であるというのがコンセンサス。
このため、FRBが利上げフェーズにある限り、米ドルはまだ続伸するのではないかという意見が大半である。

このFRBの利上げと米ドルの動きに注目すれば、逆説的にFRBが金利を中立とした局面で米ドルはピークアウトすることになりそうだ。

この点については、FRBのクラリダ副議長が興味深いコメントをしている。

3)FRB副議長が「中立金利に近づいている」とコメント

11月16日に、クラリダFRB副議長が米CNBCテレビのインタビューで下記のようなコメントをしたことで、2019年のFRBの利上げ予測が後退してきている。

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「世界的な減速を示唆する証拠はある」
政策金利について「(景気を過熱も冷やしもしない)「中立金利に近づいている」

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個人的には、前述の通りFRBが金利について「中立金利」と言及した時点から、米ドルは下がると想定している。

もちろん、今回はクラリダFRB副議長が「近づいている」と言っているだけなので、他のFOMCメンバーの意見は相違するだろうが、副議長という立場の人が、市場が注目している「中立金利」についてコメントしたことに注目している。

4)2019年に向けて、米系金融機関の米ドル弱気派が増加中

FRB副議長の発言もあり、2019年を控えて、マーケット参加者の米ドルに対する見方も徐々に変わってきた。

まずは、モルガン・スタンレー

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モルガン・スタンレー:ドルの強気相場は終了、売り時到来
ドルの強気相場は終了し、売るべき時だとモルガン・スタンレーは指摘する。

モルガン・スタンレーのFX戦略担当グローバル責任者、ハンス・レデカー氏はリポートで、「現行水準付近でドルはピークに達したと思う」とし、「信用スプレッドの拡大や株価下落に加え、ディスインフレ圧力や原油安の中でソブリン債利回りが低下し始めていることを背景に、ドルは弱含む可能性がある」と予想した。

貿易摩擦の激化や米国債利回りの上昇、 米国の堅調な経済はドル需要に拍車をかけており、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は4月半ば以降、8%上昇。強気なヘッジファンドはネットロングポジションを2017年1月以来の高水準に高めている。

しかし、モルガン・スタンレーは、米国資産に最近流入した外国マネーは短期資金で、流れは急激に反転しがちだと見なしており、これもドル安局面の可能性を示す兆候だとしている。また、米経済の減速や原油価格下落、中国人民元の安定や米市場の流動性の引き締まりといった要因もドルに弱気な見方を後押しするとレデカー氏は指摘した。

出所 Bloomberg

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次はゴールドマン・サックス

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ゴールドマン、円強気に転じる―向こう1年で1ドル=108円に上昇予想

ゴールドマン・サックス・グループは自称、長期的な円弱気派だが、向こう1年には円が上昇すると予想した。

米国の経済成長減速と金融市場の変動性の高まり、日本銀行の景気刺激策の縮小見通しを背景に、円は今後1年で1ドル=108円まで徐々に上昇すると、ゴールドマンの世界FXおよび新興市場戦略共同責任者のザック・パンドル氏らストラテジストが18日のリポートで予想した。

パンドル氏らは「より厳しい世界的リスク環境は、2019年についてより建設的な見方を促す」とリポートで指摘。「たとえ米金融当局が予想以上のペースで利上げするとしても、米国の成長鈍化と市場のボラティリティ上昇は円を押し上げる傾向があることがこれまでの例で分かっている」と分析した。

円は向こう3、6、12ヵ月対ドルでは112円、110円、108円と徐々に強含むとの見方だ。

日本銀行が一段の緩和縮小を示唆する可能性がある上、日米の貿易交渉で米政権が円の弱さに注目する公算もあるとパンドル氏らは論じた。

出所 Bloomberg

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この記事にもあるように、ゴールドマン・サックス・グループは円弱気派という印象が強いのだが、短期的に円高派に変わっているようだ。

最後は巨大ヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツを率いるレイ・ダリオ氏の極端なドル弱気論。

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ダリオ氏の目に映る1930年代との不吉な類似

ドルが準備通貨としての地位を失う状況を米国の最悪の悪夢と表現
資産の5-10%の金への配分を検討すべきだとダリオ氏は勧める

世界最大のヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者である資産家のレイ・ダリオ氏は、今の世界が1930年代後半に非常に似ているとブルームバーグ・オピニオンの私の同僚、バリー・リットホルツ氏に19日語った。控えめに言っても、やや不吉な予感を誘う発言だ。

ダリオ氏は「マスターズ・イン・ビジネス」のライブポッドキャストで、米国株が過去最高値に達し、米連邦準備制度が金融政策の引き締めに動く現状を考えると、金融市場は80年前と同じように短期的な景気循環の終盤に差し掛かっており、ポピュリスト候補の台頭という形で、政治の「二極化」も進んでいると分析した。さらに世界は借金漬けの状態にある。多くの先進国で金利がなお過去最低水準近くにあり、各国・地域の中央銀行が数兆ドルもの資産を既に購入していることを前提とすれば、容易な解決策のない長期的問題だ。
筆者が9月のコラムで言及した通り、ダリオ氏はかつて、ドルが準備通貨としての地位を失う状況を米国の最悪の悪夢と表現した。膨らむ米国の財政赤字がいずれ海外の大口投資家をいら立たせることになると同氏は懸念し、ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)も、こうした不安を共有している。連邦準備制度が国債のマネタイゼーション(貨幣化)を行わざるを得ない状況では、「ドルの価値が30%下落する事態も容易に起こり得る」とダリオ氏は2ヵ月前に主張した。

出所 Bloomberg

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レイ・ダリオ氏の場合は極めて極端で、position talk なのかという印象だが、来年は米ドル弱気派が増えてきている印象。

11月21日のNY市場では下記の報道もあり、FRBがいつ中立にするのかという議論が活発に論議されている模様。

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米金融当局、来年春にも利上げサイクルを終了する可能性-MNI
米金融当局は段階的な金融引き締めについて少なくとも休止する検討を開始しつつあり、来年春にも利上げサイクルを終了させる可能性があると、マーケット・ニュース・インターナショナル(MNI)が匿名のFRB高官の話として報じた。
12月の利上げはほぼ間違いないが、議論は3月のFOMCからより活発になり、6月には確実に議論される-MNI

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直近のマーケットでは12月のFRBの利上げ予測や、武田薬品による620億ドルでのシャイアー買収による米ドル買いも再び噂され、米ドルはもう一段上昇する余地もありそうだ。

しかし、米ドルが早晩ピークアウトするのではという参加者が増えてきているのも事実。

徐々に米ドルの上値が限定的となり、逆に下値余地が拡大している米ドル、特に「米ドル/円」、「ユーロ/米ドル」での米ドルの反落に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年11月30日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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