スペシャル・トレンドレポート

ユーロ円を中心としたクロス円の続落に警戒(西原 宏一氏)

2018年10月31日

1)上海総合指数は戻りも限定的で続落中。

このreportで何度か紹介したが、上海総合指数の下落は収まらず、今月は下値を大きく伸ばしている。
添付図は上海総合指数の週足。

チャート:筆者作成

上海総合指数は2016年1月に到達した安値である2,638が重要なサポートとして、過去2年間機能してきた。

今回の下落局面でも国家隊といわれる中国当局の介入も噂され、上海総合指数の上値は重いものの、このラインでずっとサポートされていた。
ところが、今月はこのラインを割り込んで、一時一気に2,449まで急落。

上海総合指数の下落が加速した背景には今月4日に報道されたペンス米副大統領のコメントが大きな影響を及ぼしている。

2)ペンス米副大統領は中国との冷戦を宣言!?

10/4(木)、ワシントンのハドソン研究所で行われた米副大統領のペンス氏の演説が市場の注目となった。この演説内容はこれまでになかったほど強烈となった。G2とも呼ばれた米国と中国という2大国の今後の関係を見る上で、このペンス米副大統領発言が米国政権の中国に対する見方、そして今後の方向性として注目されている。

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中国との冷戦を宣言したペンス副大統領〜米国世論も操る「悪の帝国」と戦え!

ペンス副大統領が10月4日、ワシントンのハドソン(Hudson Institute)研究所でトランプ(Donald Trump)政権の対中政策に関し講演しました。
副大統領は中国を「米国に挑戦する国」と決めつけたうえ、「大統領と米国人は後ろに引かない」と国民に訴えました。中国とはともに天をいただかないと言い切ったのです。

出所:日経ビジネス

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ペンス副大統領の発言をまとめると下記のようになり、中国が米国の民主主義の根幹に干渉したことを厳しく非難する内容となっている。
「疑いの余地はない。中国は米国の民主主義に干渉している」
「アジア、アフリカに借金漬け外交をしている」
「自国民を抑圧する方向に政策転換している」
つまり、米中関係は貿易戦争という「経済」の枠を超えて、本格的な政治的対立となりつつあり、イデオロギーも政治体制も違う2大国の対立は、かなり深刻化してきている。

それでもマーケットには、米中貿易戦争は米中間選挙まで、という意見もある。
しかし、筆者がこれまでのレポートでも米中間選挙は関係なく、それを越えても米中問題は深刻化すると考えている。つまり、この対中発言は単にペンス氏個人の見解とは考えにくく、米トランプ政権、さらには米国議会を含めて、米国政治が中国との対立路線を真剣に考え始めていることが伺える。
米国が本気で中国と対立することを考えているとなれば、多少の経済への影響は仕方ないと考えている可能性がある。またこうした対中政策で強気に出られるのは、現在までの米国経済が非常に好調で企業業績も順調という裏付けがあるからかもしれない。

こうした背景もあって、上海総合指数は一気に下落を早める展開になってきた。
ただ、この状況を中国当局が手をこまねいているわけでもなく、「市場支援のための政策措置を取る」との報道から一時中国株は反発する局面もあった。しかし上値は限定的。

また、市場関係者の中国株に対する意見も引き続き弱気なものが目立つ。
例えば、BoAメリルの中国株戦略責任者によれば、「上海総合指数は2日続伸となっているが、上海総合指数のパフォーマンスは世界で最も低いもののひとつであり、現在の急回復はセンチメントの回復による短期的なもの。結果反発は長続きしないだろう」とコメント。
このYJFXレポートでも何度か紹介したように米中貿易戦争は収まるどころか深刻化しており、なかなか中国株が反発する目途は見えない。このため、中国経済と密接な豪ドルは引き続き弱含んでいる。

添付図は豪ドル円の週足。

チャート:YJFX!MT4チャート

豪ドル円週足は、雲の下にあり、転換線が基準線の下にあり、遅行スパンも値動きの下でしかも雲のしたにあり、三役逆転して下落の動きを示している。

豪ドル円は今年の初めから下げているが、10月中旬まではこの中国株の続落が、米株には大きな影響を与えてはいなかった。
米中貿易戦争は、輸入関税の引き上げであり、中国の対米輸出と、米国の対中輸出では、中国の対米輸出額の方が数倍大きく、米国は中国のお客さんである。ということは、米国は多様で多額の中国からの輸入品に制裁関税を加えることがでるが、中国は米国からの輸入が小さいので報復関税にも限界がある。貿易にかかる関税を付加する争いでは米国が圧倒的に有利である。つまり、貿易戦争では勝利者は米国となるため中国株が下落しても、米株に悪影響を与えないというわけである。

ただ中国株の続落が他の主要指数に全く悪影響を与えないという考え方には、筆者も含め多くのマーケット参加者は違和感を持ち続けていた。
中国株と米株のデカップリングに矛盾を感じていたわけである。

そして、その矛盾は10月後半の相場で一気に解消されることになってきた。

10月24日の米株は急落。
S&Pは、3.09%, Nasdaqは4.43%も急落。
NYダウは608ドル安。
S&PとNYダウは年初来の上げを全て喪失した展開となった。

米株急落の要因は下記の要因があげられる。
①オバマ前大統領とヒラリー・クリントン氏宛に爆発物とみられる不審物が届き、シークレットサービスが捜査を開始したという報道がセンチメントを悪化させたこと。
②24日発表のテキサスインスツルメント(TXN)決算が予想外に弱かったこと

ただ米株に関しては、何度か紹介したようにテクニカルが示していた調整が顕在化しただけだと想定している。
呼応して日経平均も大きく値を崩し、一時21,000円を割り込む展開。
これで今月の日経平均は高値である24,448円から3,500円弱も急落しており、マーケットはrisk off相場へ移行。

為替市場では、Risk off相場なので、クロス円が急落。
本レポートでなんどか紹介してきた豪ドル円は一時78.56円まで急落している。

前述のように中国株の下落により豪ドル円は順調に値を下げているが、年末に向けてマーケットの注目はユーロ円と考えている。

3)イタリア情勢の悪化を背景にユーロ円も反落へ、週足の雲をブレイクしたユーロ円の下値余地は大幅拡大。

中国経済が悪化の一途をみせている中、イタリア情勢も混迷を深めている。
10月24日、欧州委員会はイタリアの予算案を拒否、3週間以内に再提出するように指示した。ユーロに加盟する国は、金融政策をECBが司り、統一通貨ユーロを使うため財政政策において全てを自由にできるわけではない。財政に一定の歯止めがあり、共通通貨の価値を下げないように努めなければならない。

しかしイタリアのコンテ首相は政府内に予算案を変更する「プランB」の用意はないと主張。
予算案の差し戻しは過去に例がない。
結果、イタリア国債は続落。マーケットはイタリアに対する信用に疑いの目を向けつつある。

加えて、欧州全般の景況感も悪化している。
10月24日に発表された独製造業PMI、ユーロ圏製造業PMIが軒並み悪化。
PMIは購買担当者指数なので、ユーロ圏各国の企業に勤める現場の人たちが中国経済の悪化から景況感が悪くなっている、と感じ始めていることを示している。
つまり欧州諸国のPMIの悪化は、タイムラグを伴いながら、米中貿易戦争に端を発する中国経済の悪化が欧州にも影を落とし始めたことを示している。

中国景気の悪化が欧州にも飛び火しつつあり、これによりもみ合いを続けていたユーロ円の下落基調は鮮明になってきた。

添付図はユーロ円の週足。

チャート:YJFX!MT4チャート

2016年後半からのユーロ円の動きは週足の雲の位置が重要なポイントとなっている。
いったん雲の中に入ると、なかなか抜け出してこないが、いったんブレイクするとその方向に明確に動きはじめている。
添付図にあるように、2016年後半は110円台から120円台に上昇しつつも、12月に雲の中に入ったユーロ円週足は、2017年5月に雲を上抜けるまで、115円から125円ぐらいの幅で上下して方向が定まらない。しかし、その後は2018年1月後半の137円ミドルまで10円以上大きく上昇。しかし、その後本年は5月から再び雲の中に入っている。

直近のユーロ円は10月後半、上海総合指数や日本株に加え、米株をも巻き込んだグローバルな株急落の動きをうけ、週足の雲を明確に突破し、下値余地が大幅に拡大している。

S&PとNYダウが年初来の上げをすべて失い、大きく値を下げている米株を筆頭とした株安による、risk offの流れと、イタリア情勢の悪化がユーロの下落を後押しており、下値余地が大きく拡大しているユーロ円の動向に注目である。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年10月31日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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