スペシャル・トレンドレポート

『トランプ大統領の「口先介入」とここからのドル(松崎 美子氏)

2018年8月23日

今に始まったことではないが、トランプ大統領の為替や金利水準に関する「口先介入」にはうんざりする。中国やEUを為替操作国として非難しつつ、自身はドルの水準に関する発言を繰り返している。

そもそも国際通貨基金(IMF)の業務のひとつである「加盟国経済と金融情勢のモニター業務」の中で、「不公正な競争上の優位を得るための為替操作を行わないこと」が定められているにも関わらず、世界の基軸通貨のドルを保有するアメリカの大統領が為替レベルに関する言及をしているのだから、始末が悪い。

https://www.imf.org/External/japanese/pubs/ft/whatj.pdf

今回のコラムでは、最近のトランプ大統領のドルに対する発言について、感じたことを書いてみたいと思う。

最近のドル高は、ホワイトハウスの我慢の限界レベルなのか?

今年1月には強いドルを望んでいたトランプ大統領が、ここに来てドル高に苦言を呈する機会が増えてきた。

出典:Stockcharts.com

このチャートは2016年11月米大統領選から現在までのドル・インデックスを表わしている。トランプ勝利の1ヶ月後にドルは高値を付け、その直後に大統領は「ドルは強すぎる」と発言し、ドルは急落。今年に入ると、発言内容を180度変え、「強いドルを望む」と語った直後に88.15の安値をつけた。その後上昇し、現在はちょうど半値レベルでの推移となっている。

大統領の発言を見ると、
・ 2017年1月 ドル・インデックス 101/102台で、「ドルは強すぎる」
・ 2018年1月 ドル・インデックス 88台で、「強いドルを望む」
・ 2018年7月 ドル・インデックス 94/95台で、「強いドルは、米国に不利」

これはあくまでも私の個人的な印象であるが、これらの発言を総合すると、ホワイトハウスはドルが100台に乗ることは望まず、95あたりを上限としたいのではないか?可能であれば、90-93台をコアとしてそこから±2のレンジ内で推移することを望んでいると勘ぐりたくなる発言内容である。

アメリカはドル安を押し付けてくるか?

アメリカが本気でドル安を望むのであれば、手段は4つ考えられる。ただし、実現する可能性としては、②④に限られそうだ。

① ドル売りの為替介入
→ 上述の通り、IMFが許すはずがなく、実現する可能性は【極めて低い】

② 他国の通貨安を認めない
→ 今年3月に見直しがされた米韓自由貿易協定(FTA)では、競争的な通貨切り下げを禁じる「為替条項」が導入された例がある。もしかしたら、今後は中国に対し同様の措置が取られる可能性は、【あるかもしれない】

③ 口先介入の強化
→ 既にトランプ大統領だけでなく、ムニューシン財務長官やクドロー国家経済会議(NEC)委員長が口先介入をしているため、可能性は【高い】

④ FEDのインフレ目標のレベルを引き上げさせる。或いは、利上げを許可しない
→中央銀行の独立性を著しく傷つけるだけでなく、どう考えても議会の承認が取れるはずがない。つまり、実現する可能性は、【ゼロ】

目先の注目イベントは、ジャクソンホール経済シンポジウム

今年のジャクソンホール経済シンポジウムは、8月23日から25日にかけて開催され、正式な参加者名簿の公表は、8月23日(木)米東海岸時間20時(日本時間 翌午前9時)に公表される。主要国の中銀関係者で、唯一講演をするのは、米パウエルFRB議長であり、講演時間は、8月24日(金)米東海岸時間午前10時(日本時間23時)。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/calendar.htm

気をつけたいのは、公式な講演予定はないがシンポジウムに参加し、TVなどのインタビューに答える中銀関係者がいるはずなので、油断は禁物だ。

ジャクソンホールでの注意点

私自身の注目材料は、6点。

・果たしてアメリカはマーケット予想通り、9月と12月それぞれ利上げに動くのか?今年3回目となる9月利上げは、たぶん予定通りであろうが、12月はどうなるか?

・ここからの利上げを含む「金利の正常化」のペースや、将来の利上げ回数などに関して、何らかの言及は、あるか?ちなみに、2015年12月からスタートした利上げは、既に7回に達した。

出典:FRBホームページ

6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で発表された3ヶ月に一度のマクロ経済予想によると、今年は4回の利上げ(既に2回の利上げを実施)が予想され、中立的な金融政策となる政策金利の水準を示す長期の金利水準は2.875%となっている。

出典:米FOMC マクロ経済予想(2018年6月14日)

・8月に入りマーケットのかく乱要因となっているトルコ危機などを考慮して、バランスシート縮小の速度に何らかの変化があるか?個人的には、これらのかく乱がアメリカ経済を直撃しない限り、変化はないと予想している。

・トルコ危機をはじめとする新興国問題についての正式な講演はないにしても、参加している金融関係者の話題には必ずのぼるものと見られ、どのような報道がなされるのか、興味がある。

・米中貿易戦争により、中国の景気減速懸念が高いため、世界景気全体が冷え込むことにもなりかねない。それに対するFEDの考え方は?

・ECBは年末でテーパリングを終了するが、政策金利の変更は「早くても2019年夏の間まで」は、やらないとしている。アメリカも、このようなフォワードガイダンスの導入の可能性は、あるのか?

【ここからの相場展開】

8月17日に公表された14日現在のシカゴIMM通貨先物ポジションでは、ドルの主要6通貨(円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドル)に対する買い越し額は、237億ドルで、前週の220億2000万ドルから拡大し、2017年1月中旬以来の高水準となった。今週に入りトランプ大統領の口先介入でドル売りが炸裂しているが、まだまだドル・ロングの絶対的水準は高いままであると考えられる。

ユーロ/ドル日足のチャートを見ると、ピンク点線で描いた下降チャネル内での動きとなっている。執筆時(8月21日 火曜日)の日足を含む4本の陽線が出現しているが、今年の上昇局面では、最大で陽線は5本である。もし今回も同じパターンとなれば、8月22日(水)で一旦上昇一服となる可能性が出てくる。

当面は、ピンクのチャネル上限である1.1670ドルレベルを意識して行きたい。

チャート:筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年8月23日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
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