スペシャル・トレンドレポート

8月2日英中銀 Super Thursdayに向けて(松崎 美子氏)

2018年7月25日

8月2日に英中銀のSuper Thursdayが開催される。この日は、政策金利やQE策内容の発表に加え、3ヶ月に一度のマクロ経済予想がぎっしり詰まった四半期インフレーション・レポート、そして総裁や副総裁による記者会見の実施となる。

今回のコラムでは、最近のBrexit進捗状況をざっくりお話しし、Super Thursdayでの予想を書いてみたいと思う。

Brexitに向けた3つのシナリオ

英議会が夏休みに入る直前の先週、Brexitに向けたシナリオに大きな変更があった。ここでは、新たなシナリオも含む3つのシナリオと、それに関する賭け屋のオッズも一緒にご紹介したい。

① 白紙離脱

今月メイ首相から発表された「Brexit報告書/白書」。この内容を巡り、反対の意を唱えたデービスBrexit担当相とジョンソン外務相は、あいつぎ辞任を発表した。

「Brexit報告書/白書」

重要閣僚2人の辞任を受け、メイ首相は「保守党内部で意見の統一ができないのであれば、EUとの合意も難しい。それならいっそ、白紙状態で離脱する選択肢についても真剣に考えるべきだ。」という意見を披露した。この発言について英国政府関係者は、保守党内部のBrexit賛成派と反対派の分裂を収めることがメインの目的で、決してメイ首相は白紙離脱を望んでいるわけではない・・・という意見が出てきている。

しかし、6月末のサミットが、難民サミットに変わってしまったことを受け、英国だけでなく、ヨーロッパ各国でも「万が一の白紙離脱に備える」動きが出てきているのも事実である。

ちなみに、白紙離脱が実際に起きるというオッズは、7/4 (36%)となっている。

オッズ: Betfair

② 解散・総選挙

先週突如として出てきたのが、解散・総選挙についての報道であった。野党:労働党が好むシナリオであるが、賭け屋の「総選挙実施年」のオッズを見ると、2018年に実施される可能性が一番高く、36%となっている。

オッズ:William Hill

もし今年総選挙が実施された場合、果たしてどの政党が政権を取るのか?オッズを見ると、「過半数政党なし」が44%となっており、ドラスティックな政権交代が起きる可能性は、あまり高くなさそうだ。

オッズ:William Hill

もし総選挙となれば、次期首相は?現時点では、労働党コービン党首が頭一つ出ているが、その後を保守党のジャビド内務相とジョンソン元外務相が追いかけている。

オッズ:William Hill

ここでの注意点は、労働党コービン党首が首相となれば、ソフトBrexit、或いは2度目の国民投票実施というシナリオが浮上してくるかもしれない。その場合は、ポンドが一旦大きく買い戻されるので、注意が必要である。

③ 2度目の国民投票の実施

同じく先週話題となったのが、「2度目の国民投票実施」の噂であった。その背景には、現政権がBrexit交渉合意をギブアップした可能性があるということのようだ。そこで、もう一度国民にこの国の将来について、決定を委ねるという意見である。

このシナリオは、労働党政権になればあり得るかもしれないが、現政権が選択するとは思えない。

オッズは以下の通りで、やはり実施される可能性は、低くなっている。

オッズ:Skybet

8月2日 Super Thursdayに向けて

Brexitで揺れに揺れている英国だが、8月2日の英中銀金融政策理事会(MPC)では、0.25%の利上げが予想されている。

金利先物市場では、利上げの織込み度は、執筆時で84.7%となっており、最近のロイター調査結果を見ても、75人のエコノミストのうち、47人(約63%)が利上げを予想している。

○本当に利上げが実施されるのか?

デービスBrexit担当相の辞任を受け、新しく任命されたラーブ新Brexit担当相は7月26日からバルニエ欧州委員会首席Brexit担当官と交渉を開始する。それに先立ち週末日曜日にBBC老舗政治ショーに出演し、「10月のEUサミットに間に合うよう、Brexit交渉の合意が取り付けられることに、かなり自信がある。」と語った。

果たしてどのくらいの人たちが、この発言を信じたのかは定かではないが、Brexitにより政治だけでなく、経済面も傷み始めてきたようだ。

先週発表されたインフレ率、雇用統計、小売売上高などすべてが、予想通り或いはやや下回るという結果で終わっている。

このチャートは、インフレ率(青)と賃金上昇率(ボーナスを含む2.5%=緑、ボーナスなし 2.7%=赤)との関係を表したものであるが、インフレ率も予想の2.6%に対し2.4%となり、ボーナスを含む賃金上昇率(緑)とほぼ同率となっている。

英中銀予想によると、賃金上昇率は3%台に向けて穏やかに上昇していくはずであったが、実際の結果は今ひとつ迫力にかける。英中銀が利上げに動くためには、インフレと賃金見通し共に、改善が続かない限り、難しくなる。百歩譲って8月に利上げしたとしても、「次の利上げ時期」を巡り、新たな議論が始まるかもしれない。その意味で、8月2日のカーニー総裁記者会見では、ポンドのボラティリティーが高まるリスクがあるため、ポンドのポジションを持っている方はポジション管理には今まで以上に気をつけて欲しいと思う。

データ:英統計局(ONS)

【ここからのポンド】

英国の「白紙離脱」の可能性を織り込む形で、先週はポンドが対ドルで1.30を割れる局面があった。それを受け、ポンド実効レートも黄緑のサポートを一気に抜け、下落中となっている。ここからの動きとしては、黒いサポートラインが通る76くらいまでは視野に入れても良さそうだが、そういう動きになるには、新たなBrexit関連ニュースが出てくることが考えられる。

データ:英中銀ホームページ

最後に英ポンド円の週足チャートにベガス・トンネル(144/169 EMA)を乗せてみた。先週は英国の白紙離脱の可能性や解散・総選挙などの噂で、ポンド安主導で、英ポンド円も下落した。

今週は、月末に開催される日銀金融政策決定会合で、長期金利目標の柔軟化などについて議論するという噂により、円高主導で、英ポンド円の下落となっている。

ここから8月2日のSuper Thursdayまでは、Brexit関係で悪い/良いニュースが出てこない限り、ポンド安は一旦穏やかになると考えられる。しかし、日銀関連報道で「円高」に傾けば、英ポンド円は若干の下落余地が出てくるだろう。

チャート:筆者作成

ひとまず、英ポンド円はチャート上のピンクの下降チャネル内での動きとなり、当面はベガス・トンネルが通る150ミドルを上限、下限は145円レベルを意識して行こうと考えている。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年7月25日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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