スペシャル・トレンドレポート

カーニー総裁講演で「8月利上げ説」が一気に台頭(松崎 美子氏)

2018年7月11日

週末に驚くニュースがイギリスから飛び込んできた。7月6日に英首相公式別荘で開催された閣僚会議で合意されたはずのBrexit報告書内容について、どうしても納得がいかないと首相に直談判したデービスBrexit担当相が、突如として辞任を発表したからである。

今回のコラムでは、英国の政局動向を念頭に置き、マーケットで囁かれている「英中銀8月利上げ説」の可能性について考えてみたいと思う。

予想外に強かったサービス業PMI

7月4日に発表された6月分英サービス業PMI。

5月54 → 6月予想 54 → 結果 55.1
8ヶ月ぶりの強い数字

このペースで行けば、第2四半期GDPは、前期比+0.4%となる可能性
(第1四半期は前期比+0/1%)
https://www.markiteconomics.com/Survey/PressRelease.mvc/b47dc6e053404819b7485cc100f7fb41

個人的には、6月にハリー王子のロイヤルウェディングがあり天候にも恵まれたため、サービス業PMIが好調であるのは、ある意味当たり前のように感じるが、何れにしてもQ2GDPの数字が改善されれば利上げ説が浮上してくるのは当然かもしれない。

カーニー英中銀総裁講演

予想外に強いPMIが発表された翌日、カーニー総裁は訪問先の英北東部:ニューキャッスルで講演を行い、8月の利上げについてかなり前向きなトーンを見せた。

カーニー総裁講演内容(2018年7月5日)

総裁の講演の中でも特に気になった発言は、以下2点。

「Domestically, the incoming data have given me greater confidence that the softness of UK activity in the first quarter was largely due to the weather, not the economic climate.
英国関連指標を見る限り、Q1の経済停滞は悪天候によるものであると判断でき、経済そのものには影響ないことが見受けられる。」

「Overall, recent domestic data suggest the economy is evolving largely in line with the May Inflation Report projections, which see demand growing at rates slightly above those of supply and domestic cost pressures building.
総合すると、英国経済は5月の英中銀インフレーション・レポートの予想通りの展開となっている。需要と供給の関係は、若干の需要増であるため、ジリジリと価格上昇プレッシャーが出てくることが予想される」

予想以上に強い数字と、この総裁発言を受け、8月2日に開催される英中銀Super Thursdayで利上げの可能性を織り込む動きが出始めている。この日は3ヶ月に一度のマクロ経済予想である四半期インフレーション・レポートが発表され、同時に総裁・副総裁による記者会見も開催される。利上げをするには絶好のセッティングとなっている。

現時点での8月利上げ織り込み度

執筆時における8月2日利上げの織り込み度は、80%であり、利上げが実施される可能性が高い。

GDP発表方法の変更と8月2日のタイミング

英国統計局は7月からGDP発表方法の変更に動く。具体的には、今まで「速報値・改定値・確報値」と3種類のGDP値を発表していたが、今後は「速報値と改定値」の2回のみ。

ただし、英国経済の78%を占めるサービス業に関しては、7月から「毎月発表」するという方式に変更した。
https://www.ons.gov.uk/economy/grossdomesticproductgdp/articles/introducinganewpublicationmodelforgdp/2018-04-27

主要国の中でも英国は速報値の発表のタイミングが早いことでも知られていた。この表を見るとわかるが、当該期が終了して25日後に速報値を発表していた英国。それに比べ、欧州各国や日本は約45日後。カナダに至っては、2ヶ月後という遅さである。

そのため、数字の精度を上げる意味でも発表日数を25日後から約6週間後に変更し、一番大事なサービス業に限り、毎月発表という形になる。

チャート: 英統計局(ONS)ホームページ

この変更により、8月2日のSuper Thursdayまでに第2四半期GDP速報値は、発表されていない。その点がやや不安であるが、カーニー総裁は上述の講演での質疑応答の場で、「8月の理事会に向けて、MPCはすでに必要な経済指標を入手している。」とも発言している。

【ここからのポンド】

今週の英国では政治的に大きな動きがあった。まず月曜日にデービスBrexit担当相が突然辞任を発表し、翌日にはジョンソン外務相が続いて辞任を発表。この突然の辞任劇を受け、ポンドは乱高下した。

1週間の間に2人の重量級の閣僚辞任を受け、Brexit強硬派の辞任が今後も続き、メイ政権が崩壊するのではないか?という懸念が台頭したが、現在のところその気配はない。ジョンソン氏の辞任直後に保守党の週一回の会合が開催されたが、心配されたメイ首相引き摺り下ろしの動きは出ず、今回の辞任劇によるポンドへの影響は目先限定的とも言える。

それを踏まえて今後のポンド/ドルの動きについて考えた場合、

・政治リスクが後退し、8月の利上げの可能性を織り込みに行く → 1.35〜36台
・英国のBrexit報告書をEUが受け入れず、グズグズした時期が続く → 1.30-1.33レンジ
・メイ首相に対するリーダーシップチャレンジ、あるいは内閣不信任案決議が9月末の保守党年次党大会までに起き、メイ首相が辞任。新たな解散総選挙の可能性が出てくる → 1.25/27台

現時点では大雑把であるが、こんなイメージを描いている。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年7月11日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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