スペシャル・トレンドレポート

「豪ドル/米ドル」下値余地拡大で0.65米ドルへ向かうか!?(西原 宏一氏)

2018年6月27日

米中貿易戦争の加熱を発端にCommodityと上海株が下落、じわじわとrisk offへ

知的財産権侵害をめぐり、6月16日に米トランプ政権が500億ドル相当の中国製品に25%の制裁関税を適用すると発表。
これに対し、中国の習近平政権は直ちに同額の報復関税を同日から実施すると応酬。
すると、6月19日には、米国トランプ大統領はさらに中国からの2,000億ドル規模の輸入品に追加制裁を発動すると警告。
米中の貿易摩擦は徐々に米中貿易戦争の様相を呈し、事態は悪化。
日経平均株価は6月20日に22,167円まで下落。

米中貿易戦争が現実化する中、代表的な商品先物指数のひとつCRB指数は5月を高値に大きく下落に転じ、MACD PREDICTORを下抜けた。(下図参照)

チャート:筆者作成

こうした商品市況の動きに呼応して中国株は軒並み急落。
注目は上海総合指数。(下図参照)

チャート:筆者作成

米中貿易摩擦の悪化により、6月22日の週の上海総合指数は、急落し2,889で引けた。
これは2016年9月以来の3,000割れである。
このまま上海総合指数が下げるようだと、市場参加者には2015年のチャイナ・ショックの記憶が蘇ってくる。

上海総合指数のチャイナ・ショック後の安値は2,655で、こうした数字が意識されてくると中国株は大きく崩れる可能性が出てくる。

中国株の詳細を見ると、上海・シンセンの人民元建てA株市場に上場する2,803銘柄のうち2,075銘柄が6月19日時点でチャイナ・ショック後の2016年1月末水準を下回った。これは米中貿易戦争が中国株にも大きく影響していることを示している。

一連の商品指数の下落、アジア株の反落という流れで連想される通貨は、中国経済とのつながりが深い豪ドル。

米中関係が悪化する中、豪国債は米国債よりも大幅に値上がり、豪ドルの下値余地が拡大

オーストラリア経済は中国経済とのつながりが深いため、米中貿易戦争がエスカレートすると、豪ドルが真っ先に値を崩す。
加えてもう一つ、豪ドルを軟調にしている要因は、オーストラリアと米国の10年債利回りの行方である。

下図は、「豪ドル/米ドル」(AUD/USD=緑色=右軸)と、オーストラリア10年国債と米10年国債のスプレッド(利回り差=橙色=左軸)との相関性である。

チャート:筆者作成

オーストラリア国債は、米中の応酬が激しさを増すたびに米国債より大幅に値上がり。(オーストラリア国債利回りは低下)米国とオーストラリアの10年物の利回り格差は1999年以来の大きさとなる、マイナス0.244BP(ベーシスポイント=左軸)に達している。スプレッドがマイナスということは、米国債の利回りの方が、オーストラリア国債の利回りより高いことを示しており、豪ドルが高金利通貨とは言えなくなってきた。

よって、このオーストラリア10年国債と米10年債のスプレッドの動きから想定すれば、相関性の高い、「豪ドル/米ドル」の上値は、極めて限定的だと想定する。

加えて注目は「豪ドル/米ドル」の直近の動きが2001年来からのサポートライン(緑色)に接近しており、ここを下抜けると、2001年からのサポートを割り込み本格的に下げる動きとなる可能性が高まる。

本稿執筆時点での「豪ドル/米ドル」は、0.7440米ドルレベルで推移。
下図は「豪ドル/米ドル」の月足で、2001年から現在まで動きをバンドで示しているが、前述のように、直近はバンドの下限である2001年からのサポートラインを割り込むかが注目である。

チャート:筆者作成

仮に今月、「豪ドル/米ドル」が0.7300米ドルより下で引けると、この2001年来からのサポートをクリアーにブレイクすることとなり、「豪ドル/米ドル」の下値余地はかなり拡大することになる。

更に、現在のレベルよりも「豪ドル/米ドル」が下落しているという相場環境は、商品市場はさらに軟調、アジア株は値を下げていると考えられる。
つまりrisk off環境が続くということであるため、「米ドル/円」も反落する可能性が高くなり、豪ドルは対円ペアである、「豪ドル/円」でも80円を割り込み78円に向けて、じり安の展開になっているのではないか。

「豪ドル/米ドル」、長期サポートラインを割り込めば、0.65米ドルへ

米中貿易戦争に端を発する豪ドルの下落をテクニカル分析の面から見てみよう。
下図は、「豪ドル/米ドル」週足ディナポリ・チャートである。

チャート:筆者作成

「豪ドル/米ドル」週足は、昨年12月3日安値0.75008米ドル(橙色)と、今年1月26日高値0.81331米ドル(橙色)のレンジだったが、今年5月に、昨年12月3日の安値0.75008米ドルを下抜け、5月9日には0.74125米ドルまで下落した。これでテクニカルからは週足のレンジを下抜けて「豪ドル/米ドル」は下げる可能性が出てきた。
また5月にレンジを下抜ける前から、週足のディナポリは3本の移動平均線の下側となり、またディナポリMACDも下側で下げる動きとなっている。
5月9日安値の後は少し戻して、6月6日には0.76758米ドルの戻り高値をつけた。しかしディナポリ週足の25*5DMAを上抜けることは出来ず、チャートは引き続き下方向を示している。そして直近の6月19日には、この5月9日安値0.74125米ドルをさらに下抜け、0.73457米ドルまで下落し、安値更新して、「豪ドル/米ドル」は下落の動きが鮮明となった。
「豪ドル/米ドル」は今年の一連の動きから、1月26日高値、5月9日安値、6月6日高値でフィボナッチ・エクスパンション(黒色)して下値目標値を計算すると、 COP(61.8%)=0.72305米ドル、OP(100%)=0.69552米ドル、XOP(161.8%)=0.65099米ドルとなり、0.65米ドルへ下げる可能性が出てきた。

7月6日には、米国の中国製品へ最初の制裁関税500億ドル分が発効する予定である。
7月以降の米中貿易戦争の行方と、低迷を続ける商品市場、3,000ドルを割り込んだ上海総合指数。これに連動し、続落している「豪ドル/米ドル」、「豪ドル/円」の行方に注目である。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年6月27日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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