スペシャル・トレンドレポート

ユーロを取り巻く環境と今後のユーロ(松崎 美子氏)

2018年6月21日

6月14日に開催された欧州中銀(ECB)金融政策会合では、予想外の時間軸政策が発表され、ユーロが大きく売り込まれた。その直後から、ドイツのメルケル首相を取り巻く環境が一気に悪化。結果として、「ユーロ/米ドル」はこれといった戻しもなく、1.15ドル台での推移となっている。

移民・難民問題

2014年あたりから、欧州各国が頭を抱えているのが、移民・難民問題である。最初はブルガリアとルーマニアからの「移民」の問題としてスタートしたが、最近は「難民問題」が一層深刻化している。

簡単に説明すると、移民とは、仕事を求めて他の国に移住する人を指し、「労働力の移動」となる。それに対し、難民とは、宗教/政治/人種/戦災などにより命がけで故国を離れる人たちだ。欧州で問題となっている難民の出身地は、中東・中央アジア・アフリカ諸国が多い。難民の場合は、国連が定めた難民条約に基づき、受け入れ国は食糧や居住地、衣服の提供が義務付けられる。

2015年だけでも欧州各国は100万人を超す難民を受け入れており、社会問題となった。さらに問題を複雑にしたのは、難民の中にテロリストが混在していた事実である。こうした理由もあり、難民を受け入れることに対しどこも消極的になっている。

ドイツのメルケル首相は移民・難民問題が始まった当時、人道的理由から受け入れに対し寛容な姿勢を示していた。最初は、ドイツの有権者もその姿勢を賞賛したが、その後の相次いぐテロを受け、難民受け入れに反発し始めたのである。

メルケル首相の難民政策が命取りになるのか?

先週金曜日、「ドイツ連立解消か?」というニュースが駆け巡った。調べてみると、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU党)と1949年から姉妹党として連携してきたバイエルン・キリスト教社会同盟(CSU党)が連立を解消するかもしれない・・・と書かれていた。どうしてこのタイミングで?と驚いて調べたら、ようやく納得した。

発端は難民受け入れに関する双方の意見の相違である。今年10月にはCSU党のお膝元であるバイエルン州で議会選挙が実施されるため、CSU党としては難民問題に寛容なメルケル首相と連立を組んでいたら、有権者にそっぽを向かれてしまうかもしれない・・・と考えたのだろう。

この問題を受け、メルケル首相は今週末に緊急難民サミットの開催を呼びかけたが、6月28/29日にEU首脳会談(EUサミット)が開催されるため、難民サミットは結局実現しなかった。CDU党とCSU党との間では「2週間の猶予期間」を設定し、月末のEUサミットの場で話し合う。もし、ここで何らかの合意が出来なければ、メルケル首相の退陣要求が出てくることが考えられる。

イタリアは反移民政権

3月の総選挙から3ヶ月立った今月、ポピュリズム政党である「5つ星運動」と、反移民政策を掲げる「同盟」とが連立政権を組んだ。この「同盟」という党は、以前「北部同盟」と呼ばれたイタリア北部で勢力を持った地域政党である。しかし、ヨーロッパの移民・難民問題が深刻化するにつれ、勢力基盤がどんどん拡大し、いまやイタリア全土で移民排斥政党として知られている。

イタリアに入国する難民は、主に北アフリカから命からがらゴムボートに乗ってきた人たちがメインであるが、サルビーニ副首相兼内務相(同盟の書記長)はアフリカ難民が乗った救助船の上陸を拒否。これを非難したフランス政権に対し、同じ週に予定されていた新首相の訪仏を急遽キャンセルするという手段を取っている。

2015年に設定された「ダブリン規則」によると、移民や難民は一番最初に足を踏み入れたEU加盟国が各手続きを行なうとされ、地中海に面するイタリアやギリシャの負担が重くなっている。今月末のEUサミットで難民問題に対する解決策を望んでいるのは、ドイツのメルケル首相だけではなさそうだ。

【ここからのユーロ】

6月14日に開催された欧州中銀(ECB)理事会では、現行の金利水準は「早くても2019年の夏の間、継続することが予想される」と、具体的な時期が指定された。この会合前は、2019年6月に最初の利上げが実施される可能性が6~7割程度織り込まれていたため、ECBからの発表を受け、ユーロは大きく下落。

この2日前にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、政策金利の誘導目標を25bps引き上げ、1.75~2%とした。同時に発表された3ヶ月に一度のマクロ経済予測でのドット・プロット(金利予測分布図)の内容は以下の通りとなる。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20180613.pdf

筆者作成

アメリカ

2019年末時点での米国の政策金利中央値は、3.125%

ユーロ圏

ECBの主要政策金利であるレフィ金利は、2019年末でも0~0.1%がせいぜいか?

つまり、あくまでも予想通りに事が運んだという前提で考えた場合、今後18ヶ月くらいの間で、米欧政策金利差は3%程度に拡大する計算となる。そうなると、有象無象のキャリー取引的なフローが入ってくることも考えられるだろう。

それでは今後の動きをチェックするために、ECBが発表しているユーロ実効レートを見てみよう。目先のターゲットをして、96あたりが最初のサポートとなりそうだ。

チャート:ECBホームページ

次は「ユーロ/米ドル」と「ユーロ/円」それぞれ週足チャートを見てみよう。まず最初は「ユーロ/米ドル」週足にベガス・トンネルの乗せたチャートであるが、1.1663/96ドルを通るトンネルの上にプライスが抜けない限り、過去のサポート/レジスタンスが集まる1.1510ドル台/1.14ドルミドルを視野に入れようと考えている。

チャート:筆者作成

「ユーロ/円」週足にも、ベガス・トンネルを乗せてみた。こちらは、ちょうどベガス・トンネルを下に抜け始めたところだ。今後、ろうそく足が128/128.15円を通るトンネルの上に戻らない限り、124~125円台をターゲットに考えている。

チャート:筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年6月21日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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