スペシャル・トレンドレポート

「ユーロ/円」、イタリア・スペインの政局混迷で、120円に下落?!(西原 宏一氏)

2018年5月30日

5年前のバーナンキショックと同日(5/23)に、クロス円が暴落。「米ドル/円」は、111.40円でトップアウトし、トレンド転換で下落局面入り。

5月になると例年「SELL IN MAY」が警戒されるようになる。ただ、本年は米朝関係の緊張が緩和されたこともあり、「SELL IN MAY」の相場は到来しないというのがマーケットのコンセンサスになりつつあった。

ただ、アルゼンチンやトルコといった新興国通貨の「fragile 2」※1が急落している時に、risk off(=株安、ドル高、円高)にならないことに違和感をもっていたトレーダーは自分も含め少なくなかった。

それが5年前の2013年5月23日に「バーナンキショック」で一挙にリスクオフが襲来した日と同じ5月23日、東京市場から「株安、ドル高、円高」のrisk off相場の再来となった。

※1.「fragile 2」とは、米国の金融正常化に伴い、下落が進みやすい2通貨の総称。(脆弱な2通貨:ブラジルレアル・トルコリラ)

2018年5月23日、日経平均、ドル円ともトップアウトし下落局面入り。

アルゼンチンペソの下落から始まってトルコリラに飛び火し、新興国通貨が急落したことで、5月23日日本時間早朝、本邦FX業界での「トルコリラ/円」の損切りがトリガーされた。これで「トルコリラ/円」が5分で1円急落。

2013年5月23日の「バーナンキショック」も、新興国通貨の急落が、risk offのきっかとなったが、今回も「fragile2」の一角であるトルコリラの急落がきっかけでリスクオフへ。

「米ドル/円」は3月最終週から8週連続で陽線引けして急騰しており、これはトランプラリーの6週連続を超えていた。つまり、「米ドル/円」は極端に買われ過ぎ状態になっていたことからドルの反落も急激となった。

「米ドル/円」は5月21日の高値である111.40円レベルから一気に一時109.00円割れまで急落。日経平均も23,000円がサポートできず、22,000円台前半まで急激に値を下げた。「米ドル/円」は、5月21日に到達した111.40円が当面の高値で、下落局面入すると考えている。

加えて今回のレポートでは「米ドル/円」に加えてもう一つ注目の通貨ペアを紹介したいと思う。その通貨ペアは「ユーロ/円」。

イタリア、スペインの政局不安

まず、4月下旬から下げ足を速めている「ユーロ/米ドル」だが、イタリアの政局が混沌としていることが、ユーロの足を引っ張っている展開。イタリアは3月に総選挙を実施ししたが、過半数を持つ政党はなく、連立交渉が混沌として政権が決まらずにきた。それがここにきて、ポピュリズム政党で左派が支持する「五つ星運動」と、極右政党の「同盟」が、反EUの主張の元に連立政権を発足することになりそうだ。

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イタリア政局を巡っては、ポピュリスト政党の議員が欧州中央銀行(ECB)に債務減免を求めることが検討されていると述べて懸念が広がり、イタリア国債が下落。クロス取引でユーロが売られた。

出所:Bloomberg

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イタリアでは、mini-BOT(政府債務支払いに使う少額ノート)の発行など、EUとの軋轢を生むような報道が多くなっている。

結果イタリアの対独スプレッドが拡大していることが「ユーロ/米ドル」の下落を誘引している。また格付け会社ムーディーズもイタリア国債を引き下げ方向で見直すと表明した。

加えて、スペインのラホイ首相に対し、解散総選挙を実施しなければ不信任動議を支持する用意があるとスペイン最大野党が表明したことで、スペインの政局も混迷。イタリアに加え、スペインの政情も混乱しつつあり、これがユーロを更に押し下げる要因となっている。

ユーロドルは1.2555ドルでトップアウト、ユーロ円は120円への下落過程に。

対ドル、対円でのユーロの動きをテクニカル分析で検証してみた。

【「ユーロ/米ドル」月足】

チャート:demarkチャートより筆者作成

上記チャートを見ると、「ユーロ/米ドル」の1.2450ドル~1.2550ドルレベルは極めて重要なレジスタンスであることがわかる。

注目点は3つ。
①200ヶ月移動平均(バンド内の赤ライン)。
これまでも2005年、2010年、2012年など、下落局面でもサポートとして何度も機能していた200ヶ月移動平均線(200SMA)が、今月位置していたのが1.2497ドルだ。今回はこの200ヶ月移動平均線が1.03ドルからの上昇局面のレジスタンスとなっている。
②フィボナッチ・リトレースメント。
2008年7月の高値1.6038ドルと2017年1月の安値1.0341ドルの38.2%が1.2517ドルで、前述200SMA付近となる。この38.2%もユーロドルの上値を抑える展開となっている。
③1.0341ドルからのサポートライン
直近の2017年1月の安値(1.0341ドル)からのサポートラインが下方にブレイクした。4月まではこのサポートラインが「ユーロ/米ドル」の下値をサポートしていたが、今月このラインを下へブレイク。

結果、今年2月の高値1.2555ドルでトップアウトした「ユーロ/米ドル」は、イタリア、スペインの政局不安を背景に下げ足を速め、5月25日には一時1.1646ドルまで急落した。

前述のように「米ドル/円」が反落している環境下、「ユーロ/米ドル」の上値も重い展開であれば、注目は当然「ユーロ/円」ということになる。

【「ユーロ/円」週足】

チャート:demarkチャートより筆者作成

「ユーロ/円」はBrexitでの急落で到達した安値が109.57円。(2016年6月24日)。
そこからフランス大統領選や、ECBのテーパリングの期待などを背景に上昇を続け、今年2月2日に137.50円をつけて反落。

筆者が使用しているdemark indicatorを使用すると、*9-13-9(赤丸の数字)を点灯しており、トップアウトしていると想定できる。
(*demark indicatorではset up とカウントダウンの組み合わせで、9-13-9という流れの完了をもって、相場の終焉とする。)

では下値のメドをフィボナッチ・リトレースメントを使って探ってみる。
計算に使う高値は137.50円(2月2日、2018年)と安値は109.57円(6月24日、2016年=Brexit)すると、下値のメドは、まず38.2%の126.83円、50%であれば123.54円となり123円が目標値として出てくる。

また、YJFXの週足ディナポリ・チャートがこちら。
ディナポリ・チャートは3本の移動平均線と、MACD、ストキャスティックスで構成されているが、週足は3本の移動平均線の下側となり下落を示唆。また週足MACDも下側で下落の流れ。ストキャスティックスは底値圏に入りつつあり、多少の戻しが起こったとしても週足が下落の流れにあることを示している。

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成

そこで、私の使うdemarkチャートとはブローカー(FX会社)の関係で若干レートが違うが、高値は同じ今年の2月2日で137.497円。その後の3月23日安値(128.948円)と、戻り高値の4月24日(133.479円)の3点で、フィボナッチ・エクスパンションして下値のメドを計算してみる。最初の目標値であるCOP(contracted objective point=61.8%)は128.196で、現在はここを下抜けた程度。この下には、通常の目標値となるOP(objective point=100%)が124.930円、そして最大目標値となるXOP(expanded objective point=161.8%)の119.647円があり、120円レベルが視野に入ってくる。

結果、「ユーロ/円」は、前述フィボナッチ・リトレースメント50%の123円、そしてフィボナッチ・エクスパンションXOPの120円に向けて続落すると想定している。

イタリア政局の混乱に加え、スペイン政局も混迷。大きな調整もないまま、下落トレンドが徐々に鮮明になってきている「ユーロ/円」の動向に注目。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年5月30日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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