スペシャル・トレンドレポート

イタリア新内閣誕生に向けて!(松崎 美子氏)

2018年4月11日

3月4日に実施されたイタリア総選挙。それから1ヶ月が過ぎ、やっと組閣に向けた動きが始まった。イタリア総選挙については、3月8日の同コラムでもご紹介したが、今回の記事はそれ以降に起きた動きと、予想をまとめてみたい。

イタリア総選挙結果

復習の意味も含め、総選挙結果を最初にお伝えしたい。第一党は「ポピュリズム政党の5つ星運動」、最大議席を獲得したのは「中道右派連合」である。

動き始めたマッタレッラ大統領

欧州は3月末からイースター(復活祭)のため4連休となり、連休明けの先週水曜日、2日間に及ぶ「組閣準備会議」を大統領が招集した。初日は、議会議長や上院代表者などの間で話し合いが行なわれたと伝えられている。

2日目の木曜日は、下院得票率上位4党(5つ星運動、同盟、フォルツァ・イタリア、民主党)それぞれの党首が大統領に呼ばれたが、5つ星運動だけが午後、残りの3党の党首たちは、昼時間に大統領と話し合いの場を持ったと伝えられている。

2日間の協議を終えた大統領は、「話し合いでの感触では、どの党も安定した連立内閣を樹立するだけの自信が見られなかった。」と語っており、第一党の5つ星運動に組閣要請をするのか?中道右派連合に託すのか?それについての言及は避けた。

結果として、今週再度大統領を交えて各党の話し合いが行なわれるが、交渉成立までに少なくとも数週間、長ければ数ヶ月かかるという予想が一般的となっている。

最悪の場合は、新たな総選挙の実施という選択になるが、同盟以外の党はそれを望んでいないため、交渉成立に時間がかかればかかるほど、党のスタンスが緩和されることが期待されている。

5つ星運動と同盟、それぞれの考え

得票率上位2党となった5つ星運動と同盟、それぞれの党首の考えは以下の通りである。

【5つ星運動:マイオ党首】

大統領との話し合いを終えたマイオ党首は、「5つ星運動は、民主党か同盟、いずれかとの連立を希望。大統領から正式に組閣要請を受けた場合、この2つの党との話し合いを希望している。ベルルスコーニ元大統領率いるフォルツァ・イタリアと組む気は一切ない。」と発言。

このラブコールに対し、民主党は「出来るなら、最大野党として戦っていきたい。」と述べているが、5つ星運動と絶対に組まないとは言っていない。

【同盟:サルビーニ党首】

サルビーニ党首は、「同盟としては、中道右派連合内閣樹立を念頭に置いている。」と語り、早速週末の4月8日に中道右派連合の3党(同盟、フォルツァ・イタリア、イタリアの同胞)の党首が集合し、団結の強さを見せ付けた。

しかし、もし組閣に失敗するような事態になれば、もう一度総選挙を実施することに異論はない。」と語っている。

5つ星運動との連立については即答を避けているが、もし組んだ場合、同盟が第二党となるため、5つ星運動の要求を聞かなければならなくなることを嫌っているようだ。ただし、「絶対に組まない」とも言っておらず、可能性としては完全に除外できない状態である。

どうしてイタリア新政権誕生を急ぐのか?

イタリア新政権誕生を急ぐ理由は、いくつかあるが、ここでは同国の銀行が抱える問題に焦点を当ててみよう。

【銀行の不良債権処理の遅れ】

ユーロ加盟国の中で最高額の不良債権を保有しているのが、イタリアの銀行(緑枠内)。これは、2016年の調査結果だが、銀行ローン全体の15.3%が不良債権化し、その額はなんと2,760億ユーロとなっており、EU加盟国中最悪!

チャート:欧州議会 「EU加盟国の銀行が保有する不良債権について(2016年)

【Brexit後の欧州系銀行による自己資本強化の可能性】

不良債権処理の遅れを私が気にしている最大の理由は、英国がEUから離脱し、EU法の適用を受けなくなった場合、過去に英国法に基づいて発行された債券(主に社債)が、自己資産に含まれなくなる可能性が浮上したからだ。

EUの銀行は、域内共通の破綻処理制度である銀行再建・破綻処理指令(BRRD)45条で規定されたベイルイン適格負債の最低基準(MREL Minimum requirement for own funds and eligible liabilities)を順守することが義務付けらている。これは、金融機関が破綻した際の損失吸収力や資本再構築能力の向上を目的として、金融機関に一定の自己資本や適格債務の維持を求める内容となっている。

ここで問題となるのは、自己資本の一部としてEUの銀行が保有する社債などで、英国法に基づいて発行されたものは、その資格を失うリスクが浮上したからである。英国法で発行された債券の総額は1,000億ユーロにのぼり、EUの銀行が保有する債券総額の10%に匹敵する。

単一破綻処理委員会(SRB Single Resolution Board)によると、もし英国法の債券の取り扱い方が上手く行かなかった場合、一番リスクを抱えているのは、イタリア・ドイツ・フランス・フィンランドの銀行とも発表している。

それもあり、Brexit決定後にこの問題で上手い解決方法が見つからない場合、既に不良債権で傷み脆弱性を抱えたイタリアの銀行は、新たな傷を負うことになり、もし国が公的資金を注入するとしても、既に政府債務残高が対GDP比で132.1%と非常に高い数字を記録しているだけに、イタリアの前途は多難と言えるだろう。

チャート:欧州統計局 政府債務報告書(2017年7月20日)

ここからのマーケット

2017年春のフランス大統領選挙でマクロン大統領が誕生した瞬間から、「ポピュリズムの後退と、アメリカと英国の次に金利の正常化に移行する国はユーロ圏」というテーマの下に、ユーロが買われてきた。しかしここにきて、若干息切れ相場にも見える。

そこで私が最近気になっている通貨ペアは、ユーロ/ポンド。週足チャートだが、水色とピンクそれぞれのハイライトが重なったレベル(0.8720~0.8810/20台)で売り、0.8810/20が上に抜けたら損切り。

利食いのターゲットは、ベガス・トンネルが通る0.8431/8480だが、このターゲットは毎週若干変化するので、注意が必要だ。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年4月11日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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