スペシャル・トレンドレポート

イタリア総選挙を分析!連立政権次第で波乱も?(松崎 美子氏)

2018年3月8日

昨年9月の総選挙以来、ドイツでは約半年ぶりに第四次メルケル政権の樹立に漕ぎ着けた。しかし、一難去ってまた一難。今度はイタリア総選挙結果が欧州に暗い影を落とすことになりそうだ。

イタリア総選挙結果

今回のイタリア総選挙は、昨年10月に採用された新選挙制度により実施された。これを執筆している時点で、議席の3分の2を占める比例代表制の党別議席数は確定したが、3分の1を占める小選挙区の数字は、連合の数字のみで、党別の数字は出揃っていない。そのため、議席配分のチャートや得票率は、各連合の数字となっている。

データ: イタリア内務省ホームページ

選挙結果を分析すると

まだ最終結果が出揃っていないが、現時点で判明した事実は以下の通りである。

  • 単独過半数を獲得した連合/政党は、なし
  • 第一党は、ポピュリズム政党である「5つ星同盟」
  • 最大議席数を獲得したのは、「中道右派連合」
  • 伝統的2大政党である民主党(PD)とフォルツァ・イタリア(FI)による大連立政権の夢は消えた。両党あわせても、得票率は32.73%であり目標の40%以上に届かず
    (5つ星運動は、単独で32.64%)
  • 伝統的2大政党連合制度は崩れ、3大連合/政党という結果へ
  • 投票した有権者の50%が、ポピュリスト政党(5つ星運動)と、反ユーロ政党(同盟=旧北部同盟)の2党に票を入れた
  • レンツィ元首相率いる民主党(PD)は大きく後退

ここから伝わるメッセージは、反体制派の勝利であり、私が住む英国でのBrexitや、アメリカでのトランプ大統領誕生の時と同じ印象を受けた。そして、今後誕生する政権にもよるが、イタリアはユーロ圏で3番目に経済規模が大きく、ユーロ創設メンバーでもあるため、いざなにか起きれば問題は深刻だ。

とりあえず、欧州中銀(ECB)の国債購入を含む量的緩和策(QE)が継続する間は、波風が立つとは考えていない。しかし、選挙公約を見る限り、どの連合が政権を取ろうが、今後イタリアの財政政策は歳出増となるため、EUの財政規制の順守は放棄か?その場合、ドイツはどういう対応をするのか?イタリア国債を購入するのは、ECBだけとなるのか?非常に興味深い。

連立政権の組み合わせ

現在マーケットが一番気にしているのは、マッタレッラ大統領が最初に組閣を要請するのは誰か?である。第一党となった5つ星運動に最初に声をかけるのか?或いは、最大議席数を獲得した中道右派連合か?未だはっきりしない。選挙後の最初の議会開幕は、3月23日(金)となっていて、大統領が本格的に組閣作業を要請するのは、4月上旬と言われている。

これは私の意見であるが、連立政権の組み合わせをいくつか挙げてみた。

1)中道右派連合政権

中道右派連合は是が非でも290議席を獲得したかった。というのも、290議席に達すれば、他の小政党と組んで316議席の過半数獲得が可能となるからである。しかし、結果は260議席に留まる。

この連合の最大の問題点は、反移民・反ユーロ・欧州懐疑派の「同盟(旧北部同盟)」の得票率が、ベルルスコーニ元首相率いるフォルツァ・イタリアを抜いたことにある。選挙前に、両党の間では得票率の高い政党が中道右派連合の首相を選出するという約束をしているため、もし大統領が組閣を要請すれば、同盟から首相を選出する運びとなる。

2)5つ星運動政権

得票率断トツ1位となった5つ星運動。グリッロ氏党首時代は、反ユーロ気勢をあげていたが、昨年9月に新しく党首となったマイオ氏は対欧州政策を大きく変更し、「ユーロからの離脱は、ない」と方向転換した。そして、同党首は選挙前に、どの政党とも連立は組まないと語っていたが、もしその気持ちが変わったのであれば、以下の連立の組み合わせが考えられる。

・5つ星運動と、中道左派の「民主党(PD)」との連立

今回の選挙で大敗を喫した民主党(PD)のレンツィ党首は、責任を取って辞任。しかし、ユーロからの離脱を公約に挙げていない5つ星運動に対する連立相手として、民主党(PD)を推す声が出ている。

・5つ星運動と、中道右派連合の「同盟」との連立

共に欧州懐疑派という共通点があるため、もしこの連立政権が誕生した場合、欧州統一に大きな影を落とし、ユーロは急落するだろう。

3)政権樹立に失敗し、あらたな選挙を実施

どの連合/政党も過半数をクリアーしていないため、連立協議に入るが、最終合意が取り付けられず、マッタレッラ大統領は新たな総選挙を呼びかけることも可能性として残る。

ここからのマーケットについて考える

まず最初に、今回のイタリア選挙により、ユーロは売られるのか?連立政権が誕生しない限り、きちんとした答えは出せないが、いまのところは無風だと考える。理由は2つ。まず、ECBが国債を含む量的緩和を継続する限り、イタリア国債の利回り(長期金利)が急騰する可能性が低いから。2つめは、欧州懐疑派の2党:5つ星運動と同盟はともに、「ユーロ離脱の国民投票は実施しない」と語っているからだ。

たぶん今後もユーロは長期金利を見ながら動くだろう。そのため、連立合意に時間がかかりすぎたり、財政支出の大きい政党が政権を握った場合、長期金利が上昇し、ユーロの頭を押さえることになるだろう。ちなみに、過去15年間にイタリアの政権は、内閣不信任または総選挙で合計16回、政権交代が起きている。新政権誕生に掛かった日数は、単純平均 31日。総選挙後の新内閣誕生までは、平均 51日となっている。もし、大統領が4月上旬から組閣作業を呼びかけた場合、早くて5月上旬。平均で6月中旬くらいまでかかることになる。

目先のユーロは3月8日(木)のECB理事会からの発表内容次第だが、今回は、「ややタカ派的内容」となる可能性が指摘されている。

1月25日(木)理事会声明文より

ECB金融政策会合声明文 2018年1月25日

赤線を引いた部分の「資産購入プログラムは、月額300億ユーロのペースで、2018年9月末まで、必要に応じては、それ以降も延長」のうち 、「必要に応じては」を削除するという意見である。もし、本当に削除されれば、ユーロ上昇に繋がる。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年3月8日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について松崎美子氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権はワイジェイFX株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

関連する記事

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションならヤフーグループのYJFX!
ワイジェイFX株式会社はヤフー株式会社
(東証一部上場 4689)のグループ企業です。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

YJFX! from Yahoo! JAPAN