スペシャル・トレンドレポート

3/2メイ首相演説に注目!Brexitを巡る政治危機も?(松崎 美子氏)

2018年2月28日

2018年に入ってからというもの、英国のEU離脱(Brexit)交渉に関する話題があまり表に出てこない。しかし、水面下では遅くても3月下旬から始まるであろう「貿易交渉」に向け最後の調整期間に入ったようだ。

今回のコラムでは、Brexitを巡る新たな政治危機の可能性も含め、ここからの英ポンドにどう影響するのか、考えてみたい。

メイ政権、Brexit条件で合意か?

2月22日(木)、メイ首相は11名の閣僚のみをチェッカーズ(英首相公式別荘)に招き、与党:保守党としてのBrexit条件をまとめたと伝えられている。携帯電話の持ち込みも禁止された8時間に及ぶ会議となり、やっと閣僚全員の意見がまとまったようだ。

具体的な内容は、3月2日(金)に行なわれるメイ首相の演説を聞くまでわからないが、「欧州単一市場(シングル・マーケット)と関税同盟からは、正式に離脱する意向」であると言われている。

図表: 筆者作成

労働党の反逆

英国の政治は、日曜日に動く。これは英国に住んで初めて知ったことだ。まず日曜日午前9時、BBCテレビで著名な政治記者のアンドリュー・マー氏が司会をする「アンドリュー・マーShow」という政治ショーが放映される。そこに登場した政治家が爆弾を落とすことが多い。それに加え、英国では、どこの家庭でも自分の好きな新聞の日曜版を購入するが、新たな政治劇はこの日曜版でスクープされる確率が非常に高い。

今回も同様で、2月25日(日)に労働党のスターマー影のBrexit担当相が政治ショーに出演。そこで、「労働党はBrexit後も関税同盟に残ることを、正式に発表する」という爆弾を落とした。もともと労働党は、2020年末までの移行期間に限り、関税同盟に残留することは公表していたが、その後に関しては言及を避けていた。

もうひとつの驚きは、スターマー影のBrexit担当相は政治ショーで、「今回の関税同盟残留の決定は、保守党のEU残留支持議員との共同アプローチである。」と語ったことである。つまり、労働党は一部の保守党議員と共同戦線を張ると宣言したことになる。

この発言を受け、日曜日の報道はこの話題に集中した。そして、翌日月曜日には、労働党のコービン党首が正式に、関税同盟残留支持を訴えた。

今回の動きが非常に危険な理由

一部の保守党議員が労働党と共に戦う姿勢を見せたことは、メイ首相にとって大打撃だ。そして、これが首相失脚にも繋がるリスクであることは、意外と知られていない。

英国下院の議席数

英国下院の議席数は650。保守党は過半数以下の316議席であるため、北アイルランドのDUP党と閣外協力を続けながら、かろうじて326議席を確保している状態が続いている(青い星の合計)。

赤線を引いた北アイルランドのシン・フェイン党は、いかなる場合も議会での採決は棄権すると表明している。そして、議長と空席の1名ずつが投票しないので、実質的に議会の採決は残りの642人の議員によって行なわれている。

出典:英国議会ホームページ

一部の保守党議員が労働党と共に戦う場合

保守党内の強烈なEU残留支持議員は11~13人と言われていて、今回はこれらの議員が、関税同盟残留を賭け労働党と共に戦う姿勢を見せていると伝えらえている。

もし、明日にでも「英国のBrexit条件」について議会で採決が取られた場合、

保守党 316+DUP党 10+無所属 1-保守党EU残留支持議員 11 = 316票
労働党とそれ以外の党 315 + 保守党のEU残留支持議員 11 = 326票

結果として、メイ首相が決定したBrexit条件は、議会で否決される可能性が高い。

一部の保守党議員が労働党と共に戦うが、労働党からも造反が出る場合

労働党内部にも、ハードBrexit支持議員が、5人ほどいると言われている。もし、これら5人全員が関税同盟離脱側に廻った場合は、以下の通りとなる。

保守党 316+DUP党 10+労働党 5+無所属 1-保守党EU残留支持議員 11 = 321票
労働党とそれ以外の党 315+保守党EU残留支持議員 11-労働党 5 = 321票

ここでは、321対321で決着がつかない。たぶん、このうちの数名は予想外の投票をする可能性も残るため、こればかりは事前予想が難しい。

メイ首相の決断

これはまだ確認が取れていないが、3月2日(金)にメイ首相が行なう演説内容に対する議会での採決は、早くてもイースター休暇以降(4月上旬)、遅ければ5月まで実施を遅らせる意向で政府は動いているようだ。当然であるが、ここでメイ首相案(与党案)が否決されれば、解散・総選挙となるかもしれないからだ。

今この時点での総選挙は時間的にも政治的にも無理であるため、是が非でもそれを避けながら、メイ首相案の可決を目指すのであろう。

ここからの英ポンド

まずざっくりとした全体像を把握するため、英中銀が毎日公表している英ポンド実効レートをチェックしてみよう。現在は黄緑の上昇チャネルの中での動きだが、もう少し大きな時間軸で見ると、2016年9月から今に至るまでずっと黄色い四角の中での動きとなっている。個人的には四角の上限を抜けて80台に突入か?と期待したが、どうしてもBrexitの重石がのしかかってくる。

データ:英中銀ホームページ

最近の英ポンドの動きで一番動きを見せているのが、他でもない「英ポンド/円」だ。

週足にベガス・トンネルを載せてみたが、ピンクの12EMAがトンネルの上抜けに失敗し、頭が重い展開となっている。

チャート:筆者作成

次に日足にベガス・トンネルを載せてみると、日足がちょうどトンネルにサポートされている。

チャート:筆者作成

ピンクの12EMAがトンネルを上から下に抜けた場合、その時にローソク足が12EMAより下にあれば、売りシグナルとなる。それまでは、週足の12EMAが通る150.862円が今週の上限。下は日足トンネルの下限である148円Highが抜けるかどうかに注意したいと思っている。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年2月28日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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