スペシャル・トレンドレポート

「米ドル/円」上値は限定的!高ボラティリティで次は100円か?(西原 宏一氏)

2018年2月23日

1)通商問題再燃、「米ドル/円」は年初の6週間でターゲットに到達

昨年末こちらのREPORTで紹介した2018年の「米ドル/円」のターゲットであるが今年に入りわずか6週間で到達。
(12月22日公開=YJFX SPECIAL REPORT 2018年の「米ドル/円」は105円想定、通商問題再燃で米ドル安か?)
その背景はまず、前REPORTでも取り上げた米国通商問題の再燃。

2017年、つまり大統領就任1年目のトランプ大統領は、オバマケアの撤廃と税制改革に注力していて、昨年の彼の政策にはマーケットが懸念していたほど保護主義的な通商政策はみられなかった。

しかし2018年は米連邦議会の中間選挙を控えている。
そのため2018年のトランプ大統領は通商問題の解決に向け、早くも動き出した模様。

そして1月、まず口火をきったのがトランプ大統領によるセーフガードの発動。

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米政権、洗濯機と太陽パネルのセーフガード発動 アジア・欧州で反発高まる

トランプ米大統領は23日、洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名した。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は前日の声明で、トランプ大統領が家庭用大型洗濯機のほか、太陽電池および太陽電池モジュールに対し、輸入を制限するための関税を課すことを承認したと明らかにしていた。米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)発動はトランプ政権で初めてとなる。
こうした措置に対し中国と韓国などから批判が相次いでいるが、トランプ大統領はこれにより通商戦争が引き起こされるわけではないとし、「雇用が回復し、われわれは自分たちの製品を自ら製造することになる。こうしたことは長らくなかった」と述べた。

出所:ロイター

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トランプ大統領は、まず中国の太陽光パネルと韓国の大型洗濯機の米国への輸入に対し、圧力をかける。

次は1月のダボス会議で発せられたムニューシン米財務長官の米ドル安容認発言。

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「ドル安は貿易と機会に関連するため、もちろん、われわれにとって良いことだ」、「しかし長期的には、ドルの強さは米経済の強さと、第一の準備通貨であり今後もあり続けるという事実を反映するものだと思う」と付け加えた。

出所:Bloomberg

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この米財務長官の米ドル安誘導コメントは、欧州当局者を筆頭に各国から批判が集中したこともあり、その後トランプ大統領、加えてムニューシン米財務長官ご本人自ら訂正している。
ただ上記のコメントはムニューシン米財務長官が失言で発せられたものとは考えにくく、多くのマーケット参加者は米当局の米ドル安誘導の意図をくみとって、米ドル安が加速。
「米ドル/円」は節目である108.00円を割り込むと、昨年の安値である107.28円もあっさり決壊。
2月16日(金)には一時105.55円に到達している。

前述のように「米ドル/円」の105円台というのは筆者の昨年のレポートで紹介していたように、今年のターゲットレベル。

そのため、2月16日(金)を底に一旦は反発しているが、通商問題以外にもマーケットに大きな負荷がかかる材料もでてきていて、2018年に入っての「米ドル/円」は不安定な相場が続いている。

2)低ボラティリティ相場の終焉、「株安、円高再来」の可能性は高いまま

2月に入って、米株が急落したことに呼応して日経平均も一時3,000円もの下落を演じ、大きく値を崩している。

その要因はVIX指数の急騰。

ふりかえってみれば2017年は低ボラティリティ、つまり「動かない相場」という大相場が到来していた。

相場が動かなければ、金融機関に勤める参加者にとっては、「膠着相場に賭ける=具体的にはオプションをショートにして収益を上げる」という、大相場が到来していたわけである。
言い換えれば、低ボラティリティ相場というのは「低金利、そして株はジリ高」のゴルディロックス(※)状態。

(※ゴルディロックスとは、過熱もしすぎず、低迷もしていない状態のこと)

このマーケット環境においては、低ボラティリティに賭ける=VIX指数(恐怖指数)をショートにするという取引も人気を呼んでいた。

それが、いきなりVIX指数が急騰したことで、低ボラティリティにかけた多くの商品は短期間に価値がゼロとなり、マーケットは大きな痛手を負った。

2018年の1月は仮想通貨が大きく値を崩したことがマーケットの話題をさらっていたが、今回の低ボラティリティにかけた商品の値崩れは尋常ではなく、わずか数日で価値がゼロになるほどのものである。

これは金融マーケットでは大問題となっていて、日経新聞に、豊島逸夫氏がコラムでコメントをされているので、紹介したい。

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「長期では価値がゼロ」 VIX商品のリスク開示

今回の相場大変動の「主犯のひとり」扱いされている、米株相場の予測変動指数であるVIX指数。これに連動するETN(上場投資証券)について、驚くべきリスク開示が目論見書(プロスぺクタス)に書かれていた。
組成・発行したスイス大手銀行が作成したプロスペクタスの197ページに「このETNの長期期待価値はゼロである。もし、このETNを長期に保有すれば、投資額の全て、或いはかなりの部分を失う可能性がある」とのくだりがあるのだ。
このリスク開示文言を果たして購入者が読んでいたのか。商品マーケティングのプロセスで、このリスクが説明されていたのか。市場の一部からは疑問視する声もあがっている。

米CNBCも報道したので、銀行側のスポークスマンは「プロスペクタスで、本商品は短期投資向けに組成されたことが明確に語られ、プロの投資家のみに販売された。本商品はバイ・アンド・ホールド(買い持ち)の長期保有のための債券ではないことが明示されており、日計りに使われることを前提として組成された」と反論している。

こうしたなか、「規制当局は、プロスペクタスのこのような文言をなぜ認めたのか」との批判もあがっている。
一方、プロの投資家であれば「このようなデリバティブ(金融派生商品)のリスクは当然承知しているはず」との意見も根強い。
そもそも、このETNの価値がなぜ長期的にゼロになるのか。それは、信託報酬に相当する額の分だけ、ETNの基準価値が徐々に減ってゆく仕組みになっているからだ。

「VIXが過去最低水準」などと連日のように報道されたころは、このようなリスクが問題視されることはなかった。VIXをショートする、すなわち、市場の低ボラティリティに賭ける投資も、人気が急上昇した。

出所:日経新聞

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相場が動かなくなると、為替市場では、オプションを売ってプレミアムで収益を上げる。
一方「VIX指数をショートにする」のも基本は同じ。
低ボラティリティに賭けているわけなので、ボラティリティが高騰するとあっさり即死してしまう。

昨年(2017年)はフランスの大統領選や欧州のポピュリズム懸念、北朝鮮の有事リスクを筆頭にrisk offの要因は満載。
ただそうした環境下でも、マーケットのvolatilityは急騰することはなく、低金利と緩やかな株高が長期間続いていた。
結果、低ボラティリティにかける商品はコンスタントに収益を上げ続けていて、マーケットには今回のvolatilityの急騰で大きく収益を落としている商品がまだ数多く残存していると想定している。

本稿執筆時点では、いったんVIX指数も下がり、volatilityが低下していて、株価も安定を取り戻しているが、再びvolatilityが上昇すると、株価をもう一度大きく押し下げる可能性は濃厚。
その局面では円高相場が再来すると想定している。

3)一旦調整するも「通商問題の再燃、低ボラティリティ相場の終焉」から「米ドル/円」の上値は限定的、調整後、次は100円へ。

ではここで、「米ドル/円」の推移をテクニカルで確認しておく。
下記チャートは「米ドル/円」の週足。

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成

アベノミクスによりマーケットが活況を呈していた2015年6月に「米ドル/円」は125.86円という高値に到達。その後、この高値とトランプラリーの高値である118.66円を結んだ抵抗ライン(橙色)を形成していて、これが強烈なレジスタンスとなって機能している。
2017年の「米ドル/円」相場は再三にわたり、このレジスタンスブレイクにトライするものの全て失敗している。

一方、2016年11月の米大統領選当日の安値から引いたライン(空色)がサポートとしてワークしていて、2017年の「米ドル/円」はこのレジスタンス(橙色)とサポートライン(空色)に阻まれた形で、「米ドル/円」はじわじわと狭いレンジへと押し込まれていく。

それが2018年1月、このサポートライン(空色)が決壊して、「米ドル/円」は急落。
昨年安値の107.28円(緑色)をあっさりブレイクした「米ドル/円」は2月16日(金)には一時105.55円まで急落している。

繰り返しになるが、105円台というのは筆者も含め、多くのマーケット参加者が米ドル安の節目として意識してきたレベル。

そのため本稿執筆時点では107円台前半まで反発しているが、前述のように今年はボラティリティが高まっていて、株安が再燃すると、為替相場も呼応して円高相場が再来し、節目である105円を割り込む可能性も高まっている。

仮に105.00円を割り込むと次のサポートは100.00円となる。

2018年に入り、「米ドル/円」は一気に105円台まで急落し、現在は一旦の調整に入るも、ボラティリティが高まってきた「米ドル/円」は、再び105円割れを示現する可能性が濃厚。

ボラティリティの高まりにより、昨年の膠着相場から解き放たれ、値動きのよくなった「米ドル/円」相場に注目である。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年2月23日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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