スペシャル・トレンドレポート

Brexit貿易交渉の合意は?ここからの英ポンドを探る(松崎 美子氏)

2018年2月14日

2月8日(木)に開催された英中銀 Super Thursday。そこでは、今年第3四半期に予想されていた利上げが、早ければ5月に前倒しされる可能性が浮上し、英ポンドが上昇した。しかし、それも短命に終り、米長期金利上昇が発端となった株価急落の影響を受け、為替市場での各通貨の値動きも予想が難しくなってきた。

チャート: 筆者作成

今回のコラムでは、英中銀の金融政策に加え、Brexitを含む政治的な側面も含め、ここからの英ポンドについて考えてみたいと思う。

2月8日(木) Super Thursdayの振り返り

今回のSuper Thursday開催中、英ポンドが急騰した理由は2つあると考えられる。

今後の利上げ回数予想の増加

これは、今回のインフレ・レポートに載っていたチャートだが、黄緑の部分が昨年11月のインフレ・レポートでの予想。ピンクの部分が今回の予想となっている。

黄緑の予想では、今後3年間で2回の利上げを予想している(2018Q3と2020Q3)。しかし、今回は3回に増えていた(2018Q4、2019Q4、2021Q1)。

図表:英中銀四半期インフレーション・レポート(2018年2月8日)

声明文の文言の変化

利上げに関する表現が、昨年12月の理事会と比較して、かなり強く変化していたことも、英ポンド上昇の大きな要因であった。

1)前回12月のMPC(英中銀金融政策理事会)声明文

「The Committee remains of the view that, were the economy to follow the path expected in the November Inflation Report, further modest increases in Bank Rate would be warranted over the next few years, in order to return inflation sustainably to the target.

英中銀理事会では、英国のここからの景気は、11月の四半期インフレーション・レポートで予想した通りであるという見解に達した。よって、物価安定の維持を達成するためにも、今後数年かけて穏やかな利上げを実施することが予想される。

2017年12月声明文と議事要旨

2)今回の声明文

「The Committee judges that, were the economy to evolve broadly in line with the February Inflation Report projections, monetary policy would need to be tightened somewhat earlier and by a somewhat greater extent over the forecast period than anticipated at the time of the November Report, in order to return inflation sustainably to the target.
英中銀理事会では、英国の景気は2月のインフレ・レポートで紹介した展開となると予想する。よって、物価安定の維持を達成するためには、金融政策は11月のインフレ・レポートで予想したよりも、やや早めにより大幅な利上げが必要とされるだろう。」

2018年2月声明文と議事要旨

12月時点では、「利上げは穏やかな速度」を示唆していたが、それからわずか2カ月後には、「早めに大幅」へと急変化したことに、私も個人的に驚いた。

Brexitを含む政治的な動き

EUと英国の代表者たちは、先週金曜日に協議の場を持ったが、解決策や合意よりも、新たな問題が浮上してきたことが報じられており、全く先が見えない状態だ。

今年3月末までに、ここからの貿易交渉の枠組みと移行期間に関する合意を取り付ける予定であるが、前途多難であることが伝わってくる。

図表:筆者作成

上図はマクロなタイムラインであるが、3月末までに限定したミクロレベルでのイベントは以下の通りである。もちろん、これ以外にも新たな予定が出てくるであろうが、現時点でわかっているのは、これだけである。

参考資料:欧州議会ホームページ

未だにEUと英国の頭を悩ませているのが、アイルランドと北アイルランド国境問題である。これは、昨年12月のEU首脳会談で解決済みと思われていたが、メイ首相があらためて欧州単一市場(シングル・マーケット)と関税同盟に残らないと発表したことを受け、国境問題については振り出しに戻って協議のし直しをすることにすら、なりかねない状況だ。

今までの英ポンド、ここからの英ポンド

2016年6月の国民投票以降の主なイベントをチャートに書き出してみたが、英ポンドの動きを見ると、2017年第1四半期に底を打って以来、じりじりと上昇している。

チャート: 筆者作成

私はセミナーなどで視聴者の方々に伝えようとしているのは、「どこまで、マーケットの材料が、現在のプライスに織り込まれているのか?」である。この【織り込み度合い】は、個人それぞれ違うものであり、数値化できない。

現在の「英ポンド/米ドル」のプライスに織り込まれていると私が考えている点は、

  • 英国はEUから離脱する
  • シングルマーケットと関税同盟からも離脱するハードBrexitとなる可能性
  • つまり、金融立国としての英国の立ち位置が変わる可能性がある
  • メイ首相がいつ失脚しても驚かない。(ただし、後任人事については、織り込んでいない)
  • 年内に首相交代があってもおかしくない
  • 5月の地方選で保守党が大敗するかもしれない
  • 英与党:保守党内部で、Brexitに対する考え方がわかれている。そしてメイ首相は、それをまとめるだけの力がない
  • アイルランド国境問題は、合意したと思っていた・・・

最低限、これだけの問題は既に織り込まれていると思う。一番恐いイベントリスクとして、「白紙でのEU離脱」があるが、万が一それが現実となった場合は、相当英ポンドは荒れることが予想される。

当面の英ポンドについてだが、米長期金利が3%を上抜けることがない限り、少なくとも3月22/23日に開催されるEU首脳会談までの間は、チャートのオレンジ・チャネル内(1.34ドルHigh~1.42ドルLow)内での動きとなるのではないか?

チャート: 筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2018年2月14日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
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