スペシャル・トレンドレポート

米通商政策で円安修正圧力か?!「米ドル/円」目先110円の攻防へ(西原 宏一氏)

2018年1月26日

1)2018年初頭も米ドル安でスタート

2018年に入りまずマーケットが注目したのが、日経平均の急騰と米10年債利回りの上昇。

年初の日経平均は3日で1,000円急騰。
一方、米10年債利回りは続伸。
本稿執筆時点では節目の2.60%をブレイクし、2.62%レベルで推移。

ここでマーケットを驚かせたのが「米ドル/円」の動き。
これまで日経平均と米金利の上昇は、「米ドル/円」を押し上げる大きな要素であるとマーケットは認識していた。

特に米10年債と「米ドル/円」の相関は極めて高いものがあった。

ところが今年の「米ドル/円」は日経の急騰にも、米金利の続伸にも追随しない。
振り返ると、2016年12月、トランプラリー時の米10年債利回りの高値は2.63%であった。
この局面で「米ドル/円」が118.66円の高値をつけたことは記憶に新しいところ。

今回米10年債利回りは、前述のトランプラリー時とほぼ同Levelまで急騰しているが、「米ドル/円」は米金利の上昇に連動して上昇するどころか反落。
本稿執筆時点(1月23日(火))では110.50円と110.00円を割り込むところまで低迷している。

2)米の通商リスクに警戒~モルガン・スタンレーも米通商リスクに警鐘鳴らす

この「米ドル/円」の下落の背景にはマーケットの円shortが溜まっているという側面もあるが、個人的に重視しているのが、前reportでも紹介した米通商問題が大きな鍵を握っていると考えている。

トランプ大統領は就任当初から通商政策には強硬的な姿勢を見せていて、これが保護主義的だと言われている。

大統領就任直後には、TPP撤退に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)からも手を引く考えを示唆。
しかしトランプ大統領の就任一年目は、オバマケアの撤廃と税制改革に注力していて、2017年の彼の政策にはマーケットが懸念していたほど強硬な保護主義的な通商政策はみられなかった。

ただ今年、2018年は米連邦議会の中間選挙を控えている。
現在共和党は上院下院を抑えているが、中間選挙で共和党が負けて議席を減らすことになると、議会運営がさらに難しくなる。さらに民主党が多数となれば大統領弾劾の可能性すら出てくる。こうした点から、大統領としては何としても中間選挙に勝って安定した政権を維持したいところである。

そこで、大統領の政策としてのトランポノミクスは、徐々に通商問題にシフトしてくると想定している。大統領の支持基盤である労働者層の支持を得るためにも、国内産業の振興と米国に有利な貿易状況を作る必要がある。

この問題に関して、1月22日(月)米大手のモルガン・スタンレーが以下のとおり、興味深いレポートをだしている。

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モルガン・スタンレー、米通商リスクに警鐘鳴らす-ヘッジ呼び掛け

モルガン・スタンレーのストラテジストは、米国市場における通商リスクはもはや仮定の問題ではなく、投資家は十分に注意を払うべきだと指摘した。

2016年の米大統領選中のトランプ氏の発言が通商政策に対する国民の想像を膨らませたと見られるが、トランプ政権の1年目はこうした発言よりも実際の行動は少なかった。

一方、中国との一触即発状態の紛争や現在行われている北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉など、通商政策の多くで判断の期限が迫りつつあり、こうした問題がマーケットに一層大きく影響し始める可能性がある。保護貿易の兆候を示唆する最新の動きでは、米国が22日に太陽光パネルの輸入品に関税を課す決定を下した。

マイケル・ジーザス氏らモルガン・スタンレーのストラテジストは22日のリポートで、「NAFTA再交渉を進める一方、関税など保護主義的措置を規定した米国法に基づく勧告に対して米政権は行動を起こすのか、あるいは行動を起こさないのか、当面の期限が迫っている」と指摘。「これはNAFTA再交渉やより広範な保護主義的措置で一層厳しい姿勢を取るという懸念をあおる恐れがある」と述べた。

同ストラテジストらは、現状維持か一時的な通商紛争、強硬な保護主義的措置の3つの通商シナリオを想定。一時的な紛争は市場で短期的にリスク回避の動きを呼び起こす一方、輸入抑制へ全力を挙げるようなら影響が長引く可能性があるとみる。

こうしたリスクを回避する手段として、為替と株式に関するモルガン・スタンレーの助言は以下の通り:
* ヘッジとして韓国ウォンに対し円をロング(買い持ち)する
* 年内はメキシコ・ペソとカナダ・ドルのコアショート(売り持ち)を維持

ジーザス氏は「関税措置の発動決定は近年の米国史で例がないわけではないものの、米国の従来の自由貿易スタンスが大きく転換したことはない」と説明。「ただ、現行の自由貿易政策を米国は堅持するのかどうかについて投資家の見方が関税措置によって揺らぐ恐れがあることを、われわれは認識しておかなければならない」と記した。

出所:Bloomberg

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個人的にも今年は米国の通商問題が焦点になると考え、その時期は中間選挙にむけて年後半かと想定していたが、このモルガン・スタンレーのレポートにもあるように年初から徐々にマーケットの焦点となり、「米ドル/円」は上値の重い展開を続けている。

また直近で注目が集まる北米自由貿易協定(NAFTA)では、主にメキシコがターゲットとなりそうであるが、カナダも米国をWTOに提訴していて、保護主義が進む可能性が出てきている。
そして、トランプ大統領は就任前には日本に対しても貿易不均衡を主張していたので、今後は日本に円安修正を求めてくる可能性も出てくる。

ここで「米ドル/円」の動きをテクニカルで確認したい。

3)「米ドル/円」の110.00円の攻防

下図は「米ドル/円」の週足

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成

まず、2015年6月5日(金)の125.859円からのレジスタンスが、ずっと「米ドル/円」の上値を抑えている。
次に2016年9月の100円から2017年9月の北朝鮮の地政学リスクで下げた107円を結ぶサポートが現在は110.10円に位置していて、こちらが「米ドル/円」を下支えしている。

下図は「米ドル/円」の日足

チャート:YJFX! MT4チャートより筆者作成

週足では見にくいので、直近の動きを日足でも見ると、2017年9月8日(金)に地政学リスクでつけた107.287円と、その後の戻しで付けた11月6日(月)の114.372円でフィボナッチ・リトレースメントした61.8%が110.131円にあります。

つまり、110.00円Levelは長期のサポートでも、フィボナッチでも重要なレベルである。

逆にいえば、仮に110.00円を割り込む動きとなると、サポートラインを割り、またフィボナッチ61.8%も割り込むので、「米ドル/円」の下落が加速する可能性が高くなってくる。
日足を見ると、11月6日(月)の高値以降、高値は切り下げていて、安値も11月27日(月)の110.844円を下抜けて、下げやすい形となっている。

仮に110.00円をクリアに割り込むと次のターゲットは昨年9月8日(金)の107.287円。
さらにその次は前レポートでターゲットにしていた105円が視野にはいってくる。

長期に渡って「米ドル/円」をサポートしていた日経平均と米10年債の利回りの急騰にも連動しなくなり、下値余地が拡大してきている「米ドル/円」相場。

今後の米通商政策による円高米ドル安圧力もあり、年初からじり安推移の「米ドル/円」の行方に注目である。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2018年1月26日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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