クリスマスから長期休暇を取っていた海外勢も休みが明け、全員参加のマーケットがようやくスタートする。今週はいくつか重要指標の発表があるが、その中でも特に気になるのが、欧州中銀(ECB)の議事要旨だ。
昨年12月14日理事会の議事要旨発表
12月14日(木)に開催されたECB理事会の事前予想は、
- 政策金利の据え置き
- QE策についても10月26日(木)の理事会で詳細が発表済み
- 3カ月に一度のマクロ経済予想「スタッフ予想」内容の変化
こんな感じであった。そして、ドラギ総裁の定例記者会見でも特に波乱となる言動はなく、「6~12カ月前と比較して、景気後退リスクは かなり軽減されてきた」「ユーロ圏のインフレ率がECBのインフレ目標に到達する自信は、数カ月前よりも高い」と、かなり前向きな発言が飛び出した。だが、この会合の前日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.25%の利上げに踏み切ったため、「ユーロ/米ドル」は「ユーロ安/米ドル高」で、この週を終えている。

チャート:筆者作成
「ユーロ安/米ドル高」となった理由は、米国の利上げに加え、この日発表されたスタッフ予想の中で、2020年のインフレ見通しが1.7%となっていたことも挙げられよう。ECBインフレ目標は「2%に近いが2%以下」であるため、少なくとも将来のインフレ見通しが1.9~2%にならない限り、緩和策継続の可能性が残るからである。

年末年始のECB関係者の発言
年末年始にかけて、ECB関係者4名がインタビューなどで、QE策に対する自身の考えを披露した。タカ派のバイトマン独連銀総裁がQE終了を支持する発言をすることは当然とも言えるが、ハト派/中立勢のクーレ理事やノボトニー・オーストリア中銀総裁がQE打ち切りに前向きな発言をしたことに、驚きを感じている。

上図:筆者作成
その中でも特に、メルシュECB理事の「QE延長をしないのであれば、夏前にそれを市場に伝えるべきだ」という発言には驚いた。私自身も早ければ夏前のECB理事会で、何らかの示唆があると考えていたが、ここまで明確に理事自身が発表時期を設定し、それを公表することは、かなり異例なことかもしれない。もし、この発言通りとなった場合、発表するのが夏前というのであれば、春以降の理事会で「QE終了時期」に関するコンセンサスが、徐々に出来上がってくることも考えられる。
メルシュ理事のインタビュー内容: ECBホームページ
シカゴ先物市場のポジションの偏り
QE終了が現実味を増してくるのであれば、当然ユーロは更に上昇することになる。今年のコンセンサスは、ユーロ上昇であるし、実際にシカゴIMM通貨先物ポジションを見ると、ユーロの買い持ち(ロング)は史上最高となっていて、35週連続買い残高が多い状況だ。いかにマーケットが、ユーロ上昇を狙っているのかが、伝わってくる。

チャート:Forex Watcherホームページ
それに対し、58週連続で売り越し(ショート)となっているのが、円である。つまり記録的なユーロ買い持ちと、これまた大量の円売り持ちが組み合わさって、「ユーロ買い/円売り」のポジションが相当溜まっていると予想される。

チャート:Forex Watcherホームページ
ここからのユーロ
私自身も3月4日(日)に予定されているイタリア総選挙の結果を見てから、ユーロの買いが適切であれば、参入しようと考えている。現時点では、年初からの1.21ドル台の重さが目に付いたため、1.20ドル台でショートを作っている。本当なら、IMMポジションが溜まりすぎている「ユーロ/円」でポジションを作るべきなのだろうが、私はどうも円クロスが苦手で、今回も対米ドルでユーロを売った。
これは、「ユーロ/米ドル」月足のチャートであるが、黄色くハイライトを入れたレベルは、2008年から2014年までずっと「サポート」として機能していた。そして、今はそこが重要な「レジスタンス」となっている。
6年間に渡り強烈なサポートとなっていたことを考えると、簡単に上抜けして急騰するには時間がかかるかもしれない。

チャート:筆者作成
もうひとつ、「ユーロ/米ドル」週足のチャートに200週移動平均線(SMA)を入れたものだが、200SMAと実際のレートとの乖離を見ると、重要なレジスタンス(赤い丸)にぶつかっていることがわかる。

チャート:筆者作成
過去の動きと同じであるのなら、少なくとも200週SMAが通る1.16ドル台までの下落があってもおかしくないが、最初のターゲットとして「ユーロ/米ドル」4時間足のベガス・トンネル(144/169EMA)が通る1.1886/99ドルレベルを目標にしたい。
注:このターゲットは4時間ごとに変更されるので、執筆時のターゲットは、1.1886/99ドルであるが、この記事が公開される時には、1.19ドル台まで上昇しているかもしれない。

松崎 美子氏プロフィール

- 松崎 美子(まつざき よしこ)
- 東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。