スペシャル・トレンドレポート

2018年「米ドル/円」105円想定! 通商問題再燃で米ドル安か(西原 宏一氏)

2017年12月22日

1)2017年は米国の利上げが進むも、米ドルは続落

昨年(2016年)暮れの金融マーケットでは、これから就任するトランプ大統領の経済政策・トランポノクスを背景に金融市場は活況を呈していた。
トランプ大統領就任で2017年に米税制改革法案が可決すれば、法人税が大幅に減税されることで、米企業の収益を大きく押し上げるとの予測のもと、米株は急進。
加えて、FRBの連続利上げ期待で、昨年末の「米ドル/円」はトランプ氏の当選後2カ月弱で約17円も暴騰した。

この流れを受け、多くの金融機関が2016年末に発表した2017年の予測も強気なものが目立った。

米企業の収益大幅向上期待で米株も続伸。
FRBの連続利上げにより米の長期金利も上昇。
米長期金利が底堅く推移するため、米ドルは続伸。
「ユーロ/米ドル」はパリティを割り込み、「米ドル/円」は125円へ続伸。
というものがマーケットのコンセンサスとなっていた。

しかし、2017年の暮れも押し迫った現在の金融市場は予測とは違った側面をみせている。

まず予測以上に値をあげたのが米株。
年初は19,872ドルからスタートしたNYダウは本稿執筆時点で24,754ドルと約20%も上昇。
この背景にはマーケットの思惑と相違し、米10年債の利回りが上昇しなかったことがあげられる。

今年FRBはマーケットの予測通り、3回の利上げを実施している。
しかし米10年債の利回りは年初2.443%でスタートしたものの、本稿執筆時点では2.450%とほとんど変わらず。

この米10年債の利回りの低迷が今年の米ドル全般の上値を重くしている。

下図はドルインデックスの月足。
年初のレベルを高値にドルインデックスは急落している。

チャート:筆者作成

ドルインデックスの主要な構成要素は半分以上が対ユーロなので、ここで今年の「ユーロ/米ドル」の動きを確認してみたい。

下図は「ユーロ/米ドル」の週足。

チャート:筆者作成

年初の1.0341ドルを安値に今年の「ユーロ/米ドル」は続伸。
1.2092ドルの高値に到達するまでは大きな調整もなく急騰している。

今年4月から5月のフランス大統領選を筆頭に、今年の欧州を取り巻く政治環境はあまり芳しいものではないとの予測が多かったわけであるが、そうした思惑とは裏腹にECBのテーパリング予測を背景に今年の「ユーロ/米ドル」は急騰した。

日銀は現在も大胆な金融緩和を続けているわけであるが、前述の米金利の低迷は「米ドル/円」の上値を抑えることとなり、今年の「米ドル/円」は結局上値が重く、大きな値幅を伴わずに今年の相場を終えようとしている。
(下図は「米ドル/円」の週足)

チャート:筆者作成

この動きが2018年も続くのかどうかを検証してみよう。

2)中間選挙に向けての公約を粛々と実行していくトランプ大統領、通商問題は?「米ドル/円」は105円割れへ

「ユーロ/米ドル」については多くの金融機関の予測は同じであり、ECBのテーパリング観測もあり、上昇との予測が主流となりつつある。

「ユーロ/米ドル」は1.25ドル~1.28ドルへと上昇するのではないかとの予測がコンセンサス。

意見がわかれているのが「米ドル/円」。
2018年の「米ドル/円」は120円に向けて上昇するのではないか?との予測をだしているのが、ゴールドマン・サックス。
逆に105円にむけて反落するのではないか?とのレポートを出しているのが、モルガン・スタンレー。

「米ドル/円」の行方に大きな影響を及ぼしているのがトランプ政権であるとの見方から、2018年の「米ドル/円」の行方を検証してみたい。

今年のトランプ大統領の行動をみていると、紆余曲折がありつつも、なんとか公約を実行しようとしているのが明白。
悲願の米税制改革法案も、年内の可決承認の可能性が高まっている。

そしてマーケットを驚かせたのが、公約どおり米大使館をテルアビブからエルサレムへの移転を決定したこと。

もともとアメリカ大使館がエルサレムに移転することは、「エルサレム大使館法」として米国連邦議会が既に成立させている。成立したのはかなり昔になるが、1995年。但し、これには期限がついていて、1999年5月31日までに実施することになっていた。しかし、この米大使館の移転は中東問題を悪化させることが明白なので、歴代の米大統領は大統領権限で半年ごとに延長してきた。
今回トランプ大統領は、延期をせずエルサレムに移転を決定した。(この決定の裏には娘婿であるクシュナー(ユダヤ教徒)の存在が影響していると想定されている。)
エルサレム承認の決定に対して、中東諸国のみならず、欧州各国から批判の声があがっている。
しかしこうした反発を予想した上でも、トランプ政権は公約を実行。
トランプ大統領は、批判や抵抗にあいつつも、公約をひとつひとつ実行していることになる。

ここで問題になるのがトランプ大統領の通商政策。

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トランプ大統領は就任当初から強硬的な姿勢を見せ、就任直後にはTPP撤退に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)からも手を引く考えを示唆。

さらに、3月31日には、経済ニュース専門局CNBCが「貿易をより公平にするという選挙公約を実現するための基盤」と表現した2つの大統領命令にも署名した。

1つは米国の膨大な貿易赤字の要因を特定することを目的としたもので、もう1つの大統領令は不公平な貿易慣習に関与していると疑われる外国企業に関税を課すことで、反ダンピングおよび相殺関税を強化することを求めるものだった。

出所:東洋経済online

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こうした通商政策での仮想敵国は「メキシコと中国」といわれている。
しかし、就任当初、トランプ大統領は、日銀の「大胆な金融緩和」に対しても否定的なコメントを述べている。

オバマケア撤廃や移民に関する問題を筆頭にトランプ政権には、解決しなければいけない問題が山積みされている。

そのため、今年2017年は通商政策には焦点が集まっていなかったが、中間選挙を迎える2018年には通商政策にもマーケットの注目が集まると想定している。

結果、2017年同様、FRBの連続利上げにもかかわらず、米10年債利回りが上昇しなければ米ドルが上昇するのは難しい展開。

逆に市場参加者の視点が通商政策に移行すれば、大統領が日銀の大胆な金融緩和政策に否定的なことから、円高が進行する可能性も高まる。

2018年の「米ドル/円」は「ユーロ/米ドル」同様、米ドルの上値は重く、じりじりと105円方向に下落する可能性が高いのではないか?

仮に中東問題や、北朝鮮のような「地政学的リスク」が再燃し、株が調整局面に入るようだと、105円を割り込んで急落するリスクもはらんでいると考えている。

中間選挙にむけてのトランプ政権の舵取りに注目である。

本年はマーケットのコンセンサスとは裏腹に、「米ドル/円」は値幅を伴わず、volatilityの低い相場に終始した。
しかし、こうしたマーケットが続くと金融市場ではoptionの売り手が増え、一定の時間が過ぎると、Volatilityの反発がoptionの買い戻しを誘引し、結果として為替市場のvolatilityを大きく高めるという展開になりがちである。

そのため、2018年の「米ドル/円」は、マーケットのコンセンサスと相違し、値幅を伴って大きな動きとなるのではないか?と想定している。

オンラインセミナーも含め本年も大変お世話になりました。
2018年もよろしくお願いします。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2017年12月22日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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