スペシャル・トレンドレポート

上がらない「米ドル/円」! 好材料は織り込み済で108円台も?(西原 宏一氏)

2017年12月1日

1)米大統領選から一周年を迎えた11月9日、日経平均と「米ドル/円」はトップアウト

10月後半から11月初旬にかけての日経平均は、一部マーケット参加者から目標30,000円の声がでるほどの加熱感を伴い急騰。

そして今月9日(木)、日経平均は一時23,000円を超えたところでtop out(高値は23,382円)。

チャート:筆者作成

この11月9日(木)はSQ前日。

そして2016年の米大統領選で、トランプ氏が勝利を収めてからちょうど1年目であった。

また、高値となった23,000円は、1989年12月高値と2008年10月安値の50%戻しの重要ポイント。

日経平均は一時このラインを突破し、多くのマーケット参加者が極端に強気に傾いた後、なんの材料もなく急反落。この日の振れ幅は860円と株式市場は大荒れ。結局50%戻しのレベルを上抜けることはできず、反落した。

半値超えに失敗した日経平均は11月9日(木)以降、調整局面入りした公算が高まっている。

為替市場を見れば、日経平均が一時23,000円を超えて急騰した日に「米ドル/円」も115.00円ブレイクに向けて急騰したが、高値は114.73円どまりで急反落。

この「米ドル/円」も日経平均同様11月9日(木)に調整局面入りした可能性が高まっている。

2)NYダウ、日本株の急騰にも追随しない「米ドル/円」

ここで「米ドル/円」の値動きをチャートで確認してみよう。

下図チャートは「米ドル/円」の週足。

チャート:筆者作成

「米ドル/円」は年初の118円台から急落して以降、何度も3月高値のある115円レベルにトライしている。

5月に反発したときの高値が114.37円。7月の反発が114.49円。そして今月11月の反発が114.73円と3度115.00円ブレイクにむけて上昇するも、3度とも失敗。

加えて、(チャートが示しているように)2015年6月高値125.86円と2016年12月高値118.66を結ぶレジスタンス(青線)がある114円ミドル超えに失敗している。

つまり、過去2年半超えられなかったこのレジスタンスを今回の局面でもブレイクできなかったということになる。

特に今月9日の115.00円トライはNYダウの急騰や日経平均の続伸という好材料があったにも関わらず115円ブレイクに失敗。「米ドル/円」の上値の重さが目立つ。

では、日米の株の急騰というrisk onでも上がらない「米ドル/円」は、どういう材料があれば115.00円をブレイクして続伸できるのか?ということがマーケットで話題になっている。その中で、マーケットで一番に取り上げられている材料のひとつが米10年債金利の上昇である。

3)パウエルFRB議長の誕生と米ドル10年債金利、「米ドル/円」は108円へ

米10年債金利さえ上昇トレンドに戻れば「米ドル/円」は115円を超えて続伸するという意見もある。

ただこの米10年債利回りは今月上げ渋っている。米金利の上値が重くなってきたことの背景にパウエルFRB議長の誕生があげられる。

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■FRB議長にパウエル理事 トランプ大統領、正式に指名

トランプ米大統領は2日(木)、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエルFRB理事(64)を正式に指名した。トランプ氏は現体制の低金利政策を支持しており、FRB執行部で共和党主流派に唯一近いパウエル氏の起用を決めた。イエレン現議長は来年2月で任期切れを迎え、1期4年の異例の短さで退任する。

FRB議長人事は上院の承認が必要で、可決されれば来年2月に就任する見通しだ。ホワイトハウスで声明を読み上げたパウエル氏は「人事が承認されれば、物価の安定と雇用の最大化に全力を尽くす」と述べた。トランプ大統領はパウエル氏を愛称の「ジェイ」と呼び「ジェイはビジネス界の経験もあり、経済にとって本当に何が必要かを理解している」と起用の理由を明らかにした。

パウエル氏はもともとは政治学や法律を専攻した法律専門家で、2012年にFRB理事に就任した。投資ファンド「カーライル・グループ」の共同経営者を務めるなどウォール街での経歴も長く、ブッシュ(父)政権下で財務次官を務めたこともある。官民ともに豊富な経験が強みだ。

一方でFRB議長にエコノミスト以外の人材が就くのは約40年ぶり。議長ポストは1979年に就いたボルカー氏以降、グリーンスパン氏、バーナンキ氏、イエレン氏と著名エコノミストが続いてきた。FRBは金融政策の研究で著名なフィッシャー氏も10月中旬に副議長を退いている。

金融政策面ではイエレン議長が進めてきた穏健な低金利路線を継承する見込みだ。パウエル氏はこれまで「利上げには忍耐強くあるべきだ」などと発言。物価停滞が続いており、慎重に利上げを進めていく考えを示している。経済成長を重視するトランプ大統領はFRBの低金利政策を支持しており、穏健派のパウエル氏を起用する決め手となった。

出所:ロイター

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トランプ大統領は今年の米株の上昇を自らの業績にしている。

そのため、今後急速に株安に陥る局面になれば、トランプ大統領は即効性ある金融政策に対応を迫る可能性が高いというのがマーケットのコンセンサス。

もちろん、FRBは独立した組織であるため、さすがのトランプ大統領も直接FRBに金融緩和を迫ることはできないので、おそらくはtwitterなどを使って圧力をかけるのであろう。しかしこうしたアクションをトランプ大統領が取ることはありえそうなことである。

どちらにせよ、パウエルFRB議長の就任により、米国の金融正常化のスピードが速まるとは考えにくく、FRBはどちらかといえば利上げには慎重なスタンスを取るとみられている。

こうした背景から、米10年債金利の急騰は考えにくく、ということは同時に「米ドル/円」の急騰の可能性も低くなると考えられる。

4)本邦機関投資家が米ドルを断続的に買っているにも関わらず、「米ドル/円」は反落。米ドルの売り手は誰?「米ドル/円」は108円へ

話題を直近のマーケットの動向に戻すと、現時点のマーケットで「米ドル/円」の買い手というのは生保を筆頭とする日本の機関投資家だと噂されている。

「米ドル/円」が反落する局面では彼らからまとまった米ドル買いがマーケットに投下され、「米ドル/円」はいったん下げ止まる。ただ、今月に入ってからの「米ドル/円」は大きく反発せず、彼らからの米ドル買いにも関わらず、じりじりと値を下げている。

では本邦機関投資家以上に誰が米ドルを売っているのか?

売り手は誰なのか?

前述のように米ドルの買い手はコンセンサスどおり日本の機関投資家であるが、米ドルの売り手がよくわからない状態。

相場では、わかっている買い手よりも、わからない売り手というのが不気味な存在だといわれている。

個人的に想定しているのは、IMM positionが示しているように、多くのマーケット参加者が想定している以上に市場には円ショートが拡大しているのではないかと考えている。

出展=ザイFX

NYダウの急騰や日経平均の続伸という好材料があったにも関わらず115円ブレイクに失敗し、111円台まで反落してきた「米ドル/円」相場。

一方、仮に米株が下落する局面では、「米ドル/円」は躊躇なく追随し、反落すると考えられている。

米税制改革などのpositive 材料も織り込み済み。

仮に重要サポートである111.00円を明確にわりこめば、108円レベルまで下落幅が拡大する公算が高まるため要注意である。

11月9日(木)に日本株とともにtop outし急反落してきた「米ドル/円」の行方に注目である。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2017年12月1日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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