スペシャル・トレンドレポート

英中銀10年ぶり利上げも、英ポンド急落の5つの理由は?(松崎 美子氏)

2017年11月8日

11月2日(木)、英中銀は10年ぶりに政策金利の引き上げに動いた。主要中央銀行の中では、アメリカとカナダに続く3番目の国となった英国であるが、マーケットの動きは英ポンド急落となり、地元イギリスでも意外感に包まれている。

利上げでも売られた英ポンド

英国中央銀行は、政策金利を0.25%引き上げ、0.5%とした。この決定は、中銀金融政策理事会(MPC)9名の理事のうち、総裁を含む7名が賛成し実施された。しかし、利上げ発表と同時に2日間に渡り英ポンドは急落。一体どうしてこういう結果になったのだろう?

チャート:筆者作成

英ポンド急落の理由【英中銀編】

合計すると、5つの理由が頭に浮かんだ。最初は、英中銀。ここでは3つある。

1) 3年間で利上げは、あと2回だけ

私が一番フォーカスしていたのは、今回の利上げは連続性があるか?という点。結果として、英中銀が発表した四半期インフレーション・レポート(以下、QIR)によると、2020年末までに「あと2回の利上げ、政策金利は現行の0.5%から1%へ」ということだ。一部のエコノミストは、2018年に最低3回の利上げを予想していただけに、思ったよりも穏やかな利上げになることをマーケットは織り込みにいったに違いない。

気になる利上げのタイミングは、最初が2018年Q3、2回目が2020年Q3

2) インフレのピーク時、変わらず

8月QIRで、「10月分CPIが今年のピーク」と発表したが、今回もその予想に変更なし。唯一の違いは、ピーク時のインフレ率が3%から3.2%へ上がったことである。

ここで注意すべき点は2つ。まず、10月分CPI発表は、11月14日(火)である。本当にこの日の数字が3.2%となるか?この数字よりずっと高い数字が出ると、追加利上げの必要性が問われるかもしれない。

もう一点は、11月分CPIが、果たして10月分より下がっているか?これが確認できるのは、12月12日(火)になる。ここできちんと下がってくれれば、英中銀予想が支持されることになるだろう。

3) 金利引き上げの速度に関する文言の変化

9月と11月それぞれの声明文を比較すると、今後の金利引き上げペースに関する言及が大きく変化している。

8月には、「やや早めのペースで、金融政策の引き締めを実施する必要性が出てくる。」となっていたが、今回は、「今後の利上げは、穏やかなペースで限定的に行うことで、一致した。」と変化。特に私が気になったのが、「限定的」の部分。これは、Brexit交渉の先行き不透明感を意識しての内容であろう。

当段落の全てのチャートの出展先:英中銀四半期インフレーション・レポート(2017年11月2日)

英ポンド急落の理由【ブロードベント副総裁編】

11月2日(木)のSuper Thursdayの翌日、ブロードベント副総裁がBBCラジオの早朝プログラムでインタビューを受けた。そこでの発言内容を巡り、報道各社は正反対のヘッドラインを載せている。

・英ディリーメール紙

Broadbent signals more rate hike on the way
ブロードベント副総裁は、今後もっともっと利上げ実施を示唆

・米ニューヨークタイムス紙

Broadbent : Rate signal is no promise
ブロードベント副総裁 : 今回の利上げは、将来の利上げを約束するものではない

・BBCニュース

Interest rate rise to cause some pain
今回の利上げにより (住宅ローン金利が上がるため)、生活に苦しさを感じる人達がいるだろう

ディリーメール紙だけを読んだ人は、今後も利上げが続く印象を受けただろう。それに反して、ニューヨークタイムス紙の読者は、これ以上の利上げが実際に行われるか、疑問に感じたに違いない。

実際のインタビューを聞くと、「QIRでは今後3年間に2度の利上げをすると予想しているが、インフレ率を英中銀目標の2%に戻すには、必要となるだろう。ただし、この2回の利上げは既成事実ではなく、中銀は必ず利上げをすると約束している訳ではない。」と語っていた。

英ポンド急落の理由【ファロン国防相辞任編】

最後5つ目の理由は、これだ。11月2日(木)、英中銀が利上げを発表しているのとほぼ同じタイミングで、英与党:保守党のベテラン議員であるファロン国防相が女性スキャンダルで自ら辞任を発表した。この人は、2022年6月に予定されている次期総選挙前にメイ首相が辞任した場合、繋ぎの首相として名前が挙がっていたほどのベテランである。

今週に入り、ファロン氏に続き、3人の保守党議員が同じ問題で役職を降りると発表。今後、この問題がどれだけ拡大するか?Brexit交渉で忙しい政府にとっては、頭の痛い問題である。

英ポンド予想

英ポンドクロスで気になっているのが、「英ポンド/円」の週足。これに、144/169EMAのベガス・トンネルを載せると、さらに面白い。「英ポンド/円」の上値がトンネルで押さえられ、すでに約2カ月になる。そろそろどちらかに抜けるタイミングがきそうだ。

チャート:筆者作成

週足なので時間はかかるだろうが、果たしてベガス・トンネルを上に抜けていくのか?目先は、円安の円と、英ポンド安の英ポンドの掛け合わせ通貨なので、なかなか動きにくい。まずは、オレンジ色のレンジ内での動きを想定し、下値はオレンジラインが通る144円ミドル近辺と考えたい。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年11月8日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
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