衆議院選挙後の「米ドル/円」相場は
衆議院選挙は10/10(火)に公示され、10/22(日)に投開票が行われる。今回の選挙は、9月下旬からの野党再編により、「継続政策を訴える自民・公明の連立与党」「政権交代を目指す保守系野党(希望の党)」「リベラル系野党(立憲民主・共産・社民)」の三つ巴の構図となっている。各政党が色々と政策を打ち出しているが、要は「安倍内閣存続」を問う選挙である。選の衆議院定員は465名(小選挙区289人、比例代表176人)となっていて、この過半数を連立与党が維持できるかが焦点となっている。そこで、この選挙結果が、「米ドル/円」相場にどのような影響を与えるか幾つかシナリオを考えてみたい。
シナリオ①「与党大勝利の場合」
各メディアの世論調査では、連立与党が300議席にせまる勢いで、自民党単独でも244議席を上回る勢いと報じている。もし、世論調査通り465議席中の2/3にあたる310議席を超えた場合、連立与党大勝利となる。この場合、安倍政権継続となり、金融政策の面では、黒田日銀総裁の続投若しくは、交代の場合でも現行政策は引き継がれる可能性が高まる。株式市場においては、日銀の国債購入が継続となり株価は上昇。為替相場にとっては円安継続で、「米ドル/円」の上昇となりそうだ。
シナリオ②「与党は勝つが、自民党過半数割れの場合」
安倍政権は継続と予想されるが、求心力の低下から、次期総裁選での総裁交代の可能性がでてくる。この場合は、アベノミクスで持ち越していた『日本株の買い』や『「米ドル/円」の買い』に決済売りがでる可能性があり、目先は日本株や「米ドル/円」は売られるだろう。また、この場合、その後の連立与党に変化が生じる可能性も否定できないので、政局不安から日本株や「米ドル/円」下落が長引く可能性もあるので注意が必要かもしれない。
シナリオ②「野党勝利」
考えたくないシナリオではあるが、与党の現在行われている政策が、ことごとく変わることが予想される。特に金融市場においては、黒田日銀総裁の任期が来年4月となっているので現在の金融政策である異次元緩和政策が継続される可能性が低下すれば、日本株や「米ドル/円」は急落となるだろう。
アベノミクス以降の「米ドル/円」の推移
ここでアベノミクス以降の「米ドル/円」相場を振り返ってみると、「米ドル/円」は、2012年9月に77.11円の安値を付けた後、アベノミクス相場で、日銀の異次元緩和(黒田バズーカ)などから2015年6月に125.85円まで上昇となった。その後、2016年1月に日銀のマイナス金利導入が裏目に出て下落が始まる。2016年6月のブレクジット決定では98.90円まで下落。その後トランプ相場で2016年12月には118.66円まで上昇。しかしその後は、米国政局不安などで下落。2017年4月には北朝鮮のミサイル実験で108円台まで下落。2017年7月には、米国の利上げ観測などで、114.49円まで上昇。7月から9月にかけては、北朝鮮のミサイルや核実験などの挑発が頻発する中、米国の利上げ観測を背景に112円前後から114円台でのレンジ相場形成中となっている。

チャート:筆者作成
週足一目均衡表で三役好転となれば、「米ドル/円」115円台の可能性も

チャート:筆者作成
トランプ相場以降からテクニカル的に分析すると、2016年12月15日(木)の高値118.66円を付けた以降は下落基調となっている。仮に「米ドル/円」が上昇と予測した場合、2017年9月8日(金)の安値107.28円を底と想定すると、50%戻りの112.97円は一度超えていて、61.8%の114.31円、76.4%の115.97円が上値の目標となりそうだ。そして、週足一目均衡表で分析した場合、転換線と基準線が逆転すれば、強い買いシグナルとなる「三役好転」が点灯する。転換線と基準線が逆転する条件は、3週間以上の時間経過と107.28円の安値を切り上げながら、114.49円の高値を超える必要がある。しかし、その場合は、101.18円- 118.66円-107.28円からの上値拡張で61.8%である118.08円も視野に入ってくる。
今のところ、「米ドル/円」を取り巻く環境をグローバルに見た場合、米国の利上げ観測による上げ要因と北朝鮮リスクの下げ要因でレンジ形成となっていて、日本の衆議院選挙の注目度はそれ程高くない。しかし、衆議院選挙を好感した日経平均株価の上昇がより強まれば、衆議院選挙後の動きに注目が集まり、「米ドル/円」のレンジを上にブレイクする切っ掛けにはなるかもしれない。
遠藤 寿保プロフィール

- 遠藤 寿保(えんどう としやす)
- 98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。