スペシャル・トレンドレポート

千載一遇の買い場か?「ユーロ/米ドル」1.25ドルを狙う(竹内 典弘氏)

2017年9月15日

チーフディーラー : 「(先月の続編)その後順調じゃないか。「米ドル円」の戻り売りはきちんと利食えたのか?視点として最高だった」

新卒のトレーニー : 「はい。既に休暇を頂戴しておりますので、結果も伴わないと…」

チーフディーラー : 「いいぞ、その調子だ。次の一手は?」

新卒のトレーニー : 「米ドル売りの継続でしょうか。量的緩和からの出口が見えてきた対ユーロが良いと思います。米政治の混迷、単純にトランプ政権が公約に掲げた政策を難易度の低い順にでも達成出来ないと金利の低下も意識され、かなり厳しいかもしれません」

休暇中にデスクが最高益を計上してしまい、やや存在感を疑われかけていた新卒のトレーニーもここにきて大きく収益を積み上げてきた。どうやらその源泉は「米ドル」の売りだった様だ。ここに来てその「米ドル」の売りは対ユーロで加速してきた。

チャート : YJFX! MT4チャートより筆者作成

トランプ大統領による政策執行の不確実性、ハリケーン「ハービー」に次ぐ「イルマ」の襲来、北朝鮮の水爆実験の成功を始めとする挑発の拡大、その結果FRBの12月13日(水)の利上げの確率の大幅低下等、米ドルの売り材料には事欠かなくなってきた。

ハリケーンの被害は拡大、テキサスでは精油施設の大部分が一時的に操業不能となった。新規失業保険申請件数は9月2日(土)までの1週間で6万2000件急増と発表された。これは約2年4カ月ぶりの高水準で、来月発表の9月の雇用統計に反映されるのではないかと懸念され始めた。

こうしたなかで、FRB内ではタカ派に属するフィッシャー副議長が9月6日(水)にトランプ大統領へ書簡を送り辞意を表明した。辞任理由の表向きは「個人的な理由」としているが、トランプ政権の掲げるドットフランク法の撤廃等の規制緩和には明確に異論を唱えてきただけに、決別とみる向きも少なくない。

このフィッシャー副議長、マサチューセッツ工科大学で教鞭を取った経歴もあり、教え子にはECBドラギ総裁、前FRB議長のバーナンキ氏とそうそうたるメンバーが顔を揃える。大物の辞任でFRB理事7名のなかで新任のクオールズ氏の上院での承認が遅れているため、実に空席が4名となり政策執行への影響が危惧されている。

この結果米10年債金利では9月8日(金)には一時2.02%割れまで低下した。米ドルは売られ、対円でも年初来の安値を更新、107.32円まで下げ幅を拡大した。シカゴマーカンタイル取引所の発表するCountdown to FOMCでは12月の利上げの確率が本レポート執筆時点9月13日(水)午前現在44.5%と大幅に低下、一方で『利下げの確率』までもが登場し足元で小幅ながら0.7%存在する。

チャート : 筆者作成

欧州ではマクロン氏がフランス大統領に就任し100日が経ったが、支持率は2カ月前の64%から36%に急落、同じ時期のオランド元大統領よりも低水準にある。しかしオランダ議会選に続き、フランス大統領選でも極右の勝利は阻まれ、9月24日(日)に迫るドイツ下院選挙でもメルケル首相の続投はほぼ確実で欧州政治からの混乱は無い。

9月7日(木)のECB理事会では、2017年の域内のGDP見通しを2.2%に上方修正、量的緩和の縮小を来月決定すると発表した。その後のドラギ総裁の会見では「ユーロ相場が不確実性のもとになる」と指摘する反面、「金額や期間に関して複数の選択肢を用意し活発な議論をした」と語った。

ユーロ圏の物価はECBの目標とする2%にやや届かないが、域内ではGDP成長率では2013年Q2(4-6月期)以降17四半期連続で拡大が継続、7月の失業率は8年ぶりの9.1%まで低下し明るい材料が目白押しだ。

チャート:ユーロスタットより筆者作成

独のifo経済研究所が発表する景況感指数は、7月116.0、8月115.9と調査開始以来の歴史的な高水準を記録している。これは国内の約7000社を対象にしたアンケート調査で、日銀が発表する企業短期経済観測調査(短観)よりもカバー範囲は広い。こうしたやや過熱する独経済に対しては、バイトマン独連銀総裁からはバブルを懸念する発言が繰り返されている。

チャート:CESifoより筆者作成

IMF(国際通貨基金)が四半期ごとに発表するグローバル中銀の外貨準備高に占める通貨ユーロの比率は、米大手金融ゴールドマン・サックスのレポートでは、COFER(Currency Composition of Foreign Exchange Reserves)データでリーマンショック直後の2009年のピークの約28%より大きく低下、今年に入り約19%を記録した。これは「ユーロ/米ドル」がこの期間大きく減価(売られた)したことに加え、政策金利も大幅に低め誘導された面が大きい。

グローバル中銀全体でみた場合、通貨ユーロが大きくアンダーウエイト(比率が低すぎる)に放置されている構図が鮮明となっている。今後ユーロ相場の更なる回復、ECBの掲げる金融政策の正常化に伴いこの比率は大きく回復するとみられ、これは実弾でのユーロ買いに直結する。

図表:筆者作成

こうしたなかで、今後の「ユーロ/米ドル」相場の行方を占ううえで一つの参考になるのは、量的緩和からの出口で先を走るスウェーデンの中央銀行リクスバンクの政策だ。

リクスバンクは昨年12月21日(水)、政策金利を過去最低のマイナス0.5%に据え置いたまま、国債買い入れ額を2016年後半の450億クローナ(約6100億円)から2017年前半より300億クローナに減額すると発表した。更に本年4月27日(木)にも年後半の買い入れ額を150億クローナに減らすと発表した。

これらのテーパリングの発表後、クローナ高が進捗しリクスバンクは通貨高をけん制するために一段の政策金利の引き下げも辞さないとの姿勢を示したが、ここまでクローナ高は止まっていない。やはり量的緩和からの出口を模索する中央銀行にとって自国通貨高は切っても切り離せない副産物となっている。つまり時折けん制等を交えながらうまく対処していくしかないのだ。

チャート:筆者作成

以上をまとめると、「ユーロ/米ドル」は「米ドル」のネガティブ、そして「ユーロ」のポジティブという二つの側面を持つことが分かった。確かに6月27日(火)のドラギ総裁の発言「デフレはインフレに変わった」からの「ユーロ/米ドル」の上昇はやや速かった。

この先、ECB当局者からユーロ上昇へのけん制発言が入る可能性は高いが、こうした調整局面は千載一遇の買い場と捉えたい。ECBの量的緩和の出口に向けたラリーは秋口に向けて継続、次の節目となる1.25ドルに向けて視界は極めて良好と判断出来そうだ。

竹内 典弘氏プロフィール

竹内 典弘(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。 1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。 相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2017年9月15日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
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