スペシャル・トレンドレポート

ユーロ上昇速度に懸念か?勝負は10月ECB理事会へ(松崎 美子氏)

2017年9月13日

9月7日(木)、欧州中銀(ECB)金融政策会合が開催された。ジャクソンホール経済シンポジウムで金融政策について全く言及しなかったドラギ総裁がどんな発言をするのか、市場関係者は固唾を呑んで見守ったが、全ての発表は10月の理事会へ先送りされる結果となった。

今回のコラムでは、ECB理事会でも話し合いが行なわれた「ユーロ高」について、そして10月理事会予想について考えてみたいと思う。

9月7日(木)ECBからの発表

この日の会合では、事前のコンセンサス通り、政策金利は全て据え置き。市場の関心を一手に集めたテーパリングを含む出口戦略については、10月の会合で発表することとなり、俄然10月26日(木)の理事会への関心が高まった。

ドラギ総裁は記者会見で、「会合での3大テーマは、成長・インフレ・為替」と語っている。「為替レートは政策ターゲットではない」という姿勢を貫いているECBであるが、やはり最近のユーロ高についてECB理事達の間でさまざまな意見が交換されたことは疑いの余地はない。

行き過ぎたユーロ高を嫌がる理由は、インフレの下押し要因となるからであろうと私は想像したが、ドラギ総裁の記者会見を見る限り、ユーロ圏各国の輸出に対する影響を挙げていたことに、若干の違和感を覚えた。

ユーロ高について

今年2月から5月にかけ、ドイツのメルケル首相やショイブレ財務相は、ユーロの価値が低すぎるというコメントをしている。当時の「ユーロ/米ドル」のレベルは、1.08ドル台から1.10ドル台であり、現在のレベルは9~10%ユーロ高となっている。

チャート:筆者作成

ユーロ圏の中でも輸出大国として知られるドイツを例に取って調べてみよう。ここでは、毎月7,000社を対象に調査するIFO経済研究所の景況感指数を選んだが、最新の8月の数値は、やや軟化した程度で依然として景況感はかなり良好だ。

チャート:IFO企業景況感指数(2017年8月25日(金)発表)

そして、その前月(7月)にIFO経済研究所が行なった調査結果を、私は何かの報道で読んだのだが、そのリンクが見つからない。自分のノートに書き残した内容によると、

・ほとんどの輸出企業は、今後12カ月の輸出予約を完了済み

・一般的な輸出企業にとって、業績に影響が出始める「ユーロ/米ドル」のレベルは、だいたい1.35ドル台かそれより上

・もし、今後ユーロが(実効レートベースで)10%上昇すると、輸出企業の収益が5~8%カットされる

となっていた。この時期、「ユーロ/米ドル」は1.13ドル台から1.17ドル台に一気に上昇したが、たしかこの報道を読んだ時は、1.17ドル台に限りなく近かった記憶がある。当時の実効レートは、97~98台。つまり、ドイツの輸出企業が悲鳴をあげるレベルまで、相当の糊代が残っていると言える。

しかし、9月の理事会でドラギ総裁は、最近のユーロ高とユーロ圏各国の輸出に対する影響を挙げていたことを考えると、ユーロのレベルというより、上昇の速度に理事達は懸念を抱き始めたのかもしれない。

10月会合に関する予想

9月7日(木)の会合が終了した直後に、ロイター社が10月の発表内容に関する観測記事を載せている。その内容は、以下の通りとなっている。

・QE額の縮小幅

毎月の購入額:現在の€600億

変更内容:

  1. 1.
    €400億に縮小
  2. 2.
    €200~400億の間に縮小
  3. 3.
    €200億に縮小

図:筆者作成

この図は私が作成したものであるが、アメリカのテーパリングは、ゼロに向け毎月一定額の減額が継続された。しかし、ECBの場合は、アメリカと違い、減額後そのままその額がしばらく継続し、時機を見て次の減額が発表されるやり方を取るようだ。

・期間延長

現在のQE策は、今年12月に期間終了

変更内容:

来年1月から 6~9カ月の延長か?

ここからのユーロ

それでは、ここからのユーロについて考えてみよう。

まず最初に、上述の「もし、今後ユーロが(実効レートベースで)10%上昇すると、輸出企業の収益が5~8%カットされる」の部分についてだが、7月の実効レートレベルは97~98。そこから10%上昇すると、だいたい107台となる。

チャート:ECBホームページ

これはあくまでも私の想像であるが、10%上昇する前に、ドイツ以外の国から「ユーロ高に関する口先介入」が出てくるのではないだろうか?そう考えると、2014年4~5月にかけてドラギ総裁やユーロ加盟各国の政府関係者がユーロ高に言及した104台くらいから、そろそろ準備しておいてもよいのかもしれない。

最後に、ユーロ実効レートが7月の時点から10%上昇した場合の「計算上のユーロ/米ドル」のレベルは、1.2460ドルから1.2902ドルとなる。ただし、これはあくまでも計算上のレベルであるため、参考程度にしていただけると幸いである。

(参考)ECB ユーロ/ドル公表レート

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年9月13日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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