スペシャル・トレンドレポート

130円前後は強烈な抵抗ライン! 「ユーロ/円」は調整局面か?(西原 宏一氏)

2017年8月23日

1)ユーロの好材料が噴出し、「ユーロ/円」は131円ミドルに到達

今年初旬から当レポートでも注目してきた「ユーロ/円」であるが、5月のフランス大統領選を無事に終えたことで「ユーロ/円」は明確にボトムアウト。

過去のレポートで紹介したように、ユーロに関するpositiveな材料が多数マーケットに投下されたことで「ユーロ/円」は堅調に推移。

主なpositive材料は以下の3点。

  1. 1.
    フランス大統領選を無事に終えたことで本邦投資家のユーロ圏への投資が再開
  2. 2.
    メルケル首相による「ユーロは安すぎる」コメント
  3. そしてユーロを押し上げる最大の材料となったのが

  4. 3.
    ECBの緩和解除への思惑

このECBの出口への観測をさらに加速させたのが前回のレポートで紹介したシントラショック。

前回のレポートを確認すると、6月末にポルトガルのシントラで開催されたECBフォーラムでのドラギ総裁による下記のタカ派コメントが「ユーロ/円」をさらに上昇させる要因に。

●デフレ圧力はリフレに変わった

●物価下押し圧力は、一時的要因。

この一連のコメントにより、マーケットでは「早ければ9月のECB理事会でテーパリングが決定され、スタートは2018年1月」といったコンセンサスを形成。

これにより、「ユーロ/円」は一時131.40円まで急騰。

さらにこの先は、8月24日(金)のジャクソンホールで3年ぶりの参加を表明しているドラギ総裁がタカ派なコメントをして、このコンセンサスが確認されれば、「ユーロ/円」はもう一段上昇するというシナリオが主流であった。

そのシナリオを一変させたのが、下記のロイターの報道。

2)ジャクソンホールでのドラギ総裁への期待感の後退、ECB政策委員会による「ユーロ高牽制コメント」によりユーロは調整へ

8月16日(水)、下記のロイターの報道で、ジャクソンホールでのドラギ総裁がタカ派なコメントを表明するという期待感が大幅に後退。

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ECB総裁、ジャクソンホールで政策の手掛かり示さず=関係筋

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれる米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムでの25日(金)の講演で、金融政策に関する新たなメッセージは打ち出さない。関係筋が明らかにした。

ECBの報道官は、ダイナミックなグローバル経済の促進というシンポジウムのテーマに焦点を当てると説明した。

関係筋は、7月のECB理事会での合意に沿って総裁は政策に関する議論は秋まで控えたい意向と明らかにした。

ドラギ総裁のジャクソンホールでの発言がECBの資産買い入れ縮小に関する議論の実質的なスタートになるとの期待がここ数週間、市場で高まっていた。

しかし関係筋は「金融政策に関する重要な講演になるとの期待は間違いだ」と指摘した。

出所:ロイター

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この報道に呼応して、「ユーロ/円」は130円ミドルから反落。

追撃するように8月17日(木)には「ECB政策委員会が行き過ぎたユーロ上昇を警戒している」といったコメントまで報道され、「ユーロ/円」の下落余地が拡大。

「ユーロ/円」は一時127円ミドルまで急落。

ここで注意したい点は、春先にメルケル首相が「ユーロは安すぎる」といったコメントをしていたが、今月に入ってユーロ当局者の「ユーロ高抑制コメント」が目立つようになってきたこと。

「ユーロ/米ドル」が1.2000ドルに迫る勢いで上昇し、「ユーロ/円」も135円に向かって続伸するユーロ買いマーケットに対し、ユーロ当局からの「ユーロ高牽制」コメントが目立つようになり、4月17日(月)の115円割れから約17円上昇してきた「ユーロ/円」の上昇トレンドは終了し、調整局面入り。

3)「ユーロ/円」は200週移動平均という強烈なレジスタントが上抜けず、調整局面へ

この「ユーロ/円」の動きをテクニカルで確認し、次の動きを探ってみたい。

まず中期での「ユーロ/円」の動きを確認すると、2016年6月24日(金)のBrexit時に到達した安値となる109.554円をボトムに上昇トレンド入り。

この昨年6月の109円台を底に上昇する過程で、「ユーロ/円」は過去4度、75週移動平均線に上値を抑えられてきたが、4月21日(金)のフランス大統領選挙第1回投票後の4月24日(月)には窓を空けて急騰し、前週初の114円台を底に上昇、このレジスタンスを上抜け。

YJFX! MT4チャートより筆者作成

テクニカルには75週移動平均を上抜けたことで、「ユーロ/円」が上昇トレンドであることが確認できる。

そこで次に「ユーロ/円」の上値目処を再確認したい。

「ユーロ/円」の上値の目処をまず、フィボナッチ・リトレースメントで探ると安値はBrexitの6月24日(金)の1点であるが、高値は2つ選択することができる。

まずは、2014年12月8日(月)につけた「ユーロ/円」の高値となる149.758円。

これは、「米ドル/円」がアベノミクスの上昇相場で121円の高値をつけた局面。

そしてもうひとつは、2015年6月4日(木)高値、141.054円である。

まず、2014年12月高値149.758円と昨年(2016年)6月安値109.57円のフィボナッチ・リトレースメント(青色)では、61.8%=134.400円、38.2%=124.912円となり、61.8%に向けて上昇していたことがわかる。

YJFX! MT4チャートより筆者作成

そして、もうひとつ下の高値である、2015年6月高値141.054円と昨年(2016年)6月安値となる109.554円でフィボナッチ・リトレースメント(緑色)すると、61.8%=129.021円、38.2%=121.587円となり、ユーロ円の上値は、61.8%(=129.021円)と週足200SMA(130.596円)が抑えていることになる。

YJFX! MT4チャートより筆者作成

フィボナッチ・リトレースメントでは、149.758円(青色)または141.054円(緑色)からBrexitの安値109.554円への大きな下落の動きから戻り高値を計算。

特に141.054円からのリトレースメント(緑色)では、一時61.8%を上抜けて、さらに上昇することがテクニカルからも予想されたが、前述のECB理事会委員会のコメントなどで、本稿執筆時点(8月21日(月))では、結局61.8%以下に引き戻されている。

加えて、高値目標値の計算としてはフィボナッチ・エクスパンション(橙色)も使うことができる。

昨年(2016年)6月のBrexit時の安値109.554円と、昨年(2016年)12月高値124.097円、そして今年(2017年)4月のフランス大統領選挙を前にした安値114.849円(4/17)の3点で上値目標値が計算できる。

このフィボナッチ・エクスパンション(橙色)の計算をすると、最初の目標値(COP)は123.837円で既に通過し、今月は目標値(OP=129.392円)±100 PIPS付近で推移している。

YJFX! MT4チャートより筆者作成

これまで個別に説明したチャートを重ねた合わせたものをみていくと、先ほどのフィボナッチ・リトレースメントの61.8%(129.021円=緑色)と、エクスパンションのOP(129.392円=橙色)は全体が40円もの大きな相場の値動きの中で40銭程度しか差がない。このため、129円から130円付近はフィボナッチが重なる強い上値抵抗となる可能性が考えられる。

また、この130円付近には200週移動平均線もあり、この点からも、130円前後が、当面の上値抵抗となる可能性が考えられる。

この強い上値抵抗である130円付近でもみ合いを演じても、8月24日(木)からのジャクソンホールでECBの出口論が活発になることがコンセンサスであったため、「ユーロ/円」はジャクソンホールを期に、この129円から131円に位置する強烈なレジスタンスすら上抜けて続伸することが予想されていた。

しかし、前述のようにユーロ当局から、「ECBの出口論とユーロ高」に関する牽制コメントが報道され、マーケットは200週移動平均が位置している130円ミドルの上抜けに失敗。

マーケットには依然「ECBの出口論でのユーロ高、そして日銀のゼロ金利継続という円ショート」つまり「ユーロ/円」のロングがマーケットにかなり残存していると想定され、これが巻き戻されるなら「ユーロ/円」の下値余地が拡大する。

フランス大統領選挙を無事に終了したことから約17円急騰した後、反落に転じた「ユーロ/円」は調整が深まる公算が高まっている。

調整に入った「ユーロ/円」の動向に注目したい。

西原 宏一氏プロフィール

西原 宏一(にしはら こういち)
大手米系銀行のシティバンク東京支店にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。

本記事は2017年8月23日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、西原宏一氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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