スペシャル・トレンドレポート

円キャリーの本格化で、「米ドル/円」反転か?(遠藤 寿保)

2017年8月9日

7月の振り返り

6月後半から、欧米中銀は金融引締め政策に転換してきているのに対し、日銀は金融量的緩和政策継続となり、金融政策格差から「米ドル/円」は7/11(火)に114.49円の高値を付けた。その後、トランプ米大統領における「ロシアゲート疑惑」の長期化・米国経済指標の停滞・FOMCのハト派発言・北朝鮮のミサイル発射などの要因で「米ドル/円」は下落基調を強め、8/4(金)には、109.83円までの下落となった。これは、6/14(水)のFOMC(米国の追加利上げ+バランスシートの縮小)の安値108.83円から7/11(火)の高値114.49円の上げ幅に対し76.4%押しの110.16円レベルとなっている。

チャート:筆者作成

金融政策正常化で、ユーロと英ポンドが上昇

今年3月以降、「米ドル/円」は108円台から115円台のレンジを抜け切らないが、ユーロや英ポンドは中銀の金融政策正常化に向ける動きから、レンジを上抜けてきている。起点は6/28(水)欧州中銀年次フォーラムで、ドラギECB総裁やカーニーBOE総裁が、金融政策正常化に向けて発言した事からである。「ユーロ/米ドル」は2015年から1.0300ドル台から1.1700ドル台のレンジを上にブレイクし1.1909ドルまで上昇。「英ポンド/ドル」は、2016年のブレクジット時に1.3000ドルを割り込み1.2000ドル台まで低迷していたが1.3268ドルまで回復。英ポンドに関しては、今後のブレクジットにおけるEUとの交渉に懸念はあるものの、今後の上昇に期待の持てる展開となっている。そして、今月8/24・25・26(木・金・土)には、米国のジャクソンホール会議にて、ドラギECB総裁が、金融政策正常化に向け具体的発言をする可能性があり、9/7(木)のECB理事会の前に、ユーロ上昇に拍車がかかる可能性がある。

※ジャクソンホール会議とは、米国のワイオミング州ジャクソンホールで、毎年8月末に開催される経済シンポジウムのことである。米国のカンザスシティー連邦準備銀行が主催し、世界各国から中央銀行総裁や政治家、学者、エコノミストなどが参加し、会議での発言や合意内容については世界的に注目されている。初開催は1982年で、カンザスシティー連邦準備銀行が、フライフィッシング好きのボルカーFRB議長に相談し、本格的なシンポジウムを開催すべく、渓流釣りで有名なこの地を選んだと言われている。

チャート:筆者作成

「米ドル/円」反転のカギは「ユーロ/円」の上昇

「米ドル/円」は米国と日本の通貨価値のことで、その値動きは米国と日本の要因が重要となるが、ユーロや英ポンドの値動きにも影響は受ける。例えば、ユーロが買われた場合、「ユーロ/米ドル」が上昇するということは、「ユーロ買い+米ドル売り」となる。また、「ユーロ/円」が上昇するということは、「ユーロ買い+日本円売り」となる。「ユーロ/米ドル」と「ユーロ/円」が同じ比率で上昇した場合、「米ドル/円」は「米ドル売り+円売り」が相殺されて変化がないことになる。しかし、完璧に同比率で上昇することは無く、どちらかに偏るものである。現状のユーロ上昇は、「ユーロ/米ドル」上昇の比率が高いことから、「ユーロ買い・ドル売り」の「ドル売り優勢」で、「米ドル/円」が下落基調となっている。仮に「ユーロ/円」の上昇比率が高い場合は、「ユーロ買い・円売り」の「円売り優勢」となり、「米ドル/円」は上昇となる。

ECBが量的緩和からの出口戦略を明確に打ち出した場合、日本とEUの金融政策格差がクローズアップされ、「円売り優勢」から、「ユーロ/円」が上昇し、「米ドル/円」が反転する可能性が高まる。

チャート:筆者作成

円キャリーの本格化が、「米ドル/円」反転へ

日本と対各国の金融政策格差による「円キャリー」は着々と進んでいる。下記は、クロス円の週足のチャートとなるが、一目均衡表において「米ドル/円」と「英ポンド/円」以外(ユーロ/円・豪ドル/円・NZドル/円・カナダドル/円)は雲を上抜け上昇基調となっていて、上値余地を感じさせる。「円キャリー」に注目が集まり本格化すれば、出遅れているクロス円の買いに資金が回ってくるため、出遅れている「米ドル/円」に買いが入り反転する可能性が高まる。

※「円キャリー」とは、日本円に対し、他国通貨が高金利となり、クロス円をロングで中・長期に保有し、金利差の受け取り(FXでいうスワップポイント)を狙ったトレード手法である。

チャート:筆者作成

「米ドル/円」反転で、114円台の可能性

チャート:筆者作成

現在、下落基調の「米ドル/円」だが、「円キャリー」の発生で大きな下落は考えにくい状況と予測する。今年の3月以降のチャートだと、3/10(金)の高値115.51円から4/17(月)の安値108.13円内のレンジを形成していて、1ヶ月のサイクルで上下を繰り返している。このサイクルが継続された場合、現在7/11(火)の高値114.49円から19日を経過していて、下落基調の終わりが近づいてきている。反転となれば、114円台回復の可能性も出てくるのではないだろうか。

遠藤 寿保プロフィール

遠藤 寿保(えんどう としやす)
98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。

本記事は2017年8月9日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、遠藤寿保の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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