スペシャル・トレンドレポート

ユーロ高に死角があるのか? 利上げ時期次第で反動あり(松崎 美子氏)

2017年7月26日

2009年に発覚したギリシャ債務危機以来はじめて、「ユーロ高」がマーケットのテーマとなっている。シカゴIMM通貨先物市場のユーロ買い持ちポジションが急激に過去最高記録に近づいてきているのが、それを物語っている。

果たして最近のユーロ高に一切の死角がないのか?それについて考えてみたいと思う。

シカゴIMM通貨先物市場のユーロ・ポジション

まず最初に、シカゴIMM通貨先物市場におけるユーロのポジション推移を調べてみよう。入手可能のデータが2014年からとなっているため、それに基づいてチャートを作ってみたが、ユーロ売り持ち(ショート)の期間が圧倒的に長かった。今年に入りショートがだいぶ整理され、3月15日(水)に実施されたオランダ総選挙で番狂わせがなかったことが好感され、ショートはさらに減少した。それに続くフランス大統領選では、マクロン氏が当選し、欧州における政治リスクが後退したことを確認した形で、ユーロは買い持ち(ロング)に転じた。

データ: CFTC(全米先物取引委員会)ホームページ

その後、6月27日(火)からポルトガルで開催された欧州中銀(ECB)年次フォーラムで、ドラギ総裁が「緩和による景気刺激策は依然として必要だが、 デフレ圧力はリフレに変わってきた。」と発言した。2014年6月にマイナス金利導入に動いて以来はじめて「リフレ」という言葉を使ったことを受け、市場関係者の間で早ければ9月/10月にも テーパリング発表の観測が出てきた瞬間でもあった。

その後、7月13日(木)には、米WSJ紙が、「9月7日(木)に開催されるECB理事会で、資産買い入れプログラム(QE)を段階的に縮小する、つまりテーパリングの発表がある。」という観測記事を載せたことがきっかけとなり、91,321コントラクトという莫大な額のユーロ買い持ちが積みあがったのである。

この数字がどれくらい「大きい」のかを理解してもらうため、このチャートではカバーされていない2014年以前のユーロ・ポジションに関する報道をチェックしてみたが、2010年5月3日に99,516コントラクトのユーロ買い持ちという記録が確認できた。しかし、この膨大なユーロのロング・ポジションはわずか1週間しか続かず、その後大きくショートに転じており、それに並行してユーロ安相場へと移行した。

最近のユーロ高の背景

最近のユーロ高の理由として挙げられているのは、

  • 政治リスクの後退
  • 経済指標の改善
  • 追加緩和策の導入がなくなったことを受け、欧州各国の国債利回り(長期金利)が上昇に転じた
  • テーパリング、そして金利の正常化に向けた期待感

経済指標の改善が挙げられているが、肝心のインフレ率を見る限り、特に過熱感はない。

チャート: ECBホームページ

個人的には、上で挙げた理由の4番目:テーパリング/金利の正常化に向けた期待感と、 3番目:長期金利の上昇が、最近のユーロ高の主役だと考えている。

これは、ドイツとアメリカそれぞれの10年物国債利回りのチャートである。昨年11月のトランプ大統領誕生を受け、アメリカの長期金利が大きく伸びたが、今年に入ってからは頭打ちとなり、春以降は低下基調となっている。それとは正反対に、ドイツの長期金利は6月27日(火)のEU年次フォーラム以降、急上昇に転じており、独米の金利差は縮小した。

米国債利回り:米財務省ホームページ
ドイツ国債利回り:ドイツ連銀ホームページ

次のチャートは、独米・長期金利差と「ユーロ/米ドル」との関係を表わしたものである。やはり今年に入り両国の金利差縮小が顕著となっており、ユーロ高/ドル安を引き起こしているようだ。

米国債利回り:米財務省ホームページ
ドイツ国債利回り:ドイツ連銀ホームページ
ユーロ/ドル ECBホームページ

ユーロ高に死角はないのか?

久しぶりのユーロ買いというテーマに世界中のトレイダー達が飛びついた格好になっているが、これに早々警鐘を鳴らす人たちもいる。その人たちの言い分は、「たしかにECBは早ければ秋にもQEの縮小(テーパリング)の発表をするかもしれない。ただし、アメリカが行なった買い入れ額を一気にゼロに向け縮小するスタイルとは違い、ECBは一定額縮小し、しばらくそのまま維持し、また時機を見て縮小に動くというやり方となろう。そのため、QE額がゼロになるには、相当時間がかかる。当然、マイナス金利の解除はさらにその先になることを考えれば、マーケットは久しぶりのユーロ買いテーマに踊らされているようにも見える。今後の反動(買いに対する反動)と前のめりな行動には気をつけたい。」というものだ。

これはあくまでも私個人の予想であるが、今後のECB理事会での発表内容は以下のように考えている。もし、これが正しければ、テーパリングは来年1月から始まるが、金利の正常化に向けた最初の利上げは、早くて2018年10月25日の理事会。その時点で利上げに踏み切る状況が整っていなければ、2019第1四半期までずれ込むことも十分にあるだろう。やはり、上述したように「前のめり」の反動が思わぬタイミングで出てこないとも限らない展開だ。

テーパリング開始時期については、今年8月24日(木)から3日間に渡って開催される米ジャクソンホール経済シンポジウムに出席するドラギ総裁の口から何らかのヒントがあるかもしれない。もし、ECBが本気でテーパリングを考えているのであれば、9月7日の理事会を待たなくても、このシンポジウムでの発表となる公算は高い

ここからの「ユーロ」

独米・長期金利差によるユーロ高以外にも、最近のユーロ高を確認できるツールがある。それは、ECBが毎日更新している「ユーロ実効レート」だ。7月24日(月)は98.4832で終わっていて、過去のサポート/レジスタンスとなっていたピンクの点線レベルを一気に上抜けた。たぶん、ここからは、ピンク点線と黄緑点線の間での推移が予想される。

チャート: ECBホームページ

「ユーロ/米ドル」を見ると、執筆当日の日足で一旦天井を打った形にも見える。今後調整があるとすれば、ピンクライン(12EMA)が通る1.1520ドル台(ピンクの星)を意識するようにしたい。

チャート: 筆者作成

最後に私がこの夏、一番注目している通貨ペアを紹介して終わりにしよう。それは、「ユーロ/円」である。この通貨ペアと200週SMAとの過去の関係を振り返ると、黄緑丸の時のように200週SMA付近で5カ月間も張り付いて、その後一気に「ユーロ高/円安」になった時。ピンク丸の時のように、一気に200週SMAを上抜け、「ユーロ高/円安」が加速度をつけて上昇した時。それぞれのケースがある。果たして今回はどうなのか?すくなくとも過去2回とも、「ユーロ高/円安」になっているが、今回も同じ動きになる保証はどこにもない。もし、黄緑丸の時と同じ動きになれば、200週SMAを上抜けて動意が出るのは、年末近くになる計算である。やはり焦りは禁物ということであろう。

チャート: 筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年7月26日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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