
6月の振り返り
6月の「米ドル/円」は、6/2(金)の米国雇用統計で5月非農業部門雇用者数が13.8万人と予想18.5万人に対し大幅に下振れとなり、111.70円から110.33円まで急落。その後、英国総選挙やECB理事会、コミー前FBI長官の議会証言などを嫌気し、6/7(水)には109.10円まで下落となった。ただ、英国総選挙では、メイ首相の保守党が過半数割れ、仏議会選では、仏マクロン大統領の新党の躍進、ECBの金融政策据え置き、コミー前FBI長官の議会証言を無難に消化した事などから、一連のリスク要因を通過した事で、「米ドル/円」は110円台後半まで反発となった。6/14(水)の注目のFOMCでは、追加利上げとバランスシートの縮小実施の決定となると、想定内とされたのか、「米ドル/円」は一時108.83円まで下落となった。その後は、FOMCメンバーの講演などを好感し、111.78円まで回復したが、暫くは方向感に欠ける動きとなり、6/26(月)には、米株高や原油価格の堅調な動きから、「米ドル/円」は111円台後半まで反発し、6/27(火)日本時間には112円台へ回復となった。
日米欧の金融政策が鮮明に

データ参照:日銀・FOMC ・ECB各ホームページより筆者作成

データ参照:CMEホームページより筆者作成
6月の日米欧の金融政策発表では、欧州・日本と米国の差が鮮明となった。欧州と日本の金融緩和政策に対する出口(テーパリング)戦略的な内容が出るかが注目されていたが、はっきりとした出口戦略は示されなかった。これに対し、米国は追加利上げを実施し、対米国における金利差が広がる形となった。また、米国はバランスシートの縮小に向け、具体的な金額やスケジュールなども発表するなど、金融正常化に向けて着々と進めることとなりそうだ。(バランスシートの縮小とは、金融緩和によって当局が買った国債などを償還後、買い直すことなどをせず、その保有比率を引き下げる事で、国の借金を少しずつ減らしていくというものである。)為替の変動要因は様々あるが、各国の金利差は重要な要素となっている。これらを反映してか、シカゴマーカンタイル取引所の日本円先物(IMM)のネットポジションも2017年に入ると「円買い越しから円売り越し」に変化してきていて、現在も「売り越し」継続となっている。日本円先物ポジションに関しては、手口が読まれる事から大口のヘッジファンドなどは日本円先物を利用しないとも言われているが、インターバンク市場では正確な取り組みやポジションを把握する事が難しいことから、日本円先物のポジションがベンチマークの一つとされている。日本・欧州の金融政策においては、いつかは金融引き締めに舵をきる時がくると思われるが、米国が先行して金融引き締めを強める構造を考えると、中長期的に「米ドル/円」は上昇というシナリオの確率が高いと考える。
「米ドル/円」三役逆転から三役好転へ

「米ドル/円」は6/6(火)に大陰線となり日足ベースの一目均衡表の雲を下抜き、「三役逆転」(①基準線>転換線・②遅行線<ローソク足・③ローソク足<雲)となる売りサインが点灯。その後、6/26(月)には、「三役好転」(①基準線<転換線・②遅行線>ローソク足・③ローソク足>雲)となる買いサインが点灯となり、買い転換の可能性が高まった。
「米ドル/円」反転で118円台目指すか

「米ドル/円」を中長期で見た場合、4/17(月)の安値108.13円と6/14(水)の安値108.83円のダブルボトムを形成し始めている。ダブルボトム形成完了の条件としては、ネックラインである5/11(木)の高値114.36円を超えなければならないが、その場合、安値からネックラインの値幅(6.23円)×2=120.59円が上値の目標となる。また、108.13円-114.36円-108.83円からのフィボナッチターゲット(上値拡張)で測定した場合、61.8%が112.68円レベル・100%が115.06円・161.8%が118.91円レベルとなる。6月下旬から方向感が出ていない「米ドル/円」だが、ベースとなる日米金利差の拡大がある限り、大きく下割れする可能性は低く、61.8%の112.68円レベルの突破となると、ダブルボトム形成が意識され、上昇基調に入り、昨年12月の118円台を目指す可能性が高まると予測する。
遠藤 寿保プロフィール

- 遠藤 寿保(えんどう としやす)
- 98年日本初のFX事業開始から、Web広告やセミナー運営、リスク管理啓蒙などFX業務全般に携わる。数多くの一般投資家と接しながら、現在、YJFX!にてFXエバンジェリストとして情報配信・FXコラム執筆・セミナー活動等を行っている。