スペシャル・トレンドレポート

英国メイ首相は続投か、党首不信任の可能性も?(松崎 美子氏)

2017年6月21日

6月8日(木)に前倒し総選挙が実施された英国。年初から支持率が高かった保守党は、大幅に議席を伸ばし、自分達が望む形で【ハードBrexit】を実現させるつもりで思い切った賭けに出た。しかし、選挙キャンペーン中に緊縮財政策の継続を約束し、その手段として年金受給者と小学生をターゲットとした「弱者いじめ公約」を発表した途端、国民の支持が大きく傾いた。結果は、総選挙前よりも議席を落とし、メイ首相だけでなく保守党そのものが苦しい展開を強いられている。

今回のコラムでは、メイ首相は今後も続投可能であるのか?もし、交代するのであれば、どのタイミングで誰が候補として挙がってきているのか?そのあたりについて書いてみようと思う。

首の皮一枚で繋がっている首相の座

総選挙では、どの政党も過半数である326議席を獲得できず、ハングパーラメントという結果となった。

この責任を取り、メイ首相は辞任すると誰もが予想したが、彼女は辞めずに組閣作業に入る許可を取るため、エリザベス女王との謁見に向かった。しかし、メイ首相続投を保守党内部が支持しているかといえば、まったく話しは違ってくる。総選挙直後のアンケートでは、3人に2人の保守党議員は、メイ首相は辞任すべきだと考えていた。

選挙結果が出た数日後、保守党は「1922年委員会」*を招集し、メイ首相の進退問題を話し合った。この場で、同首相は総選挙の敗北を詫び、責任を取って後始末をさせて欲しいとお願いし、かろうじて首の皮が繋がった状態である。

*「1922年委員会」

保守党のなかで最も重要な組織の1つ。保守党は長い間、現職議員の組織をもっていなかった。ところが1922年の選挙で初当選した議員の間から、幹部議員以外の議員(バックベンチャーと呼ばれる)の組織をつくることが要望されて、実現の運びにいたった。この組織は党首を束縛する権限はもっていないが、議員の意見や動向を党首に伝えるという重要な機能を十分に果しているといわれている。現在でも毎週1回、招集される。

メイ首相に残されたのは、「あと10日」

これは、6月18日(日)の英タイムス紙日曜版の一面タイトルである。どういう意味かというと、今週水曜日に予定されているエリザベス女王の施政方針演説後、政策内容について議会で審議する。これに要する時間が約1週間。現在のところ、6月28日(水)或いは29日(木)までに審議を終わらせ、内閣信任投票を実施する線が濃厚だ。つまり、6月18日(日)から約10日後に行なわれる内閣信任投票で、果たしてメイ内閣が承認されるのか?そういうことである。

もし、メイ首相率いる新政権が内閣不信任となった場合、選択肢は2つ。

①メイ首相は辞任。同じ保守党内の誰かを指名し、その人が14日以内に組閣に成功する。

②野党に組閣権を譲渡し、労働党が組閣に動くことも可能。つまり、選挙をせずに野党が与党となり、首相が誕生することになる。

②については、歴史的に前例がない。言い換えれば、歴史上はじめての事態が現実となれば、Brexitどころではなく、英国議会を取り巻く政治危機に発展するリスクが高い。

リーダーシップ・チャレンジ

もし、「あと10日」待てずに、保守党内部でメイ首相辞任要求が高まった場合、党首選(リーダーシップ・チャレンジ)**が行なわれる可能性は否定できない。

これを実現させるためには、上述の「1922年委員会」の委員長宛に、保守党議員の3分の1(現在は、48人)の議員が「党首に対する不信任投票実施」を要請しなければならない。そして、党首不信任案が可決された場合、党首は解任され、次の党首選に立候補できない。否決された場合、1年以内に再び党首不信任投票の実施は禁止されている。

現時点では、12名の議員が「党首に対する不信任投票実施」に署名したと伝えられている。ちなみに、2016年6月の国民投票実施後、キャメロン首相が責任を取って辞任した際、「リーダーシップ・チャレンジ」が行なわれ、メイ首相誕生となった。

**「リーダーシップ・チャレンジ」とは?

  • 党首に立候補したい議員は、最低20%以上の保守党議員の支持票が必要である。
  • 最初の投票で、絶対的多数票(議員、党員などによる投票)を獲得した議員は、リーダーに選出される。
  • 立候補者が3名以上の場合で、最初の投票で絶対的多数票を取った者がいない場合、最低獲得票の者は落選。残りの立候補者を対象に2回目の投票が行われる。
  • 最後の2人になるまで、投票は繰り返される。
  • 決戦投票で50%以上の票を獲得した場合、その人がリーダーに選出される。

保守党次期党首に関するオッズ

国の主な賭け屋での「保守党次期党首」に関するオッズはこんな感じである。どうしてなのかわからないが、今週に入り、いきなりデービスBrexit担当相が次期首相として人気が高まってきている。

出所:Paddy Power ホームページ

出所:Paddy Power William Hill ホームページ

ここからの英ポンド

日本の個人投資家さんたちと話をしていると、英中銀の利上げの可能性が高まったことを理由に、「英ポンド買いでいいのですよね?」という質問をよく受けるようになった。もし、Brexitという国運を左右する事態に直面していなければ、私もとっくに英ポンドを買っていただろう。しかし、通貨を動かす要因は金融政策だけではなく、特に現在の英国の場合は、政治リスク・ヘッドライン・要人発言などでも大きく動くだろう。

6月19日(月)にEUとのBrexit交渉が再開したばかりであり、メイ首相の進退問題も月末近くまではっきりしない。仮に月末の信任投票を乗り越えられたとしても、メイ政権は安泰とは程遠い。それもあって、私自身は長期の英ポンド・ポジションを持っていないが、短期的な取引対象として、先週から「英ポンド/円」の動向に目を光らせている。

とりあえず、目標の142円台(英ポンド/円 4時間足チャートのベガス・トンネル位置)まで到達。ここからは、①一旦下落後上昇、②このまま上昇、③しばらく横ばい、のどの動きになるのか注意していこうと思う。参考のために、それぞれの可能性を探るときに参考にしたチャートを貼っておこう。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年6月21日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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