スペシャル・トレンドレポート

6/8は注目の英国総選挙! 保守党議席数に暗雲か?(松崎 美子氏)

2017年6月7日

6月8日(木)、英国では総選挙が実施される。本来であれば、2020年5月に予定されていた総選挙であるが、メイ首相は急遽、4月に「議会解散し、総選挙を前倒す」と発表した。

保守党を取り巻くセンチメントの悪化

メイ首相が解散総選挙を発表した当時、伝統的2大政党である保守党と労働党との支持率差は、20~25%あった。この「20~25%の差」が意味することは、総選挙結果がこの通りになれば、下院における保守党の議席数は、現在の330議席から450議席くらいまで大幅増加することを示唆していた。

それからちょうど1カ月後、保守党は「選挙公約」を発表。しかし、その内容は多くの有権者を失望させ、保守/労働党の支持率差は、はじめて1桁台まで落ち込んだ。その後、保守/労働党の差は1%まで縮小していて、これが総選挙結果となれば、保守党の議席数は300程度まで落ち込み、過半数議席(326)を大幅に下回ることになりかねない。

 

保守党の失敗

ここまで支持率を落とした保守党は、2つの失敗をおかしたと私は考える。

 

選挙公約内容

今回の総選挙は「Brexitを巡る戦い」と言われていて、有権者は保守党が勝てば、相当なハードBrexitとなることをある程度覚悟していたと思う。しかし、選挙公約では、年金受給者や子供という「守られるべき人たち」に財政負担を強いる非常に厳しい内容となっていた。

私は英国に住んであらためて実感したが、この国では「老人・子供・障害がある方など」弱い者を守る姿勢がはっきりしている。この点を熟知しているであろう保守党が、どうしてわざわざこの弱者をターゲットとした政策を発表したのか、非常に不思議である。

 

メイ首相のあり方

イギリスでも2010年総選挙から、各政党の党首による「アメリカ式テレビ討論会」が採用されている。メイ首相は4月に総選挙実施を発表した当時から、「TV討論会には絶対に出演しない。」と語っていた。これを受け、労働党のコービン党首も、「保守党のメイ首相が出演しないのなら、自分も不参加を決めた。」と発表し、7大政党の党首による討論会で2大政党の党首が欠席するという異例の事態になるはずであった。しかし、テレビ局の必死の説得により、コービン党首は出席を承諾。メイ首相は最後まで欠席を貫き、代理としてラッド内務相を送り込んだのである。

実は、ラッド内務相は討論会の4日前に実父を亡くしたばかりで、喪に服していたところ、急に代理出演を依頼されたそうである。自分のわがままを貫くために、喪中の人間に代理を強制するような非情な人に国を任せてもよいのか?総選挙の行方を左右するかもしれないTV討論会に欠席することをおかしいと思わない無責任な行動には、有権者も首をかしげるばかりであった。

そしてその翌週、ロンドンでまたテロが起きた。10週間に3回、2週間に2回という連続テロである。英国のシークレットサービスは、事前に情報を得ていたという話しも聞こえていて、メイ首相の安全保障に対する対応の悪さに腹を立てた政府関係者は、総選挙前に首相へ辞任を要求している。

 

総選挙に向けて

それでは、肝心の総選挙に向けて「知っておきたい2つのこと」をお伝えしよう。

 

投票日と注意べき時間帯

最初は基本的なこと。

 

保守党/労働党ともに、2015年総選挙での出口調査結果は、公式結果の±10議席となった。昨年6月のEU離脱の国民投票では、出口調査結果が大きく外れたが、それは過去のサンプル不足が原因であると言われている。国民投票とは違い、総選挙に関してはサンプル数が豊富であるため、私は出口調査結果を信じ、必要であれば英ポンドのポジションを取ろうと考えている。

 

賭け屋のオッズ

次は英国最大のブックメーカー:Ladbrokes社のオッズを紹介しよう。

世論調査では、保守党と労働党との差がぐんぐん縮小しているが、賭け屋のオッズを見る限り、保守党断トツ有利である点は最初からほとんど変化ない。

 

出典:Ladbrokesホームページ

総選挙と英ポンド相場

総選挙後の英ポンド動向に関しては、ある程度のコンセンサスが出来上がっている。しかし、それはあくまでも選挙結果発表直後の初動(第1波)に絞られていて、組閣後の第2波に関しては見方がわかれている。

 

第1波予想

マーケットのコンセンサスは、こんな感じである。

 

これを見て、「いや、逆じゃないの?」と思われる読者もおられるだろう。つまり、【保守党=ハードBrexit=英ポンド安】 或いは、【労働党=ソフトBrexit=英ポンド高】という考え方である。事実、こう考えるストラテジストはいるようだ。しかし、私の考えは、保守党の議席数が多ければ多いほど、安定政権となり、EUとの交渉がスムーズにいくと考えている。ハードBrexitとなることは、既にマーケットに織り込み済みであり、今後さらにハードになったとしても、それだけが理由で英ポンドが1,000ポイントとか落ちるとは考えていない。

逆に、予想に反して労働党政権となった場合は、EUから既にBrexit交渉の遅延を申し渡されている。たぶんEU側も戦略の練り直しが必要と感じているのだろう。

 

第2波予想

私が頭を悩めているのが、組閣後の動きである。つまり、保守党が勝ち、新内閣が発足した時の組閣メンバーの面子だ。メイ首相は、Brexit強硬派を選ぶのか?それとも、そこにはあまり拘らないのか?もし保守党が負け、労働党の少数派政権/他党との連立政権となった場合、誰がBrexitの指揮を取るのか?非常に不透明感が高い。とてもじゃないが、労働党政権になった場合、しばらくの間は英ポンドを買う気にはなれない。

 

結論

さしあたり、第1波の動きに限定した場合、保守党大幅勝利であれば、「英ポンド/米ドル」は1.32ドル台くらいまで。逆に労働党政権誕生となれば、1.25ドル台くらいまでの動きを想定している。

 

チャート:筆者作成

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2017年6月7日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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